決戦(スコルゾ討伐戦④)
「うぉぉぉぉぉ!!」
スコルゾが吠え、空気を震わせる。肌を刺すような凄まじい闘気に緊張感が高まる。
トゥナムが氷塊系中位魔術を放つのとスコルゾが突進するのは同時だった。
初めに軽く跳躍する飛び込み前転の動きで氷の針を避けつつ間合いを詰めるスコルゾ。トゥナムは、その反応速度と身体能力の高さに驚愕して動きを止めてしまった。その一瞬、スコルゾの鉄拳を左頬に受けて吹き飛ばされる。空中で体勢を直して着地し、唇の左端を拭うと手の甲に血液が付着する。
「まだまだお寝んねにゃ早いんじゃねえか?」
スコルゾは、右肘打ち、左ミドル、右膝による腹蹴りと連続で畳み掛ける。その全てを受けて地面に両膝をついたトゥナムに左拳を打ち下ろす。
(これをくらうわけにはいかない!)
トゥナムは痛みを堪えて横に転がり、追撃に備えるためすぐに体を起こしてレイピアを構える。
「へへへ……。ザコばっか狩るだけのつまんねぇ役目なら楽したほうがいいと思ったんだが、なかなかどうして。存外楽しませてくれるじゃねぇかよ」
ゆっくりとした動きで身構えながら嬉々とした表情で話すスコルゾ。トゥナムを獲物に見立てて狩猟を楽しんでいるかのようだ。
「狩る側の余裕か? ならば、忠告しておこう。あまり油断していると不測の事態が起こるものだ」
スコルゾは鼻で笑って口角をあげる。
「だったら、せいぜい楽しませてくれよ。全く無抵抗な奴より少しは抵抗する獲物のほうが狩り甲斐があるってもんさ」
息を整えて目の前の敵を見据える。
「参る!」
一声発して駆け出す。スコルゾの右フックをしゃがんでかわし、レイピアを閃かせる。
「おっと、危ねぇ」
上体を反らしてレイピアを避ける。
トゥナムは懐から白い玉を取り出すと地面に叩きつけた。煙幕が発生してスコルゾからトゥナムの姿を隠すが、効果は長くは続かない。ほんの数秒後には白い煙は完全に霧消してしまう。だが、それで充分だった。空中に放り投げた黒い小袋をレイピアで切り裂く。それと同時にマントで顔を覆い隠す。中に詰め込まれていた黒い粉末が辺りに飛散して悪臭を放った。
「うぉっ、なんだ!?」
スコルゾは黒い粉末を頭から被って動きを止める。
「くっせぇ……。それに、目にしみやがる!」
スコルゾが黒い粉末の催涙効果により攻撃ができなくなった隙にポーションを取り出して一気に飲み干す。外傷は癒え、身体中の痛みが緩和されていく。しかし、全快には遠く及ばない。
続いて丸薬を取り出すと口に放り込んで噛み砕く。なんとも言えない強烈な苦味が口内に広がる。
こうして、トゥナムが全ての準備を終えてレイピアを構え直すころには、怒りを露にしたスコルゾが睨め付けていた。
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