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魔王様の大冒険  作者: 美山 鳥
第12章 冒険者生活の始まり
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冒険者生活 初日

 翌朝、ボクは窓から射し込む陽光で目を覚ました。


 「もう朝かぁ……」


 大あくびをしてベッドから脱け出す。それからシルバーミスリルの軽鎧を装備する。


 コンコン


 扉がノックされた。


 「どうぞ」


 ボクが応答すると、レミィが入ってきた。今日も笑顔が眩しい。


 「おはよう、ルベタ」


 「おはよう、レミィ」


 「あのね、朝食ができたみたい。ビュラーヌさんが言ってた」


 「そっか。それじゃ、一緒に行こうか」


 「うん」


 最後に魔大剣ヴィデルガラムを背負って部屋を出る。それからレミィと二人して1階へと向かった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 「やっと起きたようだね。さぁさぁ、とっとと朝飯をお食べ」


 階段を下りてきたボクにビュラーヌが声をかけてきた。


 『ふん。ババアが偉そうにぬかすではないか。少し口の利き方というものを教えてやる。ルベタよ、我と代わるがよい』


 うーん……今、リバス様に代わったら大変なことになりそうだ。よって、今回は却下しよう。


 テーブルの上には、おにぎり、漬物、味噌汁、焼き魚といった料理が並べられている。


 『貴様、さらっと無視するのだな……』


 答えることなく着席したボクにリバス様は文句ありげだが、それ以上は何も言わなかった。たぶん、ボクに代わる気がないのを悟っているんだろうな。


 「「いただきます」」


 ボクとレミィが声を合わせ、食事が始まる。


 「美味しい……」


 味噌汁を一口飲んだレミィが沁々(しみじみ)と言った。


 「ヒャッヒャッヒャッ……そうじゃろ、そうじゃろ! アタシ特製の味噌汁はそこらのとは一味違うからねぇ」


 ビュラーヌが自慢げに語る。


 「へぇ。何か隠し味があるんですか?」


 レミィが話に乗っていく。


 「うむ。レミィ嬢ちゃんには特別に教えてやろうかのぉ。実はな、この味噌汁にはこれが入っとるんじゃ」


 そう言って、ビュラーヌは液体の入った小瓶を取り出した。


 (たしかに美味しい……)


 話を聞きながら味噌汁を味わう。


 「なんですか、それ?」


 「これはのぉ、アタシの血と汗じゃ!」


 とんでもない事を堂々と言い出すビュラーヌ。ボクは口に含んでいた味噌汁を吹き出す。


 「なんじゃ、汚いのぉ……」


 悪びれもせず、ビュラーヌはボクを汚ならしそうに見る。いやいや、そっちこそなんてものを客に提供してるんだ。レミィも即座に味噌汁を置いて咳き込んでるじゃないか。


 『ルベタよ、すぐに我と代わるのだ。このババアをこのままにはしておけん! 魔王である我になんというものを飲ませるのだ!!』


 リバス様の怒りメーターが急上昇している。いや、相手が魔王じゃなくてもダメなやつだよ。


 「ジョークじゃよ、ジョーク。まったく、最近の若いもんにはジョークが通じんのじゃな」


 ほんとにジョークなのかな? ビュラーヌが言うとジョークには聞こえないんだけど……


 『疑わしいものだな』


 ほら、リバス様だって疑ってるじゃないか。それに、レミィも不信感の込めた視線をビュラーヌに投げ掛けているよ。


 「なんじゃ、なんじゃ。おまえさんら二人ともアタシを疑うのかぇ?」


 ビュラーヌが両手で顔をおおって泣き真似をする。なんだろう、この神経を逆撫でされる感じは。レミィは困ったように苦笑している。


 「と、とにかく食べましょう。ね?」


 気を取り直して、レミィがボクとを促した。結局、あの小瓶の液体は何なのかな? 怖くて訊けない……


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 「朝からひどい目にあった……ほんとのところ、あの液体の正体は何なんだろうね?」


 冒険者ギルドへの道中、お腹を擦りながら隣を歩くレミィに話しかける。


 「さぁ? それはわたしにも……でも、変な物じゃないよ、きっと……たぶん……」


 レミィも自信はないんだね……。あの宿屋を選んだのは間違いだったんだろうか。でも、ボク一人ならともかく、レミィに野宿なんてさせられないよね。うん、あの状況ではあの宿を選んばざるを得なかったはず。


 「いよいよ、冒険者として初めての仕事を受けるんだよね。緊張するなぁ!」


 ボクが自分で自分の行動を肯定していると、レミィが話題を変えてくる。もしかして、あの妖しい味噌汁のことは思い出したくないとか? まぁ、その気持ちも理解できるよ、うん。


 「そうだね。冒険者の仕事といえば、モンスター退治とか遺跡探索とか護衛とかたよね!」


 「うん! だけど、モンスターはちょっ怖いかな……」


 「大丈夫だよ。いざとなったらボクが守るよ」


 『未熟者の分際で大きく出たものだな』


 うっ、そこはスルーしてくれてもいいんじゃないですかね、リバス様。と本人に言ったところで無駄なんだろうなぁ。


 「ありがとう! でもね、ルベタの気持ちはすごく嬉しいんだけど、パートナーとして守ってもらってばかりじゃいられないよ。わたしもルベタの力になれるように頑張るね!」


 「レミィ……」


 『どちらも未熟者ではないか。最悪、ルベタは殺され、小娘は奴隷として売られるかなぐさみものにされるか』


 うわぁ……性格悪ぅ! そもそもボクが死ぬってことはあんたも死ぬってことでしょうに。


 「どうかしたの? もしかして、リバスさんが何か言ってるの?」


 ボクの様子から察したのか、レミィが図星をついてくる。


 「ああ、うん、まぁ、いろいろとね」


 曖昧あいまいな返事を返すボク。


 「ふーん。あまりいいことじゃないみたいね。リバスさんって女の子にモテないタイプじゃないかしら」


 レミィがジト目でボク……というよりリバス様を見る。


 『この小娘! 言わせておけば!!』


 予想どおりに激昂げっこうするリバス様を放置する。


 「と、とにかく協力して頑張ろう!」


 ボクは若干の不安を抱きながら冒険者ギルドへ向かうのだった。

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