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魔王様の大冒険  作者: 美山 鳥
第12章 冒険者生活の始まり
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昼食と新たな依頼

 タニスさんと別れたボクは完了報告と報酬の受け取りのために冒険者ギルドへとやってきた。


 (レミィはまだなのかな)


 フロアを見回してもレミィの姿は見当たらない。まだ戻ってきていないのかな。


 ボクは受付カウンターへと向かった。


 「タニスさんの【花壇の水やり】依頼を完了したよ」


 言って、タニスさんのサインが書かれた依頼完了書を提出する。


 「はい。たしかに確認いたしました。少々お待ちください」


 受付嬢は事務処理と報酬を用意するためカウンターの奥へと席を立つ。


 (まだ昼前だし、午後からも何か依頼を受けようかな。待てよ。ギルドでも有料で食事を提供していたはず。まずは軽く食事を済ませてから次の依頼を探そう)


 受付嬢の後ろ姿を見送りながら考える。


 「お待たせいたしました。こちらが今回の依頼の報酬となります」


 「ありがとう」


 報酬を受け取って、食事を注文するために専用カウンターへ移動する。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 「いらっしゃい!」


 カウンターでは40代後半から50代前半とおぼしき女性が応対してくれた。ボクはメニューを一通り見て、特盛の肉丼を注文する。


 「あんただね。冒険者になるっていう物好きな魔族ってのは」


 ボクの目が赤いことに気付いた女性が言う。


 「まあね。やっぱり変かな?」


 ボクが訊くと女性は「うーん……」とうなる。


 「そうだねぇ……普通はあまり聞かない話なのは確かだよ。けど、あたしゃ、そんな冒険者がいてもいいんじゃないかって思うね」


 女性はニッと笑う。


 「ところで、あんた。人間のかわいいを連れてたそうじゃないか!?」


 「あぁ、レミィのことか」


 ボクが言うと女性はますます興味深げに身を乗り出してきた。


 「そのレミィってとはどんな関係なんだい?」


 「どんなって……一緒に旅する仲間だよ?」


 「それだけかい?」


 「うん。そうだけど?」


 「なんだ、そうなのかい……とんだ期待外れだったよ」


 がっかりしたように肩を落とす女性。ボクとレミィの関係に何を期待していたというのか。


 「あいよ! 肉丼お待ち!!」


 タイミングよく肉丼が完成した。ボクは代金を支払って肉丼を受け取ると、空いてる席に座った。


 「おぉ! 美味しそう」


 ボクは丼のフタを開けて歓声をあげる。


 「リバス様、代わるから食べてください」


 『余計な気を回すな。我は食事に興味などない。酒以外はな……これは貴様が食べろ』


 「そうですか? せっかく美味しそうなのに……でも、そういうことなら遠慮なくいただきます!」


 早速、具材とご飯を一緒に口に運ぶ。甘辛く味付けされたお肉がご飯に合う。そこに唐辛子がいいアクセントになっている。添えられている漬物も塩味がちょうどよく、丼との相性がバッチリだ。


 「美味しかったぁ!」


 ボクはご満悦で最後にお茶をすする。


 (さて、と。腹ごしらえもできたし、次の依頼を探そう)


 食器を返却口へと戻し、掲示板へと向かう。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 「よし、これにしよう!」


 ボクは残り少なくなった依頼書のなかから一枚を取った。


 『なんだ、これは?』


 リバス様が不満そうに訊いてくる。


 「依頼書ですよ?」


 『そんなことは見ればわかる! 内容を訊いているのだ』


 「【愛犬の散歩】ですが?」


 『なぜ、魔王が畜生の散歩などをせねばならぬ!?』


 「仕事だから」


 『えぇい、話にならぬわ! このような依頼を受けることは許さん!!』


 「これ、お願いします」


 怒り心頭に発しているリバス様を軽くスルーして、ボクは依頼書と冒険者証を受付嬢に提出した。


 しかし、冒険者証と依頼書を受け取り、確認していた受付嬢が固まる。


 「何か問題でも?」


 不思議に思って訊く。


 「あっ、いえ、問題はありません。けど……」


 「けど?」


 ボクは続きを促す。受付嬢は少し躊躇ためらいながらも口を開いた。


 「あの、魔王ってもっと怖いイメージだったものですから、なんだか意外で……」


 微笑する受付嬢にボクも笑みを返す。


 「魔王にもいろいろいるんだよ。といっても5人しかいないんだけどね」


 「ルベタさんはほかの魔王さんをご存知なんですか?」


 「ひとりだけ知ってるよ。彼女もたぶん悪い人じゃないと思う。自由奔放な感じかな」


 ボクはフォラスで出会ったラミレラのことを思い出していた。


 「そうなんですね。戦いを挑んで亡くなる冒険者や勇者様ってけっこう多いから、魔王って好戦的な性格なのかと思ってました」 


 『ふん。魔王とて降り懸かる火の粉なら払いもするのは道理であろう』


 と言うリバス様の言葉は聞こえるはずもなく、ボクが代弁することにした。


 「魔王だって降り懸かる火の粉は払うさ」


 「そうですね。魔王にもルベタさんのような方がいらっしゃるんですもんね。……あっ、あたしはネイファっていいます。よろしくお願いしますね」


 「こちらこそ、よろしく!……」


 ネイファと呼び捨てにしかけて飲み込む。今のボクはガムイラスだった時とは違う。レミィと初めて会った時は泊めてもらう立場だったから、さん付けだった。だけど、普通はいきなり呼び捨てにするのは失礼なのかも。これからはそういうところにも気をつけないとね。


 「ネイファさん」


 ボクは飲み込んだ言葉の続きを声にする。


 「はい。それでは手続きが完了しましたのでよろしくです」


 「オッケー!」


 ボクはサイン無記入の依頼完了書を受け取るとギルドをあとにした。

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