旅立ち①
ベッドの上で目が覚めた。
「あっ、おはよう」
部屋に入ってきたレミィが窓のカーテンを開ける。朝日が部屋に差し込んできた。
「えっと……」
レミィがまじまじと見つめてくる。
「ボクはルベタだよ」
レミィが言葉にできないでいる質問に笑顔で答える。
「そっか。今はルベタなんだね! そうすると、リバスさんは眠ってる状態なの?」
「いや、基本的にボクが起きている時はリバス様も起きてるし、ボクたちが話してる内容もリバス様に伝わってるんだ」
「へぇ、そうなんだ。それじゃ、私がリバスさんと話してた内容もルベタには聞こえてたのね?」
「うん」
ボクとレミィが話していると空腹のポポルが顔を覗かせる。
「なあ、起きたんなら朝飯にしようぜ」
「そうね。ルベタも早くね!」
寝室から出ていく二人を見送って、ベッドから脱け出す。
「おはようございます。リバス様」
予想通りに返事はない。それでもかまわず話し続ける。
「どうしてボクに身体を任せてくれたんですか? てっきりリバス様がずっと前面に出るのかと思いました」
『どうせ貴様のことだ。島の復興作業を手伝えとかぬかすつもりであろう?』
「それは……」
完全に読まれている。否定できずに言葉をなくす。どう考えてもリバス様が積極的に手伝うとは思えない。
『やはりな。そんなことだろうと思ったからこそ入れ替わることにしてやったのだ。でなければ、うるさくてかなわぬ』
やっぱり、リバス様って優しいな。正直なところ、吸収された時は、なんてことしてくれたんだ!? って感じだったけど、それがあったからこそボクたちはフォラスを守ることができたんだ。今は感謝しているくらいだ。そして、ボクを吸収したのがリバス様でよかった。心から思える。
なんだか、笑いが込み上げてくる。
『何をいきなり笑っておる? 気持ち悪いやつだな』
「いいえ、なんでもありません」
答えて、寝室を後にした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
居間に設置された食卓にはレミィが用意してくれた朝食が並べられていた。メニューはパンとスープとサラダ。まだまだ復興半ばだな。特に、育ち盛りのポポルにとっては支給される食料も充分ではないだろう。
「どうしたんだよ? 早く食おうぜ」
立ったまま無意識にポポルを見つめていたことに気づかされる。レミィとポポルは既に着席していた。
「ああ、ごめん」
遅れてボクも椅子に腰を下ろし、三人で食事を始める。
「ねぇ、訊いてもいい?」
食事を開始して間もなくレミィが話しかけてきた。
「うん。どうしたの?」
「ちょっとした疑問なんだけど、ルベタが食べた食事の味はリバスさんにも伝わってたりするの?」
「ううん。共有してるのは視覚と聴覚だけみたいなんだ」
ボクが答えるとレミィは少し考えてから訊いてきた。
「ねぇ、昨夜の食事はリバスさんの口に合ってたのかな?」
「どうなんです、リバス様?」
『……』
レミィに代わって訊ねるも答えは返ってこない。
「ダメだ。答えてくれないみたい」
「もう! 答えてくれたっていいじゃないのよ……」
レミィが頬を膨らませる。それでもリバス様は何も言わない。
「まぁまぁ。気に入らなかったら食べていないはずだから」
ボクはフォローを入れておく。
「そうだよね。ありがとう」
レミィは機嫌を直して笑顔を見せてくれる。
「なぁ、ルベタはこの島から旅立っちまうんだろ? 具体的な日は決めたのか?」
今度はポポルから質問がとぶ。
「まだちゃんとは決めてないけど、あと二週間くらいかな?」
「そうなの!?」
ボクが答えるとレミィが立ち上がる。
「うん。復興もある程度進んできてるからね。もう、ボクがいなくても大丈夫なのかなってね」
「そんな……」
レミィは肩を落として目を伏せる。
『ふむ。こやつらともようやく別れることができるのだな』
黙り込んでいたリバス様が声を発した。さっきは無視したくせに……
「それまではもう少しみんなの手伝いをするし、たまには帰ってくるよ」
言ったものの二人は落ち込んだままだ。ボクはその後に続く言葉を見つけられず黙ってしまう。
いつも読んでくださってありがとうございます。




