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魔王様の大冒険  作者: 美山 鳥
第8章 フォラス解放戦
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決戦(ルベタ編⑦)

 「さて、先ずは地下宝物庫を目指さなきゃですね」


 物置部屋兼非常口として使われていた地下室を出たボクはリバス様に話しかける。傍目からは独り言にしか聞こえないだろうけど……


 『うむ。ヴィデルガラムを取り返さねばならぬからな。我にとってはこのような島がどうなるかなどどうでもよい。それよりも魔大剣の奪還のほうが重要である。そもそも貴様が奪われるようなヘマをしなければ……』


 「はいはい。申し訳ございませんでした」


 『ぬ? 心から反省しておるのか?』


 「わかってますって! だから、こうしてヴィデルガラムを探してるんじゃないですか」


 『どうも貴様からは反省が伝わってこぬ』


 ボクだって本当に反省してる。だけど、ヴィデルガラムを奪われてからリバス様には責められてばかりいるのだ。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 「ここ……だよね?」


 領主邸の地下にある一室の前までやってきた。トゥナムに聞いた情報によればここが地下宝物庫のはず。だけど、分厚い鉄扉は何かの大きな力により破壊されている。よって、室内へは自由に出入りできる状態となっていた。トゥナムから事前に鍵を預かっていたのだが必要はなかったらしい。


 「えぇっと、これはボクたちの前に先客があったと考えるべきですよね?」


 『スペアキーを所持しているスヴェインならばわざわざ扉を破壊する必要はない。となれば、何者かが侵入したと考えるのが普通ではあるな。とりあえず中に入るのだ』


 リバス様に促され、地下宝物庫へと入る。入り口は激しく破壊されてはいるが、室内は意外と荒らされてはいないようだ。高価そうなお宝のほとんどが手付かずとなっている。


 「案外整頓されたままの状態ですね」


 『うむ。犯人は何か明確な目的があって侵入したようだな。気になるのはあの壁か…』


 「どの壁です?」


 『やれやれ、わからんのか……。あの刀剣類が掛けられている所だ』


 言われて視線を巡らせる。


 「ああ、あそこですね」


 たしかに、様々な刀剣類が掛けられている壁があった。ボクはその場所へと歩み寄る。


 「あっ!」


 ボクはあることに気づいて声をあげた。大小様々な刀剣が納められているのだが一ヵ所だけ空白がある。最初から何もなかったのかとも思ったけど、刀剣を固定するための器具は取り付けられている。


 「まさか?」


 嫌な予感がする。


 『……ここに侵入した賊は最初からヴィデルガラムが目的だった可能性があるようだな……』


 「で、でも待ってくださいよ! ヴィデルガラムはリバス様にしか鞘から抜くことはできないんですよね!? だったら、そんなの盗んでもしかたないですよ!」


 『……たしかに誰にでも扱えるような物ではない。だが、我以外の者には扱えぬ物でもないのだ。あの大剣を振るうに相応しい者ならば抜くことは可能だ。あの厚さの鉄扉をあそこまで破壊できる力がある者ならばあるいは……』


 うぅ……ボクのせいで何者かの手に魔大剣ヴィデルガラムが渡ってしまった。しかも犯人は相当強い可能性が高い。それが悪人だとしたらとんでもない事になるかも……。不安が押し寄せてくる。だけど、犯人はヴィデルガラムがここにある事を知っていたのはなぜだろうか?


 『いずれにしてもヴィデルガラムがない以上はここに用はない。さっさと行くぞ』


 リバス様の言う通りだ。ここで落ち込んでいても何も始まらない。今はスヴェインを倒すことを考えなきゃ。ヴィデルガラムのことはそれからだ。


 『む? 待て。これは……』


 立ち去ろうとしたボクをリバス様が制止する。


 「どうしたんです? 何か気になる物でもあるんですか?」


 『うむ。あの、台座に乗っている腕輪だ』


 見ると小さな台座の上に、見事な装飾が施された銀色の腕輪が置かれている。


 「あれがどうかしたんですか? あっ、ダメですよ、どさくさに紛れて盗ろうなんて考えちゃ! そんなことはしませんからね!?」


 『バカ者! そのようなことは考えておらぬ』


 そっか。いくらリバス様でもこんな非常時に盗みまでしようなんて思わないよね。これは失礼なことを言ってしまった。


 『だが、少しばかり拝借するとしよう』


 おい、結局考えてるんかい!?


 「やっぱり考えてるじゃないですか!」


 『黙らんか。だれも盗るとは言っておらぬであろう。場合によっては、この戦いの切り札ともなるやもしれぬ。だからこそ持っておけと言っておるのだ』


 この腕輪が切り札だって?


 「これを知ってるんですか?」


 『まぁな。とにかくこの腕輪をはめてさっさと行くぞ!』


 まぁ、そういうことになら少し借りていこう。なんとなく言い含められた気がしつつも銀色の腕輪を左手首にはめ、地下宝物庫を後にするのだった。

いつも読んでくださってありがとうございます。

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