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魔王様の大冒険  作者: 美山 鳥
第10章 世界へ!
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食堂にて

 食堂は美味しそうな料理の匂いで満たされていた。お刺身、シーフードサラダ、魚介スープ、具だくさんのイクラ丼がテーブルに並べられている。


 ボクたちは席に着いて食事をる。


 まずはシーフードサラダを口に運ぶ。ハーブが貝柱の旨味を引き出していて、さっぱりとした味わいだ。添えられているドレッシングを少し振りかけることで味の変化が楽しめる。


 次に刺身を一切れ口に運ぶ。噛むたびに魚の旨味が口いっぱいに広がる。続いて刺身を三切れ口に運んだ。箸が止まらない。レミィもイカのお刺身を幸せそうに食べている。


 ここで魚介スープを一口すする。出汁だしがしっかり効いてて、具材のエビはプリプリしてる。


 最後はイクラ丼だ。上から少量のお醤油をかけてパクつく。噛むことでプチプチと弾けて口の中に溢れた液体が醤油と混ざり合う。なんと言えない味わいだ。それがご飯と絡み合うことで絶妙な味のハーモニーを作り出している。


 「うまっ!」


 「ほんと! どれもすごく美味しいね!」


 レミィも出された料理を一通り食べて舌鼓を打っている。


 ボクとレミィはその後も楽しく食事を続けた。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 「おまえ、魔族だよな?」


 食事を終えて、レミィとゆっくり語り合ってるというのに無粋な男が声を掛けてきた。鎖帷子くさりかたびらを着て槍を背負っている。おそらくは冒険者だろうな。その黒い瞳から送られてくる視線には明らかな悪意が込められていた。


 文句を言おうとするレミィを制止する。


 「そうだけど、なにか用?」


 ボクは食後に提供されたお茶をすすりつつ訊く。その態度が余計に気に入らないのか、男は机の上の乱暴に手をつく。周りの客たちが固唾かたずをのんで事の成り行きを見守っている。


 「魔族が人間様と一緒に食事してんじゃねぇよ! っていうか、一緒の船に乗るんじゃねぇ。今すぐ海へ飛び込めよ!!」


 『るか』


 男の悪態にリバス様が呟く。もしも今、リバス様だったらこの人の首はその辺に転がっていただろうなぁ。


 いや、リバス様だけじゃない。目の前ではレミィの手が大賢王の杖に伸びかけている。放っておいたらきっと大賢王の杖でこの人を殴り倒しそうだ。


 「レミィ、落ち着いて。こんな安い挑発になんかのらないからさ」 


 ボクはレミィに笑いかける。だけど、レミィは納得できないようだ。


 「安い挑発だとわかってても、ルベタがこんな人に好き放題に言われるのが嫌なの!」


 レミィはもう怒りを抑えられなくなってきている。


 「おい、女! こんな人ってのは聞き捨てならねぇぞ」


 男に乱暴に手を引っ張られたレミィが床に倒れる。その瞬間、ボクは男の手を掴んでいた。


 「な、なんだよ! やるってのかよ!?」


 ボクは敵意をむき出しにして男を睨む。ボクを好き勝手に言うのはかまわない。だけど、レミィに手を出したのを許すわけにはいかない。一触即発の緊迫した空気が流れる。


 「そこまでにしてもらおうか!」


 無精髭ぶしょうひげを生やした中年の男が食堂にやってきた。


 「おれはこの船の船長をやってるマーティルってもんだ」


 無精髭ぶしょうひげの男は自分の名を名乗ったあと、冒険者風の男に視線を向ける。


 「船員たちから聞いたんだが、あんたがこちらの魔族さんに言い掛かりをつけたのが事の始まりだとか?」


 「い、いや……言い掛かりというか……」


 冒険者風の男は、マーティルの射抜くような視線を受けて言いよどむ。


 「無用は争いは起こさないようにしてもらおうか」


 「う、うるせぇな! 乗客に向かって偉そうなんだよ!!」


 追い詰められた冒険者風の男は遂に逆ギレする。


 「うるせぇのはあんたのほうだ。いいか、よく聞けよ。たしかにあんたもこの船の大切な乗客だ。だがな、それはこちらの魔族の旦那だって同じだ。それに……」


 そこまで言って、マーティルの視線は一層強くなった。


 「おれにはこの船に乗ってくれている乗客・乗員・積み荷の安全を守る義務があるんだ! この船に乗船してるからにはおれの指示に従ってもらう。わかったな!?」


 (怖ぁ……今にも殴り飛ばしそうな雰囲気が駄々漏れだよ、マーティル船長)


 ボクは事態を見守りながら、怒られてるのが自分じゃなくてよかったと思わずにはいられなかった。


 「わかってもらえたのなら、お戻りいただいてけっこう」


 「ちっ!」


 冒険者風の男は舌打ちをして逃げるように立ち去った。


 「ったくよぉ……」


 その後ろ姿を見ながらマーティルは髪をワシャワシャとく。


 「ありがとう、マーティル船長」


 ボクは船長に礼を言う。


 「いや、こちらこそ礼を言わせてくれ。よくこらえてくれたな、心より感謝する」


 船長帽をとって頭を深く下げるマーティル船長。


 「それにしても、今回は助かった。二人の旅が良い思い出になることを祈らせてもらう」


 「ありがとうございます」


 マーティル船長の気遣いにレミィが礼を返す。マーティル船長は軽く片手を挙げて立ち去った。


 「いい船長さんでよかったね」


 「うん」


 レミィの言葉をボクは肯定した。


 その後、ボクたちはカビラルの港町に到着する翌朝に備えて就寝した。

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