魔王ルベタ③
改稿済みです。
「それで、魔王って具体的にはどんなことをすればいいんですか?」
魔王として生きていくとはいっても、何をすればいいのかさっぱりだ。
『ふむ。特にこれをしなければならんというものはない。基本的には何をするのも自由だと考えてよかろう』
「それはいいですね! だったら魔王ライフを満喫できるかも」
気持ちが明るくなる。
『せいぜい楽しむがよい。…あぁ、忘れておった。気にするほどのことでもないが、魔族や人間から命を狙われたりもするな』
えっ!? 気にする、めっちゃ気にする! リバス様ってとんでもない事をサラッと言うんだな。
「人間はともかく、どうして魔族からも狙われなきゃならないんですか!?」
『まったく、気楽なものだな。よいか、魔族の中でも魔王と呼ばれる者は5人しか存在せぬ。そして、それぞれが魔王の紋章を宿しておるのだ』
「リバス様も?」
『無論だ。右手の甲を見てみろ』
言われた通りにする。グローブを外すと、そこには蒼白い紋章が浮かび上がっていた。
「これが魔王の紋章?」
『うむ。その紋章を宿せば強大な力を得ることができる。故に、魔王はそれを狙う魔族からも襲撃されるわけだ』
「そんな厄介な物、さっさと渡しちゃえばいいじゃないですか」
『愚か者が。一度宿した紋章を任意で他者に継承することはできぬ。継承されるのは魔王が死亡した時のみ。さらに言えば、仮にそれが可能だったとして、素直に譲ったところで助かるとは限らんだろうが』
ということは、どうあっても戦いは避けられないってことか。なんだって、こんな厄介な代物を宿してるのかな、この人は。……ん?
「あの、リバス様も別の魔王様を殺してこの紋章を?」
ふと脳裏に浮かんだ恐ろしい疑問をぶつけてみる。
『あぁ、そうなるな』
やっぱりか! なんて事をしてくれたんだ。そのせいでボクが大変な目に遭うんだぞ!! やり場のない怒りが込み上げてくる。
『ちなみにだが、そいつから奪ったのは紋章だけではないぞ。ヴィデルガラム、ガゼラース城、配下、領地、女。あらゆる物を奪ってやったわ』
鬼だ、悪魔だ。血も涙もないのか。その魔王様に同情するよ。ところで……。
「ヴィデルガラムって何ですか?」
『やれやれ、どこまでも無知な奴だな。背中を見てみろ。鞘があるだろうが』
背中? おぉ、たしかに空っぽ鞘を背負っている。これがヴィデルガラムの鞘か。でも、どうして鞘だけなのだろう?
「中身はどうしたんです?」
『うむ。海に投げ出された際に落としてしまったようだ。しかし、案ずることはない。呼べば戻ってくる』
おいおい、いくらなんでもバカにしすぎだよ。鞘に収まってたってことはヴィデルガラムは剣ということになる。呼んで帰ってくる剣なんて聞いたこともないよ。
『疑っておるようだな。背中の鞘に意識を集中してみろ』
疑惑の念を持ちながらも鞘に意識を集中してみる。
……何も起こらないじゃないか。やっぱりからかわれたんだ!
「やっぱり何もないじゃないですか。からかうのもいい加減にしてく……」
ボクが文句を言い終わる直前だった。上空から飛来した大剣が目の前の砂浜に突き刺さった。あと一歩でも踏み出していたらどうなっていたか……。怖っ!!
『どうだ? これこそ魔大剣ヴィデルガラムである!』
リバス様は得意気だ。
ボクは驚愕のあまり声も出てこない。口はポカンと開いたままだ。
『何をしておる。さっさとヴィデルガラムを鞘に納めぬか』
暫く呆けていたが、リバス様に促されて目の前の大剣を手にとる。漆黒の刀身が夕陽にきらめいている。じっと見つめていると吸い込まれそうなほどの美しさだ。武器の良し悪しはよくわからない。だけど、この剣がものすごい名剣なのは感じとれる。
ともあれ、ボクはヴィデルガラムを背中の鞘へと納めた。
第3話も読んでくださって、ありがとうございます。
次話は2022/4/4(月) 21:00に投稿できるようにしたいと思います。