決戦(ルベタ編⑨)
すぐにでも飛び掛かっていきたいところだけど、さすがにあの二人を相手にそれはまずい。
『ほほぉ、意外と冷静ではないか』
リバス様も失礼だな。ボクだって少しは成長してるつもりさ。
「おや? てっきり感情のままに襲い掛かってくるのかと思ったのですが……」
おまえもかい! とツッコミたくなってくる。
「ならば、俺からいかせてもらおう!」
アークデーモンは背中の両翼を羽ばたかせて飛翔し、右手をこちらに向ける。
何が始まるのか警戒する。と、ボクのすぐ近くに熱エネルギーが急速に集まってくるのを感じた。爆発系下位魔術か! アークデーモンの攻撃が爆発系魔術だと気付き、急いでその場を離れる。が、間に合わない。
「ガハッ!!」
直後に発生した爆発によって吹き飛ばされて背中から円柱に激突する。凄まじい衝撃に息ができなくなる。なんて威力なんだ!
「ヌハハハハ……」
アークデーモンが愉快そうに笑う。
「わたくしのことも忘れられては困りますよ」
今度はスヴェインが両手をかざし、5発の雷撃系下位魔術を連続で発射してくる。ボクは《飛行》で空中に舞い上がって回避する。が、アークデーモンの爆発系下位魔術が再び襲ってくる。
前方での熱エネルギーの収束に気づいたボクは《飛行》を使ったまま宙返りする。それから防御魔術して爆発に備え、同時に後退する。
「くっ!」
爆音が轟き、爆炎と爆風がボクを包み込む。防御魔術していてもダメージは大きい。
「まだまだ、こんなものでは終わらんぞ!」
すぐ近くでアークデーモンの声が聞こえた。
「ぐわぁっ」
振り向く暇もなくアークデーモンの回し蹴りがボクの背中を直撃する。防御魔術も間に合わずダイレクトにダメージを受けてしまう。勢いよく前に飛ばされて円柱に衝突した。
「いってぇ……」
円柱のぶつかった弾みで床に落ちてしまった。これは思ったよりも手強いな。
「ホッホッホ。もはやわたくしが手を出す必要もありませんね。勝負は既に決していると言ってよいでしょう」
スヴェインは自分たちの勝利を微塵も疑ってはいない様子だ。
「クククク……この程度の者など俺一人で充分すぎる。おまえはこいつの仲間の始末に向かったほうがいいのではないか?」
くっそぉ。アークデーモンも余裕だな。ボクを完全に格下扱いしてる。
「仮にも魔王相手に油断禁物です。彼は未だに紋章の力を解放しておりません。それに、反乱分子どもの討伐には万が一に備えてスコルゾも同行させておりますから心配には及びません」
スヴェインは勝利を確信しつつもあくまでも慎重な姿勢は崩さない。
領主邸に警備隊が不在なのはそういうわけがあるのか。そして、トゥナムたちの所に向かわせた連中の中によほど信頼できる人物がいるのだろう。だけど、ボクだってトゥナムやラルバンのことを信用している。だから、ボクはボクにできることに全力を傾ける。こいつらはここで倒してみせる。
大賢王の杖を使って氷槍を形成する。同時に魔王の紋章の力を解放する。
「やっと氷剣を出してきたか。そうでなくては手応えがなさすぎて困るというものだ」
「しかも魔王の紋章も解放されているようでございますな。ということは、ルベタ様もいよいよ本気になられたのですね。魔王ルベタの真の実力、見せていただきましょうか!」
二人は余裕の態度を変えない。ボクが本気になったところで自分たちが敗れるわけがないとたかをくくっているのだろう。
『気に食わんやつらよ。まぁ、よいわ。今の貴様では紋章を使いこなすことはできぬであろうが、あのザコどもを倒すくらいはしてみせよ』
ん? リバス様にも見下されてるよね。もっとも、そこは今に始まったことではないんだけど……
ともあれ、ボクが未熟者なのは自覚している。それでもこれは引くことも敗けることもできない戦いなんだ。やってやるさ! ボクは氷槍を静かに構えた。
いつも読んでくださってありがとうございます。




