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魔王様の大冒険  作者: 美山 鳥
第8章 フォラス解放戦
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決戦(拠点洞窟防衛戦⑨)

 「うわわわわ!」


 ベレグはバズラットが次々に放つ矢をかわし続けている。しかし、それも限界がある。


 「おい、逃げてばかりいねぇで反撃しろ!」


 ザグムと激しい攻防を繰り広げながらラルバンはイラついたように怒鳴る。ベレグは祈るような気持ちでトゥナムの様子を窺う。だが、その思いは容赦なく打ち砕かれてしまう。チセーヌの村人を守りながらの戦いでベレグたちを気にするゆとりはないようだ。


 「いつまでも他力本願でいるんじゃねぇ! トゥナム様も手一杯なんだ。ちったぁ気合い入れろ!!」


 相変わらずザグムとの激しい斬り合いを続けながらラルバンは怒声を飛ばす。


 「私がいるのも忘れちゃダ・メ・よん!」


 カナヒが杖を振りかざす。瞬間、氷塊系中位魔術アイスニードルがラルバンに向けて飛び出した。


 「ぬぅ!」


 全身に氷の針を受けて苦悶の表情を浮かべて片膝をつく。ザグムはそこを狙って片手剣を振り下ろす。


 「ちくしょう!」


 ベレグは駆け出した。自分ひとりでは三人を相手に勝機など皆無だと判断したためである。


 「ほぉ、ヘタレ勇者が何をする?」


 ザグムは間一髪のところで槍の柄で片手剣を受け止めたベレグを見下して不敵に笑む。


 「これでちょこまかと逃げ回ることもできまい!」


 弓矢を構えて勝利を確信するバズラット。この状況では避けようがない。引き絞った弓から矢が放たれる。万事休す! 両目の瞼を固く閉じるベレグ。


 「させるかよ!!」


 ラルバンが叫ぶ。バズラットが放った矢を盾で防ぐ。それから休む間もなく振り抜いた斧がザグムの片手剣を弾いた。


 「ぶぐぁ!」


 剣を弾かれてがら空きとなったザグムの顔面にラルバンの回し蹴りがヒットした。派手に蹴り飛ばされたザグムは空中で身体をひねって受け身をとり、着地するがかなり効いている。


 「ザグムに何してくれちゃってるのよぉ!」


 怒りに燃えたカナヒの火炎系下位魔術フレアボールがラルバン目掛けて飛んでくる。それを盾で受け止める。とんでもなく強い。現役を引退して随分経つとはいえ警備隊の隊長をしていた実力は伊達ではなかった。ベレグは、今更ながらラルバンの戦闘力に驚愕させられる。


 「すまねぇな。お陰で助かった。まさかおまえに借りを作っちまうとはな」


 ラルバンはクククと喉を鳴らす。


 「借りを作りついでに一つ頼まれちゃくれねぇか?」


 「俺に何をさせるつもりさ?」


 ベレグは嫌な予感を覚えつつも先を促す。


 「なぁに、難しいことじゃない。俺がカナヒとバズラットを倒す間、ザグムの野郎を抑えててくれるだけでいい」


 (いやいや、難しいことだろう! 俺一人であんな手練れの相手が務まらないのは分かりきってる)


 ベレグは大きく目を見開いた。


 「無理だ! 俺に死ねって言ってるようなもんじゃないか!!」


 「うるせぇ!! やる前からごちゃごちゃ言ってねぇで根性みせてみろ!」


 ラルバンは反論するベレグを一喝する。それからカナヒとバズラットを睨めて猛然と立ち向かっていく。


 ベレグは、黙したままその背中を見送っていた。しかし、いよいよ腹をくくらなければならないことを悟る。どのみち、これだけの裏切り行為をしてしまってはスヴェイン側にら戻れない。そんなことをすれば確実に死刑にされてしまうだけである。もはや選択の余地はない。


 「くっそぉ!……やればいいんだろ、やれば!!」


 ベレグは内に眠るなけなしの勇気を振り絞ってザグムに勝負を挑む決意を固めた。自分を評価してくれたランツァ村長の思いが背中を押してくれたような気がしているベレグであった。

いつも読んでくださってありがとうございます。

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