決戦(ルベタ編⑫)
さて、どうしたものだろう……。ボクに残された力でスヴェインを倒すことなんてできるのか。さっぱり自信がない。いや、相手だって万全じゃないんだ。気持ちで負ければそこで終わってしまう。
ボクは勇気を奮い起たせる。とりあえず紋章の力を完全に抑え込む。これ以上の使用はできれば避けたいところだ。
「まさか、あのアークデーモンが倒されるなど夢にも思いませんでしたよ。しかし、あの化け物も全くの役立たずというわけではなかったようでございますな。あなたを充分に弱らせることができたのですから少しは誉めてやるといたしましょう」
「ああ。あんたよりも遥かの強敵だったよ……。あれほどのやつが……自分よりも格下のやつの言いなりになってたのはなぜだ?」
痛みに耐えながらも少しでも回復の時間を稼ごうと質問をぶつける。
一方、勝利に揺るぎない自信を持っているスヴェインはいつもより饒舌だった。
「そのことですか。単純な話ですよ。レウオさんとメルーさんが見つけ、トゥナム様の元に持参した太古の遺物とはアークデーモンの封印器だったのです。太古の時代、戦争で魔界の魔物の封印器は兵器として扱われていたのです。封印器には、封印された魔物が封印器の持ち主に危害を加えることができないよう術式が施されているのですよ。それが時代とともに失くなり、やがてそのほとんどが破壊されるか消失してしまうことになりました。そして、その製造方法を知る者もいなくなったのです」
「ところが、それをレミィやポポルの両親が発見してしまった……。だけど、あんたはどうしてそれが兵器だとわかった?」
スヴェインが黙って頷き、続いてククク…と笑う。
「わたくしは、名前は容易く明かすわけにはまいりませんがとある組織に属しておりましてね。そこの本部には様々な貴重な文献が数多く保管されているのです。それらの蔵書の中に封印器に関して記されていた物があったのですよ。当然のことですが、実物を目にしたことがありませんでしたし、現存する物などないと思っておりましたから、それが目の前に持ち込まれた時の驚きと興奮といったら!!」
スヴェインは当時に思いを馳せて愉悦する。
「さらに狂喜させたのは、その封印器が生きており、契約することが可能だったのです! あの時は神に感謝したい気持ちでした。なにせ世界最強クラスの力を得たようなものなのですからねぇ!」
「……その契約を交わすと封印されている魔界の魔物を使役できるようになるのか?」
「その通り。そして使役された者は自由を得る代償として契約主に絶対服従するのです。もし、契約主を殺害すれば即座に封印器の中に逆戻りですからねぇ」
なるほどね。だからアークデーモンはスヴェインに逆らえなかったわけか。
「さて、わたくしが体力回復のための時間稼ぎという姑息な策に乗ってまでネタばらししたのには理由があります」
「理由?」
スヴェインの言葉を繰り返す。
「フォラスの争乱に係わる全ての者の望みが叶う、最良のハッピーエンドです」
ボクは黙したまま次の言葉を待つ。
「まずはルベタさんがこの封印器に封印されるのです」
言いながら、スヴェインは懐からペンダントを取り出す。
「ボクが封印されるだって? そんな条件をのむとでも?」
「話は最後まで聞くものですよ。封印されたのち、封印器を通じてわたくしと契約すればあなたは晴れて自由の身。さらに反乱軍の者たちも免罪にするとお約束いたします。これならば、わたくしは魔王ルベタというより大きな力を得られ、ルベタさんは自由を手に入れられ、他の者たちもこれまでのような平穏な生活に戻れる。これ以上だれも傷つかないハッピーエンドだと思いませんか?」
それならこれ以上争う必要はなく、犠牲者も出ないかもしれない。だけど……
「それで望みが叶うのはあんただけだ。ボクが手に入れるのは仮初めの自由、他のみんなはあんたの影に怯えて暮らす日常……そんなものは認めない!」
スヴェインは舌打ちをする。
「ならば仕方ない。死んでいただくほかありません!!」
ショートソードを手に身構え、殺気を迸らせる。
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