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魔王様の大冒険  作者: 美山 鳥
第11章 宿探し
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宿探し②

 カビラルの港町はずれの空き地にボクたちは移動した。相手は10人の大所帯パーティーだ。


 「ふん! この人数を相手にどこまで粘れるだろうなぁ?」


 リーダー格とおぼしきロングソードの男はいたって余裕の態度だ。


 『一人一人を相手にするならば、貴様でも問題なく倒せるレベルだな。しかし、同時に相手するとなると油断できんぞ。戦闘に不慣れなレミィを守りながらではなおさらだ』


 リバス様が助言してくれる。たしかに、個人戦なら負ける気はしないんだけどなぁ……


 「なんか、ごめんね。トラブルに巻き込んじゃった……」


 申し訳なさそうに囁いてくるレミィに笑顔を見せる。


 「レミィが気にする必要はないよ。魔族であるボクと一緒にいたからトラブルになっちゃったんだしさ」


 「それだってルベタが悪いわけじゃないじゃない。悪いのはあの人たちのほうだわ!」


 「まっ、とにかくあいつらを倒せばいいんだから頑張ろう。……正直に言えば、レミィには戦いに参加してほしくないんだけどね」


 「どうして?」


 「もちろん危険だからだよ」


 「わたしは冒険者ルベタ・リバスのパートナーなんだよ! ルベタに任せきりにして安全な所で見てるなんてできるわけないでしょ!?」


 予想どおりの答えが返ってきた。


 「なにを喋ってやがる? 俺らを前にして随分と余裕を見せつけてくれるじゃねぇかよ。たっぷりと後悔させてやるぜ!!」


 言って、左手を掲げるロングソードの男。やや後方に控えていた、ほかの男たちが一斉に動きだす。


 『やつらが陣形を整えるのを待ってやる義理もあるまい』


 リバス様の助言に従ってボクも行動を起こす。


 「レミィ、こっちだ!」


 パートナーの魔術師に声をかけ、魔大剣ヴィデルガラムを抜きながら移動する。レミィを一人にするのは危険だ。


 ボクとレミィを囲もうと左右に広がって移動する男たち。その左側の連中の行く手を遮ると、最前列の男の脇腹目掛けてヴィデルガラムを真横に振り抜く。


 「ぎゃあ!」


 ヴィデルガラムから相手の肋骨ろっこつが砕ける感触が伝わる。悲鳴をあげて吹っ飛んだ男は地面でのたうち回る。


 「野郎!」


 最前列の男のすぐ後ろにいた男が手斧を掲げる。


 「雷撃系下位魔術ライトニングボール!」


 レミィが大賢王の杖を掲げて魔術名を詠唱した。放たれた雷の球が手斧男の顔面に命中する。


 「ぬ……ぐ!……」


 男はダメージを受けてよろめく。だけど、倒すことはできなかった。


 ボクは、雷撃系下位魔術ライトニングボールに堪えた男の顔面を蹴り飛ばす。


 「ぐべっ!……」


 手斧男もさすがに白目をむいて仰向けに地面へと沈む。


 「しゃがんで!」


 「えっ?……はい!」


 ボクの指示に戸惑いながらも従ったレミィの頭上を巨躯きょくの男の腕が通過する。


 「でやぁ!」


 ボクは、気合いとともにヴィデルガラムで巨躯きょくの男の横っ面を薙いだ。


 「ぬぐぉぉ!……」


 (さすがに頑丈だな)


 巨躯きょくの男はボクの攻撃に堪えた。が、足元はふらついている。


 「やぁぁ!!」


 レミィが渾身の力で振り上げた大賢王の杖が巨躯きょくの男のあごをとらえる。だけど、レミィの物理攻撃ではとどめをさすにはいたらない。


 (一度、距離をとったほうがいいかな)


 ボクはレミィの体を抱き抱えると巨躯きょくの男を跳び越え、空中で身をひるがえして着地する。


  「氷塊系下位魔術アイスボール!」


 レミィの魔力によって作り出された氷塊が巨躯きょくの男の後頭部を直撃する。あれはかなり痛いそうだ。実際、巨躯きょくの男は前のめりに倒れて痙攣けいれんしている。


 「調子にのるなぁ!」


 右側から回り込んできた男が短剣を振り下ろす。


 ボクは、左手でそれを受け止める。シルバーミスリル製のグローブは傷ひとつ付かない。


 「うぅ……」


 ボクはヴィデルガラムを握る右手に力を込めた。それに気付いた短剣の男は後退あとずさりする。


 「せやぁ!」


 下段に構えたヴィデルガラムを左下から右上へと滑らせる。短剣の男もまた最初の男と同じく肋骨ろっこつを砕かれて悶絶もんぜつする。


 (くっ!)


 直後、ボクは魔力を練り終えた魔術師風の男を視界にとらえた。今からでは回避できない。防御魔術ガードを行使し、全身を魔術・物理によるダメージを軽減する保護膜で包む。


 「くらいやがれ! 火炎系下位魔術フレアボール!」


 魔術師風の男が放った火炎の球が迫ってくる。


 (レミィ!?)


 突然、火炎の球とボクとの間にレミィが身をおどらせる。


 レミィは羽織っていたマントで火炎の球を受ける。


 「レミィ!?」


 彼女の名を叫ぶ。


 「心配しないで」


 マントで攻撃魔術を受けながらレミィが言う。


 『さすがは守護の魔衣といったところか』


 リバス様が感心している。


 守護の魔衣? そういえば、定期船で出会った行商人もそんなことを言ってたな。……あとで教えてもらおう。今は戦いに集中しなきゃ。


 レミィが無事なのを確認したボクは、ヴィデルガラムを下段に構えたまま一気に魔術師風の男に詰め寄る。


 「ひぃっ!」


 ボクの左拳が、恐怖から顔を引きつらせた魔術師風の男の腹にめり込む。


 キリリ……


 ロングソードの男の隣にいた、弓矢を持った男が弦を引き絞って放つ。その動きをいち早く察知したボクは咄嗟に魔術師風の男を盾代わりにする。


 「ぎゃあ!」


 ボクの身代わりとなった魔術師風の男は、右腕に矢が刺さって地面をのたうち回る。敵ながらちょっとかわいそうだ。盾代わりにしたのはボクなんだけど。


 (これで5人。半分は倒したか……)


 レミィと合流したボクはヴィデルガラムを正眼に構える。


 リーダー格の男は右手にロングソード、左手に盾を構えてボクたちを見据えている。仲間の男たちもボクたちから離れて出方をうかがっている。


 『無闇に攻めてこぬか。思ったほどバカではないようだな』


 リバス様が褒めているのかけなしているのかわからない言葉を相手に投げ掛ける。当然、聞こえてないんだけどね。


 さて。残りはどう片付けるかな……

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