初仕事
冒険者ギルドの扉を開けて中に入ったボクたちは衆目を集めた。
「おい。あいつ、魔王らしいぞ」
「一緒にいる少女はだれだ? まさか、魔王に洗脳されているとか!?」
「かわいそうに……」
「あの魔王の野郎、あんなかわいい娘を!」
みんな好き勝手なことを言ってるなぁ。主に、ボクには悪意が、レミィには同情が向けられている。そして隣では……
「もぉ! みんな、ルベタのことを知らないで勝手なことばっかりなんだから!」
「まぁまぁ。ボクは気にしちゃいないからさ。それより依頼の受付を済ませようよ」
憤慨するレミィを宥め、依頼書が貼り出されている掲示板へと向かう。
「どれにしようか?」
『やはり、魔王が冒険者をやるからには討伐依頼であろうな』
リバス様が自分の希望を言ってる。
「討伐依頼ですか? でも、見たところそんな依頼はないみたいですよ」
ボクは貼り出されている依頼書を確認しつつ言う。
「ならば、今日は休みということでよかろう」
「そんなのダメですよ! 宿代だって稼がなきゃいけないんですから」
ボクとリバス様がやり取りしている横で、レミィが一枚の依頼書を取る。
「レミィは決まったの?」
「うん。わたしはこれにしようかな」
そう言って、見せてくれた依頼書の依頼内容の欄には【調理補助】と書かれていた。
「調理補助か。うん、レミィは元々料理が上手だしいいと思うよ」
「フフフ……ありがと。ルベタは何か見つかった?」
「ボクは……」
まだ決めていなかったボクは手近にあった依頼書を取る。
「うん、これにしようかな」
「どれ?」
レミィに依頼書を見せる。
「花壇の水やりね。初めての依頼なんだし、いいんじゃないかな」
ニコリと笑むレミィ。だけど……
『ま、魔王である我が……花の水やりだと!? 認めぬ! 断じて認めぬぞ!!』
予想どおり、リバス様が猛反対している。
「いいじゃないですか、実行するのはボクなんだし」
『ならぬ!』
なおも反論するリバス様を無視して依頼書と冒険者証を受付に提出する。
『貴様! 我は許可しておらぬぞ!!』
リバス様が諦めずに反論している。でも、宿代をレミィだけに負担させるわけにはいかない。
「へっ? 本当にこれでよろしいのですか?」
受付嬢のお姉さんも驚いたような表情をしている。たしかに、魔王が花壇の水やりをしているなんて意外性はあるよね。
『今からでも遅くはない。すぐにキャンセルしろ! これは命令だ!!』
と言っているけれど、ボクはリバス様の部下というわけでもないから却下させてもらおうかな。
『ルベタァァァァァァ!!!』
リバス様の怒声を聞きながら、ボクは無事に依頼の受付を済ませるのだった。




