勧誘
改稿済みです。
「さすがは魔族。素晴らしい実力を持っているな! どうだ、俺の用心棒でもしないか? バズラウドに代わって警備隊長を任せてやってもいい」
地下室から応接室へと戻ってきたリゲックは、バズラウドが敗れたというのに上機嫌だった。満面の笑みでボクの前に置かれたグラスに極上のワインを注ぐ。ちなみにバズラウドは別室で治療中だ。
「せっかくだけど辞退させてもらうよ」
「そう言わずに話だけでも聞け。給料ならば希望の額をだしてやる。それだけじゃない。この島においては俺に次ぐ権限を与えよう。悪い条件ではないだろう?」
ボクは首を横に振る。
途端にリゲックの眼光が鋭くなった。断られるなど考えてもいなかったのだろう。
「なにが気に入らない?」
リゲックは語気を強める。
「なにが気に入らないとかじゃないよ。ただ、君の下について働く気にはなれないってだけさ」
ボクが言い終わると同時にリゲックは机を叩いて勢いよく立ち上がった。その目は先ほどまでと違い、ボクを明らかに敵視している。
「余所者風情が調子にのるなよ。この島で俺に逆らえば無事ではいられねぇ。それでも断るのか?」
「あぁ。ボクの返事は変わらない。そうやって自分の思い通りにならないと脅すのか。領主というわりには大した器じゃないんだな」
ボクは席を立ちつつ答える。リゲックの顔は怒りによってみるみる赤くなっていく。
「言わせておけば! いいだろう、今すぐ処刑してやる!!」
「へぇ、バズラウドが治療中なのにどうするんだい? まさか、君が戦うのかな?」
「お待ちください。お二人がこの場で争うことに意味などございません。リゲック様、何事も無理強いは良くありません。どうか、お気を鎮めて下さい」
戦闘に備えてヴィデルガラムに手をかけようとした時、スヴェインさんが仲介に入ってくれた。だが、リゲックは納得できないようだ。
「黙れ! 使用人ごときが口出しするな!! それともおまえは俺が敗れるとでも思ってるのか!?」
怒鳴るリゲックに対してスヴェインさんは落ち着き払った様子で毅然としている。
「どちらが勝つとか敗けるといったことを申しておりません。そもそもルベタ様ご自身が断られておられるのです。それをこちらで無理強いしたところで何になるというのですかな。リゲック様がなんと言われようと諦めていただきます。よろしいですな?」
スヴェインさんはリゲックをまっすぐに見つめたまま視線を逸らさない。
リゲックが舌打ちをする。
「いいだろう。ルベタのことは諦めてやる。だが、俺に逆らったからにはこの島で好きにできると思うなよ」
リゲックがボクを睨み付けて脅してくる。
「わかった、憶えておく。それじゃ、ボクからも言わせてもらう。全てが自分の思い通りになるとは思わないほうがいいよ」
「てめぇ!!」
再び激怒したリゲックがボクに掴みかかろうとするが、スヴェインさんが素早く制止した。
「くそ、目障りだ。さっさと失せろ」
リゲックは乱暴に着席すると吐き捨てるように言って、外方を向いてしまう。これでは情報を聞き出せる状況ではなくなってしまった。ボクは諦めて応接室を後にするのだった。
読んで下さって、ありがとうございます。




