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魔王様の大冒険  作者: 美山 鳥
第2章 フォラスの独裁者
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VSバズラウド戦②

改稿済みです。

 「リゲック様、彼が俺の相手ですかな?」


 頑丈そうな鎧を身に纏い、無精髭を伸ばした中年男がボクを一瞥してから隣に立つリゲックに確認する。


 「そうだ。名はルベタで、冒険者だそうだ。殺してしまったとしてもこちらで揉み消してやる。思う存分に戦うといい」


 リゲックは冷笑を見せて恐ろしいセリフを吐いている。なぜ、少し話を訊きたいだけなのに命懸けの戦いになるのだろうと思えてくるが、こうなれば覚悟を決めよう!


 「俺は警備隊の隊長を務めているバズラウドだ。小僧、死にたくなければ今のうちにリタイアを宣言しろ。そうすれば、無事に帰してやる」


 「忠告はありがたく受け取っておく。だけど、こんな所で死ぬつもりなんてない。要するにあんたを倒せばいいんだよね」


 にらみ合いながらボクとバズラウドは互いに相手の力量を推し量る。


 「相手の力量すら測れないバカか、それとも吠えるだけの実力を持った戦士なのか。どちらにしても戦うというのなら容赦はしない。死んでも恨むなよ」


 武器を構えるバズラウドの眼光が明らかに殺気を帯びる。


 武器は槍と斧と鉤爪の特性を併せ持ったハルベルトだ。


 ボクも負けるわけにはいかない。背中からヴィデルガラムを抜き放つ!……はずが鞘から抜けないぞ!?


 『ふむ、貴様はヴィデルガラムに認められておらんようだな。これでは鞘から抜くことは無理だ。諦めろ』


 焦るボクにリバス様の信じられない言葉が聞こえてきた。


 えぇ~っ、そんな話は聞いてないぞ! 丸腰であんな恐ろしいおっさんを相手にしろっていうのか!? 背中に冷たい汗が滲む。帰りたくなってきた。


 「どうした、抜かんのか?」


 バズラウドはハルベルトを頭上で勢いよく回転させている。やる気満々だな、おい。こっちは、抜かないんじゃなくて抜けないんだって!


 「気にしないでいい。こちらにはこちらの事情ってもんがあってね。できるものなら、実力で抜かせてみなよ」


 鞘に取り付けられていた固定用のベルトを外して構える。この際、鞘付きのままで戦うしかない。


 『ほぉ、貴様でも一応は強がりを言えるのだな。少しばかりの根性はあるようで何よりだ』


 リバス様が感心したように言っているが、かまっている余裕はない。


 「言ってくれるな。せいぜい死んで後悔することがないようにな!」


 言い終わるが早いか猛烈な勢いで突進してくるバズラウド。突き出されたハルベルトの鋭い切先がボクの脇腹を掠めていく。もう少し反応が遅れていたらと想像すると恐ろしい。


 わかってはいたけど、ピラックからの帰路で戦った連中とは強さが桁違いだ。


 「今ので理解しただろう。本気でやらねば確実に死ぬことになるぞ!」


 バズラウドは再び距離をとってハルベルトを構え直す。さっきの一撃は挨拶代わりといったところか。


 どどど…どうしよう。このおっさん、とんでもなくおっかない。間近に迫った死への恐怖から身体が強張ってしまう。


 『やれやれ、貴様とて今まで生き抜いてきたのであろうが』


 そんな事を言われたって、こっちは逃げ回るだけの毎日だったんだ。ゴロツキ程度ならともかく、戦闘のプロを相手にどう立ち回れっていうんだ。


 「あくまでも俺を侮るというのか。それもいいだろう。だが、死して悔やんでも遅いと覚悟しろ!!」


 ハルベルトによる突きと斬撃を織り交ぜた凄まじい連続攻撃が容赦なく繰り出される。ボクはヴィデルガラムを駆使して攻撃を捌く。だけど、全ての攻撃を防ぎきれずに身体中に無数のかすり傷を負わされてしまう。


 『バカ者! この程度の攻撃も捌けんとは情けない』


 「そ、そんな事言っても致命傷を避けるだけで精一杯ですよ!」


 リバス様に反論する。こんなやり取りをしてる間にも攻撃は絶え間なく続いている。


 『えぇい、未熟者め! まずは落ち着いて相手の動きをよく見ろ!』


 言われたとおりにしてみる。なんとなくバズラウドの動きを目で追うことはできる。頭上に掲げられたハルベルトが振り下ろされようとしている。ボクは床を蹴って前方に飛び出すとそのままバズラウドの後方へと回り込む。


 「はぁっ!」


 振り返り様に気合いを込めてヴィデルガラムを真一文字の閃かせる。この攻撃は反応が遅れたバズラウドの左脇腹をとらえた。


 「ぬぐっ……」


 全身に鎧をまとっているとはいえノーダメージというわけにはいかなかったみたいだ。バズラウドは短く呻いてその場に片膝をついた。よし、いけるぞ! 勝利への希望が見えてくる。


 『油断するでない!』


 リバス様の忠告が聞こえた瞬間だった。一瞬の隙をつかれて足払いされてしまったボクはバランスを崩して転倒してしまう。そこにすかさずハルベルトの鋭い先端部がボクの眉間に迫ってきた。


 「ひぇっ!」


 咄嗟に横へ転がって避ける。直後、ボクの頭部があった場所にハルベルトの切っ先が到達した。ボクはさらなる追撃に備えて態勢を整えつつ身構える。


 『よいか、身体能力では決して奴に劣っているわけではない。にもかかわらず貴様が劣勢なのは経験値の差。それと己自身が恐怖に支配されているからだ。死にたくなければ、まずは精神を静めて奴の動きに集中しろ』


 ボクはリバス様のアドバイスに素直に従うことにした。ヴィデルガラムを正眼に構えて深呼吸。それからバズラウドの動きに全神経を集中する。


 こんなところでやられるわけにはいかない。絶対に乗り切ってみせる。


 『やる気になったようだな。では、奴の攻撃に対して回避や受け流しといった防御に専念しろ』


 「それだと勝てないんじゃないですか?」


 『当然だ。しかし、貴様の場合は攻撃より防御を主体とした戦い方のほうが向いておるだろう』


 「あぁ、言われてみれば自分から攻めるのは得意じゃないかも」


 リバス様の助言に納得する。


 『ならば、まずは相手の攻撃をやり過ごせ。その後、敵の隙をついてカウンターを仕掛ける』


 「なるほど。で、具体的にはどう動けばいいんです?」


 『まったく……世話がやけるな。よいか、我と貴様は一心同体。であれば、我がイメージした動きを脳を介して伝えることで口で言うよりも早く正確に理解できるはずだ。成功するかどうかはわからんがな』


 「了解です。それじゃ、お願いします!」


 最後の一言に不安を感じるけど、今はそれに賭けるしかない。


 一方、バズラウドはブツブツと独り言を言っているボクを警戒してるのか、こちらの様子を窺っているようだ。


 さあ、第2ラウンド開始といこうじゃないか!

いつも読んで下さってありがとうございます。

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