ゴブリンの森③
「いってぇぇ!」
森の中を暫く進むと、どこからか飛んできた矢がボクの左肩に突き刺さる。防御魔術していたとはいえ、かなり痛い。
「気をつけるんじゃ。奴らの襲撃が始まったようじゃぞ」
遅いよ。今さら言われなくてもわかってる。もう少し早く言ってほしかった。矢を引き抜きながら心でランツァ村長に文句を言っておく。出血はしてるものの傷は浅い。敵はどこにいるんだ?
相手の姿を探して目を凝らすボクの背後から真空の刃が通り過ぎていく。
「ギャッ!」
短い悲鳴が聞こえた。ランツァ村長が放った神風系中位魔術によって絶命したゴブリンの死体が木の枝からが地面へと落下する。さすがは村長だ。
「グッジョブ! ランツァ村長」
後ろを振り返って親指を立てる。
「ホッホッホッ…。なぁに、これくらい大したことはない。それよりも余裕をかましておって大丈夫なのかの?」
「へ? それはどういう…」
ランツァ村長が何を言いたいのかわからず問い返そうとした時、脇の茂みから短剣を持ったゴブリンが飛び出してきた。狙いはボクのようだ。突き出された切っ先を寸前のところでかわす。不意打ちが失敗して逆上したのか、奇声をあげながら牙をむき出しにする。そして二度、三度と切りつけてくる。それらの攻撃はボクの身体にかすり傷をつけていく。
『この程度の攻撃を避けきれんとは未熟者め。これだから低能な者は』
またしてもリバス様に叱られてしまう。痛い思いをするのはボクなんだから少しくらい優しくしてくれてもいいのに。
ゴブリンが短剣を再び突き出す。その腕が伸びきった瞬間を狙って懐に飛び込んでボディーブローを叩き込む。ふらついたゴブリンから素早く短剣を奪い取る。
「どうして自分たちよりも弱いモンスターを殺したり、人間の村を襲うのさ?」
ボクの質問にゴブリンは残忍な笑みを見せる。
「そんなの決まってる。楽しいからだ。弱い奴が死ぬのを見るのは楽しい。人間どもが困ってるのを見るのも楽しい!」
「そうか」
ボクは奪った短剣でゴブリンの喉を切り裂いた。ゴブリンは断末魔の叫びすらあげることができずに絶命する。
その遺体は塵となって跡形もなく消え去った。モンスターというものは人間の様々な感情が形を成したものだとされている。そのためか命を終えたモンスターは塵となるのだ。
嫌な奴とはいえ命を絶つのは気持ちいいものではない。
ランツァ村長は落ち込んでいるボクの肩に手を置く。
「さて、行こうかの」
ランツァ村長に促されて再び森の奥深くを目指して歩きだした。
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