宿探し④
「火炎系下位魔術!」
ザレスを接近させまいとレミィは魔術を放つ。
「威力・精度・速度、どれもまだまだだぜ、お嬢ちゃん!」
レミィが撃ち出す火炎の球を難なく避けてみせるザレス。
「そらそら、どうしたよ!?」
接近したザレスがロングソードによる斬撃を繰り出す。レミィは大賢王の杖で受け止める。
「くっ……」
レミィは、次々に繰り出される斬撃を防ぐだけで精一杯だ。反撃の糸口を見いだせない。
(なんとかしなきゃ!)
焦燥感と恐怖心を必死に抑えながら考えを巡らせる。
「濃霧魔術!」
まずはザレスの視界を封じる。
「あまい!」
索敵魔術で大まかな位置を把握したザレスがロングソードの切先を向ける。
「氷塊系下位魔術!」
ザレスが突きを放つより早くレミィの魔術が発動する。出現した氷塊がザレスに襲いかかる。
「ちっ!」
ザレスは左手の盾で氷塊を防ぎ、即座にロングソードを水平に閃かせる。
後方に飛び退いたレミィの前をロングソードの切先が通り過ぎる。
「神風系下位魔術!」
左手をかざして魔術名を詠唱発動し、突風を生じさせる。
「くっ……」
ザレスは吹き飛ばされまいと両足を踏ん張る。
神風系下位魔術による突風を放ちながら後退することで、ザレスとの間合いを充分に確保したレミィ。魔力を高め、改めて練り上げる。
「また魔術か! うっとうしい!」
ザレスは苛立ったように言い放つと《俊足》を発動させた。
キィィンッ
ザレスのロングソードがレミィの大賢王の杖を弾き飛ばす。宙を舞い、地面に落下した大賢王の杖を拾おうとするレミィの喉元にロングソードの切先が突きつけられる。
レミィは動きを止めざるを得ない状況に追い込まれ、悔しさに唇を噛む。
「へへへ……勝負あり、だな」
ザレスは、勝ち誇ったように笑みを浮かべる。
(まだよ……まだ何かできるはず!……)
レミィは思考することをやめない。勝利を諦めない。ルベタのパートナーとして足手まといになるわけにはいかなかった。
「けっ、まだ諦めちゃいないようだな。だったら、大怪我してもしらねえぞ!」
ザレスがロングソードを動かす。それとほぼ同時にレミィが練り上げていた魔力を使って防御魔術する。
「うぅっ!」
レミィの首筋から鮮血が流れる。が、防御魔術の効果はあったらしく、致命傷とはなっていない。
すぐに傷口に手を当て、回復系下位魔術で治療する。
「往生際が悪いぜ、嬢ちゃん!」
ザレスは上段に構えたロングソードを振り下ろした。
レミィは、地面を転がるようにしてどうにかかわす。
「はんっ、無様なかわし方だな!」
レミィを見下しながら、ザレスはロングソードで幾度も斬りかかってくる。その度に転がり続ける。
「しぶといんだよ!!」
ザレスがロングソードを殺気を込めて振り下ろす。
「なに!?」
地面を転がり続けたレミィは大賢王の杖でロングソードを弾く。
(こいつ! ただ逃げ回っていた訳じゃなかったのか!?)
ザレスは、レミィの行動の真意を読み損ねたことを悔やむ。
「この、女ぁ!!」
激昂したザレスはロングソードの切先をレミィに向けて突く。対して、レミィは敢えてザレスの懐に飛び込んでいく。
(なんだと!?)
予期せぬレミィの行動にザレスは動揺した。ロングソードがレミィの肩口を掠めていく。だが、レミィは止まらない。左手の手のひらをザレスの胸に密着させる。
「どんなに無様でも、みっともなくても、わたしはルベタの足手まといになりたくない! 雷撃系下位魔術!!」
「ぐあぁぁぁぁぁぁっ!!!」
レミィが左手を密着させて放った、大賢王の杖の魔力も使っての全力の一撃はザレスを失神させるに充分な威力を有していた。
「レミィ!」
ザレス以外の敵を倒したルベタが駆けつける。張り詰めていた緊張の糸が切れたレミィはその場に座り込んだ。




