VSバズラウド戦④
改稿済みです。
『これしきの事でいちいち取り乱すな。おそらく、接近戦は危険だと判断したのだろう。となれば、魔術戦に持ち込んでくるのは容易に想像がつく』
「で、対処法は?」
『ふむ。今の貴様に魔術戦を期待するだけ無駄として、現段階でできる事をすればよい』
「だから、それはなんなんですか!?」
バズラウドが再び掌に魔力を集めていることにボクは焦りを募らせる。
『とりあえずは避けろ。我の肉体ならば簡単に殺されることはあるまい』
などと言ってるうちに魔力によって生み出された氷の球がボクに向かって飛んできた。
「わわわ!」
寸前のところで身を低くして回避する。氷塊系下位魔術だ。ボクのすぐ側を通過した氷の球は壁に激突して砕け散った。
「どうやって反撃するんですか!?」
『そうだな。本来であれば如何様にもなる相手なのだが中身が貴様のような腑抜けとなると、どうしたものか……』
リバス様がいつも通りの毒舌ぶりを発揮したあと、暫し思考する。
「うぐっ!」
そうこうしてる間にもバズラウドの魔術攻撃は止まらない。雷撃系下位魔術によって発生した雷球が直撃して呻き声が洩れる。電撃で痺れたところに火炎系下位魔術をお見舞いされてしまった。
「あっつぅぅぅぅ!!……うわぁ!」
続いて襲ってきた突風に吹き飛ばされて壁に背中から叩きつけられてしまう。これは神風系下位魔術だ。
『えぇい、情けない奴め! 冷静でなければ殺られるだけだ。死にたくなければ相手の動きをよく見ろ。同じことを何度言わせるつもりだ?』
くっそぉ、こうなったらやってやるさ! バズラウドの動きに注視する。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「くっ」
氷塊系下位魔術が左脇腹を掠める。痛みに表情をゆがめる。
リバス様のアドバイスに従って、なるべく冷静でいるように努めながら魔術攻撃に対処してきたのは何度めだろう。どうにか回避できるようになってきたが成功率は7割といったところか。
『まだまだではあるが今はこれでよかろう。では、反撃といこうか。今の貴様ならば奴の隙を見つけられるであろう』
ボクは無言で頷く。たしかになんとなくは攻めるタイミングはわかる。だけど……。
「どうやって? 近づく時に狙い撃ちされますよ」
『問題ない。やつは疲労によって攻撃のタイミングが僅かに遅れてきておる。それに、直撃したところで致命傷を負わされることはあるまい。なにしろ肉体は魔王なのだからな』
虎穴に入らずんば虎児を得ず、か。ボクは意を決して反撃のタイミングを見計らう。
きた! バズラウドが放った雷撃系下位魔術に向かって駆け出す。当たる直前に左に移動してかわし、床を強く蹴って一気に間合いをつめる。だが、バズラウドは不適な笑みを浮かべていた。
「あまい!」
バズラウドが右手をかざして火炎系下位魔術を繰り出す。飛び出してきた火の玉が跳躍したボクの下を勢いよく通過していく。
「でやぁ!」
ヴィデルガラムを握る両腕に渾身の力を込めて振り下ろす。が、バズラウドのハルベルトがヴィデルガラムを払う。敵ながら見事な反応だ。
ボクはバランスを崩して床に片膝をついてしまった。そこを狙ってハルベルトの斧部がボクの首をはねようと迫る。
まずい! ボクは身を低くしつつバズラウドの右脇を通り抜ける。その際に身体を回転させ、隙だらけとなったバズラウドの背中にヴィデルガラムの一撃をくらわしてやる。手応えはあった。
だけど、それほど大きなダメージは与えられていないだろう。バズラウドは前方に少しよろめいたが、すぐに態勢を立て直してボクを見据える。
「なにをしている! こんな奴、さっさと片付けろ!!」
なかなか決着がつかないことに苛立ち、リゲックが怒鳴り声をあげる。しかし、バズラウドは無反応だ。それが余計に気に入らないのだろう。リゲックは不機嫌そうに舌打ちをしている。
緊迫した空気の中、バズラウドが次の行動にでる。
鋭く突きだされたハルベルトの先端が右頬を掠める。ボクはヴィデルガラムを中段に構え、横に一閃して反撃にでる。が、寸前で後方に飛び退かれて空振りしてしまう。
「うわっちぃ!」
バズラウドが放った火炎系下位魔術による火の玉の直撃を受けてよろめく。バズラウドはハルベルトを頭上に掲げた。
「くぅっ!」
ボクはヴィデルガラムを振りかざす。その時、バズラウドの口元に笑みが零れる。嫌な予感がしたが、ヴィデルガラムは止まらない。
横一文字に一閃された魔大剣は何もない空間を裂く。バズラウドがさらに後方へと移動したのだ。ハルベルトを高々と掲げたのはボクの攻撃を誘うためだったのか!
「もらったぁ!」
自らの勝利を確信してハルベルトが振り下ろされる。もはやヴィデルガラムで受け止めることは不可能だ。とても間に合いそうもない。
「ぬぐっ」
咄嗟に床を蹴って体当たりする。ボクのタックルを受けてバズラウドは短い呻き声をあげる。回避するには前進するしか思いつかなかったのだが、そのおかげでどうやら無傷で済んだようだ。
しかも、バズラウドは押し倒された拍子に武器を手放してしまっている。
「往生際が悪い!」
激怒したバズラウドはボクを思い切り投げ飛ばす。なんともパワフルなおっさんだ。ボクは空中で身を翻して床に着地すると、すぐさま反撃にでる。
「えぇい、これで終わりだ!!」
バズラウドは突進してくるボクに向けて両方の掌をかざす。集められた魔力が火球となって襲いかかってきた。
『火炎系下位魔術か。先ほどまでのよりは強力だが問題なかろう』
リバス様の言葉が聞こえた。燃え盛る炎に全身を包み込まれてしまう。だけど、さすがは魔王の肉体だ。それなりのダメージはあるものの致命的なものではない。
「隙ありぃ!」
火炎系下位魔術に絶対の自信を持っていたのだろう。炎の中から飛び出したボクの視界に油断して隙だらけのバズラウドの姿が映る。
回避行動をとるが間に合わず、鞘付きヴィデルガラムを右脇腹に受けて弾き飛ばされたバズラウドは壁に激突して気を失った。
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