船酔いに苦しむ魔王
大変お待たせしました!
今話よりルベタとレミィの冒険編です!!
……不定期の更新ですが、宜しくお願いいたします。
ボクの故郷である孤島フォラスを出港した定期船は、穏やかに波打つ洋上を順調に航海していた。目指すはカビラルの港町だ。
「潮風が気持ちいいねぇ!」
レミィは両腕を広げて潮風を胸いっぱいに吸い込んでいる。その隣でボクは……
「……き、気持ち悪いぃ……」
船酔いに苦しんでいた。
「えっと……大丈夫?」
レミィが心配そうにボクの顔を覗いてくる。
「……あぁ……うん……大丈夫……じゃないかも……」
ボクはがっくりと項垂れる。
『まったく……魔王ともあろうものが船酔いでこのざまとはな。情けないにもほどがある』
ボクの中のもうひとつの魂であるリバス様が愚痴る。少しは気づかってくれてもいいのになぁ……
『せっかく魔大剣ヴィデルガラムを扱えるというのに……持ち主がこれではな……』
「ヴィデルガラムを扱えるのはリバス様であってボクじゃないですよーだ……」
ボクは力なく反論する。
『なんだ、やはり気付いておらんのか』
「……なににですか?……」
『貴様自身もヴィデルガラムを抜けるようになっていることにだが?』
……へぇ…………ん? ボクがヴィデルガラムを鞘から抜ける?
「どうかしたの?」
ボクの様子がおかしいことに気付いたレミィが訊いてくる。
「……リバス様が言うには、ボクにも魔大剣ヴィデルガラムを扱えるって……」
ボクは呟くように答える。
「ヴィデルガラムって、ルベタが背負っている大剣だよね?」
「うん。魔大剣ヴィデルガラムは剣自身が認めた者でなきゃ鞘から抜くことができないはずなんだ」
「すごぉい! よかったじゃない!」
レミィは笑顔で小さく拍手して祝ってくれる。優しいなぁ、レミィは……
ボクは持っていた大賢王の杖をレミィに渡すと背中の魔大剣の柄を握る。
「え?」
レミィが驚いたような表情をしている。が、ボクはそれにかまうことなくヴィデルガラムを鞘から引き抜く!
「お、お、おぉぉ!!」
ボクは感動の声をあげた。最弱モンスターだったボクが、魔王様が使うような強力な武器の使い手になれるなんて! これってすごいことだよね!?
ボクは船酔いも忘れて魔大剣ヴィデルガラムを素振りする。抜き身のヴィデルガラムを持つのはリバス様と同化した日以来だ。
「見てよ、レミィ!」
ボクは嬉々としてレミィを見る。が、レミィはどこか引きつったような笑顔を見せている。どうかしたのかな?
「う、うん。すごいね、ルベタ! でもね、ひとまず魔大剣はしまっておこう?」
「え? どうして?」
ボクが訊くとレミィは周りに視線を配る。それに合わせるように視線を泳がせる。
「あっ……」
周りにいた乗客たちが遠巻きにボクとレミィを見ている。そりゃそうなるよね。ブツブツと独り言を呟いてると思ったら、いきなり背中の大剣を抜いて振り回してるんだから……。しかも、ボクは魔族特有の赤い瞳をしている。
『愚か者が……』
リバス様の冷ややかな声が胸に突き刺さる。
「あの、お騒がせしました……」
ボクはヴィデルガラムを背中の鞘に納めると周りにペコリと一礼した。レミィも同じように頭を下げてくれている。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ごめん、レミィ!」
ボクはレミィに手のひらを合わせて謝る。
「ううん、いいのよ。ルベタにとってその剣に認められたことがそれだけ嬉しかったんだってわかるから」
「ありがとう!」
レミィの優しさが胸に沁みるなぁ! それにひきかえ……
『よくもまぁ、衆目の下で無邪気に剣を振り回せるものよ。恥知らずとは貴様のためにある言葉やもしれぬな』
リバス様の情け容赦ない言葉がボクの胸をえぐっていく。
「ん?」
ボクがリバス様になじられていると、レミィが目の前に大賢王の杖が差し出す。
「それじゃ、これを返しておくね」
そっか。大賢王の杖をレミィに預かってもらってたんだった。だけど、ヴィデルガラムを使えるとわかったのだから、この杖は……
「それはレミィが使ってくれないかな?」
ボクからの提案にレミィが驚いたような表情をする。
「ダメだよ! これってすごく貴重な杖なんでしょ!? それに、ランツァ村長の形見なんだし! そんなの受け取れない!」
全力で拒否するレミィを落ち着かせる。
「たしかにそうだよ。大賢王の杖は唯一無二の杖だし、村長が大切に使っていた物だ。でも……ううん、だからこそ、レミィに使ってほしいんだ。きっと、ランツァ村長だってそれを望むはず。それにさ、ボクにはこの魔大剣ヴィデルガラムがあるから!」
ボクは右手の親指で背中の大剣を指す。
「えっと、ほんとに貰っちゃっていいの……かな?」
「もちろん!」
ボクが笑顔で即答すると、レミィからも弾けるような笑顔がこぼれる。
「ありがとう! 大切にするね!」
彼女の笑顔を見てるとボクまで嬉しくなってくる。
そんなボクたちに男性がひとり近付いてきた。




