宿探し①
「無事に冒険者登録できてよかったね」
冒険者ギルドをあとにして、レミィが安堵したように言う。
「うん。登録できなかったら職探しから始めなきゃならないところだったよ……」
『魔王が就職難民になるなどあってたまるものか』
リバス様が世知辛いことを言っている。
「次は宿探しね」
「うん。見つかればいいんだけど……」
不安を口にするボクにレミィがニコリと笑んだ。
「きっと大丈夫よ。……まずはあそこから行ってみましょう!」
ボクを励ますように笑顔で言うと、レミィは大通りに面した一件の宿屋へと足を運ぶ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「いらっしゃい」
宿屋に入るとカウンターで受付を担当している女性が声をかけてきた。
「あの、連泊で部屋をとりたいのですが……」
カウンターで近付いたレミィが訊く。
「いいわよ……って、まさか、そっちの魔族も泊まるってんじゃないだろうね?」
ボクの瞳が赤いことに気付いた女性が睨み付けてくる。
「はい。もちろん彼も一緒に……」
「生憎だけど満室なんだよ。ほかを当たるんだね」
レミィが言い終わらないうちに女性は拒絶する。
「え? でも……今、連泊してもいいって……」
「ああ、言ったよ。けどね、魔族を泊めてやる部屋なんてないってことさ。言っとくけど、魔族を泊めるような宿屋なんて、なかなか見つからないよ」
(随分と感じの悪い店だなぁ……)
そんなことを感じていたボクの隣でレミィが憤慨した。
「魔族ってだけで差別するんですか!? だったら、そんな所に泊まりたくない! 行こ、ルベタ!!」
踵を返して立ち去ろうとするレミィの前にひとりの男が立ちはだかる。年齢は30代だろうか。頬に傷があり、重鎧をまとっている。腰にはロングソードを提げていた。戦士といった風貌だ。
「……なにするんですか!?」
男は、脇をすり抜けようとしたレミィの手を掴んだ。
「へへへへ……泊まる所がねぇなら俺らの部屋を使わせてやるよ」
下卑た笑みを口許に浮かべ、舌舐りをする。
「お断りします! だから、その手を放してください!」
レミィは強引に男の手を振りほどこうとするが、純粋な力では到底及ばない。
もちろん、ボクとしては黙っているつもりなど毛頭ない。
ボクはレミィの腕を掴んでいる男の鍛え上げられた太い腕に手をかける。
「あん? 魔族ごときが俺に触ってんじゃねぇよ。今すぐに消えろ」
ボクを睥睨して言い捨てる男。それにタイミングを合わせるかのように数人の男たちがボクの周りを囲む。
『ふむ。この男は冒険者パーティーのリーダーといったところか』
それまで黙っていたリバス様の一言がボクだけに聞こえる。
「ボクの連れを解放してもらおうか。君たちだって無駄にケガしたくないだろう?」
ボクの挑発に男は顔をしかめる。
「ちっ。魔族が粋がりやがって! いるんだよな、魔族だからって自分は無敵だと勘違いしてるやつがよ! 実際は魔力が多いってだけの大したこともない連中なのにな」
「こんな所で暴れると周りに迷惑だ。とりあえず場所を変えよう」
毒づく男を別の場所へと促すと、レミィの手をとって移動した。




