海賊撃退戦②
建ち並ぶ建造物を見下ろしながら港に停泊している海賊船を目指して滑空する。
「あれは!」
港には大勢の人がタイヤが取り付けられた檻に閉じ込められていた。ほとんどが若い女性だけど、子供の姿もちらほらと見える。
既に定員いっぱいまで収容したのだろう。出入口の扉は施錠されている。あとはそのまま押して船内へと運び込むつもりだ。
「させるものかぁ!」
叫びながら急降下する。
「なんだ? 誰か何か言ったか?」
海賊の一人が辺りを見回す。直後、ボクの蹴りが男の横っ面に炸裂した。男の手から離れて宙を漂う鍵を掴む。すぐにでも開けたいのだけど、周りは海賊だらけでそうもいかない。
「ルベタ!?」
檻の中から聞き覚えのある声が聞こえてきた。レミィだ! 見ると口元に血が滲んでいる。おそらく抵抗した時に負わされたものだ。怒りが沸々とわき上がってくる。
「なにもんだ? 俺たちの邪魔するなら痛い目をみることになるがいいんだな?」
静かにメイスを構えて周りの海賊たちを睨み付ける。
「痛い目を見るのはおまえたちのほうだ。覚悟しろよ」
「うるせぇ! こんな奴、殺したってかまわねぇ。やっちまえ!!」
その言葉を合図に海賊たちが一斉に襲いかかってきた。
こちらも行動を起こす。まずは左側の敵に狙いを定める。相手のカットラスをメイスで受け止めて弾き返す。よろめいたところに回し蹴りをくらわす。さらに、後方から迫ってきた海賊の横腹にメイスを叩き込んでやる。
接近戦では部が悪いとみた海賊の一人がナイフを投げてきた。咄嗟に左手でガードして顔面への直撃を避ける。
続いて2本目のナイフが投げられた。今度はメイスでガードする。そうして地面に落ちたナイフを拾うと投げ返してやる。
「ぐぁ!」
男はナイフが太ももに突き刺さって地面にしゃがみこむ。戦意は喪失したようだ。だけど、敵はまだ残っている。
次のターゲットは右側の二人だ。
「くそっ、調子に乗るんじゃねぇ!」
振り向くと二人組のうちの一人がカットラスを振り下ろしてきた。その脇をすり抜けて回避する。同時に、がら空きになった背中をメイスで打つ。うつ伏せで地面に激突した男はそのまま失神した。
相方の男は間合いをあけようと後退する。だけど、そうはさせない。ボクが突きだしたメイスの先端が顔面にめり込む。男は鼻血を出して崩れ落ちた。
この場に残っている海賊はあと4人。それらはボクの四方を取り囲んでジリジリと間合いを詰めてきた。
ボクは眼前の敵を見据えて距離を詰める。それに対して前方の敵は後退、あとの3人は間合いを詰めてくる。あくまでも取り囲んだうえで一斉に攻撃を仕掛けてくるつもりだ。
ボクは一度立ち止まって、すぐに後方へ跳躍する。その後宙返りをして包囲から脱け出す。予期せぬ事態に慌てる男たち。恐怖で冷静さを欠いて隙だらけとなった相手を次々にメイスで薙ぎ倒していく。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「今、開けるよ」
檻の扉を開ける。解放された人たちは口々に礼を言って町へと戻っていく。
最後にレミィが出てきた。
「今回は私がルベタに心配かけちゃったね。助けに来てくれて本当にすごく嬉しかった。ありがとう」
面と向かって言われるとなんだか照れくさいな。
「へっ、ずいぶんと見せつけてくれるじゃねぇかよぉ」
突然の声に振り向く。二人組の男が近づいてくる。一人は海賊特有のドクロが描かれた帽子をかぶっている。もう一人はスキンヘッドの大男で長い柄の鉄製ハンマーを持っていた。
「おいおいおい、まさかとは思うが一応確認しとこうかぁ。海賊船の船長であるこのコルオーン様を無視してたわけじゃねぇよなぁ? 忘れてたわけじゃねぇよなぁ?」
ボクたちを睨む海賊コルオーン。そりゃそうだよね。海賊船にも船長がいる。すっかり忘れてた。
「そうだった。忘れてたよ」
「てめぇ……。正直に言ってんじゃねぇよぉ。傷つくだろうがぁ!」
「船長、船長。こいつ、バカだ、バカだ、大バカだ。やーい、大バカ大バカ」
なぜだろう。初対面だけど、こいつにだけは言われたくない。
「ルザ、そう言ってやるんじゃねぇよぉ。俺はビッグな海賊だからよぉ、俺のことを忘れてたのはゆるしてやらぁ。けどなぁ、せっかく集めた売り物を逃がされたのは別だぁ。責任とれよぉ」
大男はルザっていうのか。どうだっていいけど。責任をとれと言われても悪いことしたつもりはない。というか、どうみてもあいつらのほうが悪いじゃないか。
「なにが責任よ。バカなこと言わないでよ。あなたたちこそ町をめちゃくちゃにした責任をとりなさいよ!」
おお、レミィも海賊相手にけっこう言うんだな。
「船長、船長。あいつ、バカって言ったぞ。バカって言うほうがバカなんだぞ! バーカ!」
「なによ! 何度だって言ってあげるわよ! バカバカバカ!!」
「おまえのほうがバカだぞ! バカバカバカバカ」
妙な展開になってきた。まさかレミィがこんなことでムキになるなんて思わなかった。意外な一面を知ることができた。案外子供っぽいところもあるんだな。
「もういいぜぇ!! おめぇらの言い合いにゃ終わりがねぇ。いい加減にしやがれよぉ」
おっ、不本意だけどボクと意見が一致したぞ。
「こうなりゃあ、実力で決着をつけようぜぇ」
あぁ、やっぱりこうなるのか。そんな予感はしてたよ。
「しかたない。レミィ、安全な場所まで下がってて。こいつらはボクが倒す」
「うん。ごめんね、気をつけて!」
足手まといになるとわかっているんだろう。レミィは素直に従ってくれた。これで思いきり戦うことができる。
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