ゴブリンの洞窟③
改稿済みです。
洞窟の外へと脱出したボクと村長は入り口を挟むように左右に分かれる。
「気づかれたのはボクのせいだ……」
村長を危険にさらしてしまった申し訳なさでいっぱいになる。自分の未熟さを痛感させられるばかりだ。
「気にするなと言うたじゃろう。反省するのはいいが、今は現状を切り抜けることに専念するんじゃ」
たしかにそうだ。これ以上は村長の足手まといになるわけにはいかない。決意を固めて力強く頷く。
「先ほどの騒ぎで奥から増援がやって来るのは間違いない。ここで奴らを迎撃する」
「作戦は?」
「まずは、わしが向かってくる敵を魔術で迎撃する。ルベタ殿には外に出てきた奴を仕留めてもらおうかの」
「了解。今度こそやってみせる!」
「張り切るのはいいが、あまり無茶しすぎるでないぞ」
村長は言うが早いか洞窟から距離をとると入り口に向かって身構える。ほどなくゴブリンの足音が響いてくる。どうやら複数体いるようだ。
「いたぞ!」
「あいつだぁ!」
「殺せぇ!」
村長を視界にとらえたゴブリンたちは棍棒やら手斧やらを振りかざしながら口々に叫んでいる。ボクの索敵が正しければ現れたのは6体だ。
「むん!」
村長は練り上げた魔力で火の玉を4つ作り出して一斉に発射する。火炎系下位魔術をくらったゴブリンたちの叫び声が洞窟内に反響した。残ったゴブリンの気配は2体。つまり、火の玉1発で1体を倒したことになる。全弾命中だ。村長、強すぎだよ。だけど、ボクだって負けてられない。
村長の火の玉の餌食にならずにすんだ2体は動揺したのか立ち止まっていたが、再び村長に襲いかかるべく駆け出した。
「今だ!」
先頭のゴブリンが外に出る直前、入り口の横で隠れていたボクは飛び出すと同時にダガーを迷いなく一閃した。切断された首が地面に転がる。
「こんちくしょう!」
残されたゴブリンは手斧を振り下ろす。それを難なく避けて心臓をダガーで一突きにした。こうして6体のゴブリンは塵となって消滅したのだった。
「これでよし。村長、これから…」
振り返ったボクのすぐ横を村長が放った火の玉が通り抜けて洞窟内へと消えていく。いったい何がどうなってるのか状況が理解できない。
「ぎゃっ」
洞窟の中がゴブリンの短い悲鳴が聞こえる。どうやらまだ全滅させたわけではないようだ。また油断してしまった。もう一度索敵をしてみる。たしかに洞窟内には敵が残っているようだ。その数は3体。先ほどまで戦っていたのよりも奥のほうにいる。
ヒュッ!
洞窟の中から矢が飛んできた。ボクは防御魔術で強化して受け止める。痛みはあるがそれほどのダメージにはならない。3体のうち少なくとも1体は飛び道具を持ってるということだ。
まずは《暗視》で中の様子を確認する。数は3体で間違いない。そのうちボウガンを持っているのは1体、あとは槍を持ってるのが2体だ。
「ボクに任せて村長は隠れててよ」
そう言い残して洞窟内へと突撃する。中の様子を知ることができない村長よりも《暗視》があるボクのほうが有利だと判断しての行動だ。
「ギャア!」
2発目を射とうとボウガンに矢をセットしているゴブリンにダガーを投げつける。ダガーは狙い通りに額に突き刺さった。
あとは槍を持った2体だ。既に槍の穂先をこちらに向けて身構えている。
『ふむ、このゴブリンどもは生意気にも《暗視》を使えるようだな』
「《暗視》はリバス様のスキルじゃないんですか?」
『無知なやつだ。稀に固有スキルを持つ者もいるが、多くのスキルはそうではない。ここの連中の場合は洞窟を拠点にしているうちに自然と身に付いたものなのだろう』
「進化したみたいな感じ?」
『まぁ、それに近いな』
などと話しているうちにゴブリンたちが襲いかかってきた。これまで幾度となく実戦を経験してきた。落ち着いて行動すれば勝てない相手じゃないはずだ。
《俊足》を使って2体のゴブリンの間を通り抜ける。それと同時に再び《暗視》で視野を確保して振り返る。予想どおりだ。ゴブリンたちはボクの突然のスピードアップについてこれていない。その隙に床に落ちているダガーを拾い、すかさず敵の懐に飛び込む。ダガーの刀身をゴブリンの胸に突き刺す。
「うおぉ!」
最後のゴブリンの槍が迫ってくる。ボクは上体を反らしてかわすと、その槍を奪い取る。武器を取り上げられてあたふたしているゴブリンの頭をボクは槍で一突きにした。今度はここで油断しない。注意深く周辺を索敵するが気配は全く感じられない。ボクはまたも床に落ちているダガーを拾い上げると村長の元へ引き返した。
「ほほぉ、早かったのぅ」
「少しは戦いにも慣れてきたからね」
得意気に答えるボクに村長は微笑みを浮かべる。
「うむ。自信を持つのはいいことじゃな。しかし、己の実力を過信してはいかんぞ。それと、力の使い方も大事じゃ」
真剣な表情で語る村長にボクは無言で頷く。自分の力を正しく使えているのか。正直なところ、ボクにもわからない。もちろん、ボクは正しく使っているつもりだ。だけど、見方を変えればどうなんだろうか……。
「まぁ、ルベタ殿ならば大丈夫じゃろう」
ボクの心の内にある不安を見透かしたのか、村長は表情を明るくする。それから魔法石を発光させた。
「さて、洞窟の奥へ行こうかの」
「うん」
ボクと村長は慎重に洞窟内へと再度侵入するのだった。
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