魂の腕輪
チセーヌ村はまだまだ復興半ばといった感じだ。あちらこちらで住人たちが互いに協力して倒壊した家屋を建て直したりしておる。普段はルベタもこうした作業を手伝っておるのだが、今は交代で休息をとっておったのだったな。そこをラミレラが邪魔しおった。
だが、我はルベタとは違う。故に同じことをしてやる義理もなく、また、する気など毛頭ない。
「おっ、交代にきてくれたのか?」
我の姿をみとめた男が気安く声を掛けてきた。我は一瞥して無言のままレミィやポポルが暮らす家へと向かう。
「へ? あっ、おい。もしてして、どこか具合でも悪いのか!?」
男の困惑した声を背中に聞きながら、それでもあえて無視して屋内へと姿を消す。
『リバス様! 休憩が終わったんなら交代しましょうよ?』
早速、ルベタが抗議してくる。が、我はまるで聞こえぬ素振りでベッドに横になる。
『ちょっと、聞いてるんですか!?』
なおもうるさく食い下がってくる。さすがに煩わしく思えてきた。
「黙れ。我は我の思うがままに動くまでだ。人間ごときの手伝いなどする気にはなれぬ」
『まったく……ところで、リバス様の魂が表に出たのは腕輪の効果なんですよね?』
答えるのも面倒だ。無視してしまうに限る。
『聞いてますか? ねぇ、聞こえてます? ちょっと、無視しないでくださいよ。 寂しいじゃないですか!』
「えぇい、うるさい!」
一つの身体の魂が二つとは厄介なものだ。静かに寝ることもできんのか。
「やれやれ……これは古の魔具の一つで魂の腕輪と呼ばれる物だ。本来は禁忌の呪法により造り出されたキメラをおとなしくさせるための物だ」
『キメラ?』
なおもルベタの質問は続く。
「複数体のモンスターを合成して一体のモンスターとした人工生命体だ。それぞれの長所を兼ね備えておる反面、複数の魂……意思が宿っているのが最大の欠点といえる。例えば、ある魂は前に進もうとしても、別の魂は後ろへ戻ろうとすれば肉体はどちらにも動くことができんわけだ」
『うわぁ……それは不便ですね』
「そこでこの腕輪が必要となる。こいつの効果によって複数の魂は一つにまとまる。正確には複数の魂のなかで代表となる存在が肉体を動かすのだ。そして、その代表となる魂は内にある魂の総意によって決定され、その後は代表が自らの意思で他の魂と交代しない限りは変わることはない」
『なるほど! あれ? ボクはリバス様と身体を共有してたけど思い通りに動かなかったことはなかったですよ?』
……まだ続くのか。
「それは、我が控えておったからだ」
『そうだったんですね。やっぱりリバス様は優しい魔王様だったわけですね!』
「くだらんことを言うな。我は暫し眠る故に静かにしていろ」
『了解です。おやすみなさい』
ようやく静かになったか。これでゆっくり眠れそうだ。
いつも読んでくださってありがとうございます。
明日0時より1章最終部までを一挙公開します。




