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魔王様の大冒険  作者: 美山 鳥
第4章 海賊撃退戦
33/330

再びピラックへ①

改稿済みです。

 「はぁ…」


 ボクはため息を洩れてしまっている。ベッドの上で横たわってぼんやりと眺める窓を昨夜から降りだした雨が濡らしている。


 昨日、ゴブリンの森から帰ってきたボクと村長を見たときのレミィは大変な騒ぎとなった。二人とも満身創痍まんしんそういだったわけだからしかたない。


 村長にいたっては投げつけられたメイスが命中した上腕骨・鎖骨付近が骨折してるうえ頭部からも出血していたのだ。そんなわけで村長はピラックにある大きな病院へと運ばれてそのまま入院となった。


 ちなみに、レミィとポポルは村長の見舞いに行っている。ボクも同行するつもりだったが、レミィに安静にしてるように言われ、ベッドで寝ている。


 レミィって時々モンスターより怖く感じるんだよな。


 結局は、ガボを見つけることはできなかったのが心残りだ。それにしても……


 「退屈だ」


 独り言を呟く。この家にはボク一人だけで話し相手がいない。さらにレミィに外出禁止令を出されているため時間をもて余しているのだ。


 「それにしても痛みがすっかりひいてる。治りが早いな」


 『当たり前だ。紋章の力が解放されていないとはいえ、我の肉体をみくびるでないわ』


 話し相手がいた! 姿が見えないから存在をすっかり忘れてたけど、リバス様がいるじゃないか。性格は少々きついけど贅沢は言ってられない。


 「ちょうどよかった。リバス様、話し相手になってくださいよ」


 『断る。魔王である我が貴様こどきの話し相手をしてやれねばならん理由などない』


 即答するリバス様。こっちは退屈でしょうがないんだ。諦めてなるものか。


 「いいじゃないですか。リバス様のことを教えてくださいよ」


 『必要ない』


 素っ気ない答えが返ってきた。あくまでも話すつもりはないのか。それでもかまわず話を続ける。


 「魔王って世界な5人いるんですよね。リバス様より強い魔王っているんですか?」


 『そんな者がいるわけなかろうが! 我こそが最強に決まっておるわ』


 すごい自信だ。でも、他の魔王様もみんな同じことを言いそうな気がする。


 「リバス様は他の魔王様と戦ったことはあったりするんですか?」


 『ない』


 やっぱり根拠はなかったのか。そうなんだろうなとは思ったけどね。


 『それに魔王同士が争ったところで得るものはない』


 「そうなんですか? たしか魔王の紋章を狙って魔族がやってくるとか言ってましたよね?」


 『あぁ。それは紋章を持たぬ者たちだ』


 「魔王の紋章を持ってないということは普通の魔族ですよね。魔王との戦闘はリスクが高すぎるんじゃないですか?」


 『無論だ。それゆえに奴らは罠や味方など周到な準備をして挑んでくる』


 「へぇ! 例えばリバス様はどんな風に準備したんですか?」


 質問を続ける。リバス様からはやれやれといった感じのため息が聞こえる。


 『我の場合は、魔王が勇者との闘いを終えた直後に挑んだ。我と戦うころには疲弊しきっておったわ』


 「そうだったんですか。勇者との闘い直後に挑めたなんてラッキーでしたね」


 『何を聞いておったのだ、愚か者。一般の魔族が魔王に挑む際は策や準備を怠らないと教えてやったであろうが』


 「というと?」


 『勇者どもが魔王の元にたどり着けるようにお膳立てをしてやったのだ』


 うわぁ、せこいことするなぁ……。


 『貴様、せこいなどと思ったわけではあるまいな?』


 うっ。見透かされて表情が固まる。


 『やはりな。策をめぐらせることは戦術だ。それに、勇者をお膳立てしてやるとはいっても簡単なことでもない。勇者側と魔王側、双方のパワーバランスを考慮して最善のタイミングでぶつけねばならんのだ』


 なるほどね。リバス様もいろいろと考えて作戦を立てたわけだ。


 リバス様はその後もなんだかんだ言ってボクの話し相手になってくれた。


 本当はそんなに悪い性格じゃないのかも。そんな事を考えてるうちにいつしか眠りについていた。



 「…ん……」


 目を覚ました。雨は止んでいるようだけど空は相変わらず曇っている。


 『ようやく起きたか。我が話し相手になってやったというのに寝落ちするとは何事だ』


 「すみません。ボクはどれくらい寝てたんでしょう?」


 『もう昼過ぎだ』


 「そっか。よく寝たから随分と楽になりました」


 ベッドから起き上がる。なんだかお腹が空いたな。部屋を出てリビングへと移動することにした。


 食卓にはおにぎりが盛られた皿とお茶が用意されていた。村長の見舞いに行く前に昼食を用意してくれたレミィに感謝しつつおにぎりを頬張る。



 空腹だったボクは皿に盛られていたおにぎりを全てたいらげてお茶を飲んで一息つく。時計を見る。時間は14時を指していた。


 「レミィたちもそろそろ帰ってくるころかな」


 これといってすることもなく、天井をぼんやりと見ている。


 バンッ!


 びっくりしたぁ……。玄関の扉を勢いよく開けて中年の女性が飛び込んできた。


 「ルベタちゃん、のんびり食事なんてしてる場合じゃないよ!」


 ルベタちゃんって……。


 「えっと……おばさんは誰?」


 「あたしはチセーヌの住人でルネってもんさ

。いや、あたしのことはどうだっていいんだよ。大変なんだよ!」


 そういえば大慌てで入ってきてたよな。


 「どうかしたんですか?」


 「どうしたもこうしたもないよ! ピラックが海賊に襲われちまったんだよ!!」


 ボクは口に含んでいたお茶を吹き出してしまう。ピラックにはレミィとポポル、それに村長もいるはずだ。


 「なんだって!?」


 ボクはすぐに寝室に戻るとヴィデルガラムを背負って、村長から借りっぱなしだったダガーを持ち物に加える。さらに鎧を装着する。それからゼルブ戦での戦利品であるメイスを腰からぶら下げた。


 ちなみに戦利品として持ち帰ったのは1本だけである。ヴィデルガラムもあるし、あまり多くの武器を持っても動きにくくなるだけだ。


 外に出ると何人かの村人たちが集まってきていた。


 「昨日の今日で大変だろうけど頼んだぜ」


 「すまない。海賊が相手だと俺たちじゃどうしようもないんだ」


 「ルベタだけが頼りだ」


 「気をつけるんだよ」


 集まった村人たちが口々に言う。


 『ふん、自分たちは安全な場所にいて勝手なことをぬかす』


 リバス様の言い分もわからなくもない。だけど、この人たちが同行したとしても戦力になるとは思えない。それにボクが戦う理由はレミィたちを救いたいからであって、誰かに評価されたいからじゃない。


 ボクはピラックに向けて駆け出した。

いつも読んで下さってありがとうございます。

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