チセーヌ村②
改稿済みです。
「遅かったじゃないか。なにやってたんだよ」
外に出てきたボクを待っていたのは膨れっ面のポポルだった。
「ごめん。ランツァ村長と話してたんだ」
「なんの話をしてたのさ?」
「まぁ、いろいろとね」
「ふーん。べつにどうだっていいんだけどな。それより次はどこへ行こうか? 行ってみたい場所とかないのか?」
「特には思いつかないな。ポポルの行きたい所でいいよ」
「……それじゃ、ちょっと付き合ってくれよ」
ポポルは暫く考え、次の目的地を決めたようだ。ボクは黙って頷く。
「よし、決まりだな! 案内するからついこいよ」
こうしてボクたちは村長の家を後にするのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ポポルに連れられてやってきたのは墓地だった。その一角にある墓標の前で両手の掌を胸の前で合わせて祈りを捧げるポポル。とりあえずボクもそれに倣うことにする。
昨日までモンスターだったボクにとっては墓に眠る故人に祈りを捧げる習慣などない。それでも、亡くしてしまった大切な人を忘れたくないという気持ちはなんとなく理解できる。
「オイラの父ちゃんと母ちゃんはモンスターに殺されたって話したよな。だから、オイラどんなモンスターや魔族でも倒せるくらい強くなりたいんだ」
ポポルが呟く。強い決意が感じられる。
「でも、だからといってモンスターが……」
「わかってるさ! モンスターにもいい奴がいるって言いたいんだろ? 父ちゃんも母ちゃんも同じことを言ってた!! でも、モンスターはそんな二人を……」
堪えきれずポポルの瞳からこぼれ落ちた涙が墓前の土を濡らす。かける言葉が見つからなかった。
「オイラにとっては魔族は敵なんだ。絶対にゆるさねぇ!」
「その、二人を殺したモンスターというのは?」
「なんだよ、急に。そんな事を聞いてどうしようっていうんだ?」
ポポルが怪訝そうに視線をぶつけてくる。ボクは目を反らすことなく見つめ返す。ため息をつくポポル。
「ガボって言う名前のオーガだよ」
『オーガか。鬼属のモンスターだな。好戦的な性格の個体が多い種族ではある』
リバス様が解説してくれた。
「傷ついて倒れていたところを父ちゃんと母ちゃんが助けてやったんだ。それからはずっと一緒に暮らしてた。あいつも最初はおとなしくていい奴だったんだ。それなのに!」
ポポルは悔しさをにじませる。
「何かきっかけになるようなことはなかったのか?」
ボクの質問にポポルは頭を振る。
「わからない。けど、たぶん何もなかったと思う。だって、事件が起きた日も家を出る時はいつもと変わらなかったんだぞ」
「それじゃ、ガボは外出先で凶暴化したということなのか……。ポポルやレミィは現場にいたのかい?」
再び頭を横に振って否定をあらわすポポル。
「出掛けたのは父ちゃんと母ちゃんとガボだけだったから、オイラも姉ちゃんもいなかった」
「だとしたら、どうしてガボが犯人だと?」
「帰りが遅いからって捜索に出てくれた人たちが言ってたんだ。ガボが父ちゃんと母ちゃんを殺すのを見たって! それに、ガボはあれから一度も帰ってこないんだぞ!? どう考えたって答えは決まってるじゃないか!!」
感情を抑えきれず乱暴に言い捨てた後、ポポルは自宅へと駆け出した。
『やれやれ、つまらん話だったな。本能に目覚めたオーガが顔見知りの人間二人ばかり殺したというだけではないか』
ポポルを見送るボクにリバス様の独り言が聞こえてきた。
「けど、いきなり本能に目覚めて、それまで一緒に暮らしてた恩人を襲うことなんてあるんですかね?」
『さぁな。あっても不思議ではあるまい。何らかのきっかけはあった可能性はあるが、所詮は人間と魔族、相容れぬ存在ということだ。貴様も人間とはあまり関わらんほうがよかろう』
リバス様の忠告が胸に刺さる。本当に人間と魔族は手を取り合って生きることはできないのだろうか。
「……よし、決めた! この一件を調べてみよう!!」
『何を言い出すかと思えば、やはりくだらんことを考えておったか。やめておけ、そんな事をしたところで貴様にとって良いことなぞ何もないぞ』
「そうだとしてもやります。どうせ他にはする事はないんだしね」
『やれやれ、ガムイラスの分際で強情だな。ならば、勝手にするがよいわ』
呆れたようなリバス様の声を聞きながら、ボクは墓標に一礼して立ち去った。
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