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魔王様の大冒険  作者: 美山 鳥
第8章 フォラス解放戦
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決戦(スコルゾ討伐戦①)

 「負傷した者は無理せず奥で治療を受けよ。まだ動ける者は二班に別れてもらう。一つは戦場に残された物の中から使えそうな物を回収する班。もう一つは交代で洞窟の周辺の警戒にあたる班だ。回収班は作業終了後に休憩を入れて警備班と交代。以後は定期的に交代を繰り返すのだ」

 トゥナムは生き残った者たちに指示を出す。それから取り残されてしまったピラックの住人たちの元へ足を運ぶ。


 皆、一様に不安の表情を見せている。戻る場所も失くし、スヴェインに加担してしまった自分たちにどんな厳罰が課せられるのか心配なのだろう。


 しかしトゥナムは罰を与えるつもりなどない。なぜならば、彼らの行動はスヴェインが正しいのだと信じていたからのものだ。トゥナムもかつてはスヴェインの本性を見破れず信用してしまった。


 「君ちに訊きたいことがあるのだがいいかね?」


 ピラックの者たちに恐怖感を与えないよう注意しながら問いかけるが返事する者はいない。


 「先ほど、敗走していった者たちはスコルゾという名を口にしていたようだが?」


 かまわず質問する。


 「……スコルゾっていうのはスヴェインの片腕のような奴です……」


 暫くして一人の若者がおずおずと答えを返す。


 「スヴェインの片腕?」


 「最近フォラスにやってきたんです。でも、スヴェインとは古くからの知り合いのようでした……」


 今度は別の若者が答えた。


 「旧知の仲、か」


 スヴェインが呼び寄せたという黒装備の者たちはいずれも手練れ揃い。その中で右腕として扱うということは油断できない相手であることは疑いようもない。


 「スヴェインが呼んだ連中の一人が言ってました。スコルゾは一人で俺たちやスヴェインが呼び寄せた連中全員に匹敵する力だ。だから、おまえたちが裏切れば逃げ切ることはできず一瞬で殺されるって……」


 それが事実だとすると、トゥナムには残された戦力で太刀打ちできる相手とは思えなかった。だが、ここで逃げ出すという選択肢はない。いかにルベタが魔王とはいえ、スヴェインとアークデーモンを同時に相手するとなれば厳しい戦いになるのは確実だ。そんなところにスコルゾまで現れては勝てるものも勝てなくなってしまう。


 「そうか。貴重な情報を提供してもらって助かった。では、わたしは急ぐので失礼させてもらうよ」


 「あ、あの!」


 男が掛けてきた声に振り返る。


 「俺たちは……」


 「諸君を裁こうとは考えていない。君たちは自ら最善と思った行動をとっただけなのだろう? しかし、実際の戦場に立ったことでどちらに正義があるのかわからなくなってしまった……。人とは迷い、時には過ちをおかすもの。むろん、それでも罰せねばならない時もある。だが、諸君らはだれも傷つけなかった。よって、わたしは敵とは認識していない。解ってもらえたかな?」


 ピラックの民たちは自分たちの行動を悔いているのか。一様に黙ったまま俯いている。


 トゥナムはその場を離れ、ベレグの元に向かった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 「わたしはこれよりスコルゾを討ちにいく。できれば、共に戦ってもらえないだろうか?」


 「スコルゾを討つだって!? 冗談じゃない! あいつは化け物だ。ルベタと合流して態勢を整えてからにしましょう!」


 ベレグは猛反対する。


 「それでは遅い。スコルゾが領主邸に引き返すようなことがあればルベタが危険だ。彼はフォラスにとって希望であり恩人でもある。失うわけにはいかない!」


 たとえ、ベレグの協力を得ることができなかったとしてもスコルゾは倒さなければならないのだ。


 「なら勝手にすればいいさ! 俺はあんな化け物と戦うなんてごめんだ!!」


 予想はしていた答えるが返ってくる。


 「そうか。では、君にはここでチセーヌやピラックの者たちを守ってもらうとしよう。任せてもかまわないかね?」


 「……ああ……」


 「すまないが頼む」


 単独でスコルゾ討伐に向かう覚悟を決めるトゥナム。


 「トゥナム様……」


 意を決したトゥナムの元に両脇をピラックの若者に支えられたラルバンがやってくる。


 「ラルバン! よかった。気がついたのだな……」


 ラルバンが意識を取り戻したことに安堵する。


 「これより更なる戦いの臨まれるそうですな。ならば、これをお持ち下さい」


 ラルバンが手渡してきたのはポーションや炸裂玉をはじめとした幾つかのアイテムだった。


 「気持ちはありがたいのだがポーションをもらうわけには……」


 ポーションを返そうとするがラルバンは受け取ろうとしない。


 「いえ、ぜひお持ち下さい。今ここでトゥナム様が倒れられては……。あなたにはこの戦いが終わった後、民たちを導く役目があるのですぞ」


 (期待を寄せてくれるのはありがたいが、これまで身を隠し続けてきたわたしにはそれに応える資格がない)


 トゥナムは頭を横に振る。


 「いや、わたしは…」


 「まぁ、その話はこの件が片付いてからにいたしましょう。ともかくそれはお持ち下さい。本来ならば俺が同行したいところなのですが、このザマではかえって足手まといにしかなりますまい」


 ラルバンはトゥナムの言葉を遮り、ポーションも受け取ろうとはしない。それからベレグに視線を向けた。一方、ベレグは俯いて視線を合わすのを避けている。


 「ありがたく受け取らせてもらおう。あとは任せて休んでくれ」


 「……そうしたいんですがね、もう暫くは休めそうにありません。ここにいる奴らを守らんとなりませんからな。といっても、どこまでやれるかはかわらんのですが……」


 「しかし…」


 「なぁに、ご心配にはおよびません。トゥナム様もご武運を!」


 トゥナムとラルバンは握手を交わす。それから、トゥナムは手渡された道具をしまい、ならず者たちを追って移動するのだった。

いつも読んでくださってありがとうございます。

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