ゴブリンの洞窟②
改稿済みです。
洞窟内は天井から滴り落ちた水滴が床の所々に小さな水溜まりを作っていた。湿った空気が体に絡みつくような嫌な感じがする。今のところは分かれ道もなく、ボクと村長は慎重かつ迅速に洞窟を奥を目指している。
灯りがないため周りは暗いが《暗視》のおかげで探索に支障はない。村長は魔力に反応して発光する魔法石で自分の周辺を照らしている。魔力を使っての索敵法では周囲の地形まではわからないからだ。
それにしても、魔術って本当に便利だよね。早く使いこなせるようになりたいものだ。
「何者かがこちらに向かってきておるようじゃの」
後からついてきていた村長が小声で囁いて魔法石の灯りを消す。たしかにボクたちの進行方向から3体のゴブリンが松明を片手に歩いてきている。こちらの存在にはまだ気づいていないみたいだ。
「そうみたいだね。3体ならなんとかなりそうだけど、どうしようか」
「まぁ、あの程度なら一気に片付けてしまおうかのぉ」
「見張りの奴ら、いなくなってるぞぉ。どうしたんだぁ?」
臨戦態勢をとるボクと村長だったが、入り口付近から聞こえた声に振り返る。どうやら外に出ていたゴブリンが帰ってきたらしい。1体だけなのが幸いだ。
「いかんな。ルベタ殿は後ろの奴を黙らせてくれ。わしは奥の3体を引き受ける」
村長が小声で指示を出す。ボクは頷くと入り口へと踵を返す。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「さて、どうやって倒したものかな……」
足音に気をつけつつ入り口へと向かう途中、ボクは呟いた。
『ゴブリンなど、どうにでもなるだろうが』
「ただ倒すだけならそうなんですけど、この一本道だと隠れることもできないし、騒がれずに一気にケリをつけなきゃ、村長にまで危険が及んじゃいますよ」
『ならば《俊足》だな』
「なんですか、それ?」
『一時的に素早さを向上させるスキルだ。相手の姿が見えたらすかさず使用しろ』
と、リバス様と話している間に前方にゴブリンの姿をとらえる。敵はボクに気づいている様子はない。
「よし、いくぞ」
ボクは《俊足》を使用するため意識を集中して駆け出した。
「うわっ!」
次の瞬間、ボクの視界は真っ暗になってしまった。さらに俊足の効果が予想以上だ。勢いあまって目標のゴブリンを通り越してしまう。相手はボクに気づいてしまったのは言うまでもない。
「誰だ、おまえ! 怪しい奴、発見!!」
『ばかもの!』
ゴブリンとリバス様がほぼ同時に大声を出した。何がどうなってるんだ? わけがわからない。
『今の貴様が複数のスキルを同時に使用できるわけなどなかろうが! とりあえずは速やかに奴を始末しろ!』
焦るボクにリバス様の指示がとぶ。
そうだ。早くなんとかしないと! パニックになってたのはゴブリンも同じようだ。その場でピョンピョンと跳び跳ねている。ボクはダガーを握る手に力を込める。
「敵だ、敵だぁ!!」
相変わらず騒ぎ立てているゴブリンの心臓にダガーの切っ先が突き刺さる。
「て…き……だ………」
ゴブリンは恨めしそうにボクを睨んで絶命した。
「おぉい、無事か!?」
ゴブリンの遺体が塵と消えたころ、洞窟の奥から村長が魔法石の灯りを揺らしながら駆けてくる。
「ごめん!」
「なぁに、気にするでない。失敗などだれにでもある。それよりまずは外に出るぞぃ」
村長はそのまま足を止めることなく外を目指す。
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