決戦(拠点洞窟防衛戦⑫)
ならず者たちの注意を引くことには成功したが、さすがに多勢に無勢である。トゥナムはジリジリと追い込まれてきていた。
「囲め! 取り囲んで一気に殺るぞ!!」
ならず者の一人が周りの仲間に号令をかける。させるわけにはいかない。トゥナムは包囲網が完成する前に全速力で駆け出す。
「げっ、こっちに来やがったぞ!?」
「慌てるな! たった一人で何ができるってんだ!? 数で勝っている俺らが負けるわけない!」
指揮官がいない敵勢は上手く統制がとれていない。右往左往の騒ぎとなって慌てふためくならず者たちを斬り倒していく。しかし、いつまでもやられたままではいるはずもなく反撃してくる。動き自体はそれほど早くなく、また単調なため回避は容易だ。それゆえに隙をついて反撃できた。だが、数が多すぎる。体力的に余裕はない。
「くっ!」
敵の一人が振るった棍棒を避けきれずレイピアで受ける。トゥナムは強い衝撃に体ごと吹き飛ばされてしまう。
「今だ!」
好機とみて周囲の敵が一斉に襲ってくる。この人数の攻撃を全て回避もしくは防御するのは不可能だ。トゥナムは跳躍し、爆発系下位魔術を使用する。それによって発生した爆発は足元に群がるならず者どもを蹴散らす。
運良く被害を免れた者の多くは警戒して近づこうとはせず遠巻きにことの成り行きを見守っている。が、遠距離からの攻撃を得意とする者は違った。なぜならば、攻撃対象であるトゥナムが空中にいる今こそが攻める絶好のタイミングとなるからである。
火炎系下位魔術、火炎系中位魔術、氷塊系中位魔術、雷撃系下位魔術などが多方向から撃ち込まれる。トゥナムは防御魔術してダメージを軽減する。
続いて飛来する矢をレイピアで打ち払う。
「痛っ…」
打ち仕損じた矢がトゥナムの右頬を掠めた。
「かはっ」
今度は着地した瞬間に背後から射られた矢が背中に突き刺さる。激しい衝撃と痛みで前屈みとなる。致命傷とならなかったが回復系下位魔術を施している暇はない。各々の武器を手にしたならず者たちが一気に押し寄せてくる。
背中の矢を引き抜き、神風系下位魔術で突風を起こし勢いをつけて投げつける。
「ぎゃっ」
矢が眉間に刺さった相手は即死する。
「はぁぁぁぁぁ!」
トゥナムは自らを鼓舞し、敵陣に突撃していく。斬りかかってくる相手の剣をレイピアで受け流して頸動脈を切断する。大量出血によって意識が薄れ、力なく倒れていく敵から剣を奪い取る。レイピアを持つ右手と、奪った剣を持つ左手を広げて身体を一回転する。攻撃を避けられなかった数人が地面に倒れるか戦意を喪失する。
「ぐっ……こいつ、強ぇぞ…」
ならず者たちにとってトゥナムの戦闘能力が予想以上だった。動揺が広がり始め、攻撃の手が緩む。
だが、トゥナムの体力も限界が近い。しかし、それを悟られるわけにはいかない。乱れる呼吸をなるべく整え、左手の片手剣を地面に突き刺してレイピアを構える。不慣れな二刀流の真似事などしてもしかたない。それならば本来の戦闘スタイルであるレイピアと魔術で戦うべきだ。
「今、降服するならば命の保障しよう。戦意なき者は武器を捨てよ!」
トゥナムはできるだけ平静を装い、余裕の態度でならず者たちに投降を促す。
「おい、どうするよ?」
「ここは受け入れたほうがいいんじゃねぇのか?」
「俺、こんな所で死にたくねぇぞ!」
動揺は広がっていき、口々に投降の意思を示し始める。
「いや、待てよ。まだ終わっちゃいねぇ! 一度、スコルゾさんの所まで退却すりゃいいじゃねぇか!!」
「そうか! スコルゾさんならこの状況を覆せるはずだ!!」
スコルゾの名が出ることで一度は戦意を失くした者までもが手放した武器を再び手に取りだした。そこからのならず者たちの行動は迅速だった。一目散に逃走し、森の中へと姿を消してしまう。
スコルゾとは何者なのかは不明だが、ならず者たちの様子からして相当信頼されている人物なのは間違いなかった。
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