決戦(拠点洞窟防衛戦⑦)
ベレグはその場に泣き崩れて何度も地面に殴る。その様子を見たザグムの動きは早い。
「もういい。そこで泣いてるがいい! ここからは俺が指揮を執る!! ピラックの民たちよ、このまま一気に逆賊を殲滅するのだ!」
ベレグを無能な指揮官と見限ったザグムは周囲のピラックの住人たちに命じる。
「なにをしている!? スヴェイン様はこの島を、貴様らのことを考えて下さってるのだぞ! その思いに応えようという気はないのか!?」
ザグムは、動きだそうとしないピラックの住人に対して業を煮やして叫ぶ。だが、だれも動く気配がな
い。
ピラックの住人を除けばならず者のような傭兵とスヴェインが呼び寄せたという謎の一団のみである。
「くずどもが! いいだろう、あのような者どもなど我らで蹴散らしてくれるわ!」
言うが早いかザグムがトゥナムに飛びかかる。ザグムが抜き放った片手剣をかわし、逆にトゥナムのレイピアの切っ先がザグムの喉元を貫こうとする。全身を回転させて避けたザグムは片手剣をトゥナムの首を狙って一閃する。姿勢を低くし、頭上を片手剣が通過するのを見届けてトゥナムは後方へと飛び退く。
ここでお互いに間合いをあけて相手の出方を窺う。
「ふん、ただの坊っちゃんかと思ったが存外やるものだな」
ザグムは殺意のこもった眼差しを一瞬たりともはずさない。わずかでも隙を見せれば見逃しはしないといったかまえだ。周りではならず者たちとチセーヌの村人たちが戦い始め、騒然となっている。トゥナムとしてはすぐにでも加勢したいところだ。しかし、目の前の男がそれをさせてはくれなかった。
「ただの傭兵とは違うようだな。何者だ?」
「さぁて、貴様らに教えてやる義理はない。だが、俺個人の名ならば教えてやろう。俺の名はザグム!」
トゥナムには聞き覚えのない名であった。
「魔王ルベタという貴様らにとっての最大戦力が不在の今こそチャンスだ。皆殺しにしてくれるわ!」
わたしは、片手剣を構えたザグムが前進するのと同時に神風系中位魔術を繰り出した。
「ふん!」
ザグムの片手剣が神風系中位魔術を両断してしまう。この程度では足止めくらいにしかならないようだ。
トゥナムはすぐさま2発目を放ち、後退する。一方、ザグムは片手剣で2発目の神風系中位魔術を受け止めている。
2発目の真空の刃を凌ぎきったザグムに今度は火炎系上位魔術を射つ。迫り来る火の矢を跳躍してかわし、ザグムは空中で片手剣を頭上に高々と掲げる。双眸が鋭い光を放つ。だが、勢いよく振り下ろされた刀身がトゥナムに届くことはなかった。ラルバンの盾がザグムの片手剣を受け止めたのだ。ザグムはこの状況に再び間合いをとる。
「悪いが、この方を殺らせるわけにはいかんのでな。助太刀させてもらう」
「あらん、それなら私もザグム様の助太刀をさせてもらうわん」
トゥナムとザグムの戦いにラルバンが加わったのを見て、妖艶な女性がザグムの横に立つ。
「はじめまして。私はカナヒっていうの。ザグム様の恋人ってところかしらねん」
「俺も混ぜてもらおう」
カナヒが簡単な自己紹介を終えたところで、さらにもう一人の黒ずくめの男が姿を見せる。
「んもぅ、バズラットは相変わらず気が利かないわねん。こんな奴らなら私とザグム様だけで充分よ。あなたはそこらのザコでも相手していてちょうだいねん」
「そう言うな。敵の力量を見誤れば己の死に直結する。あの二人を相手にするならばバズラットにも参戦してもらったほうが確実だ」
ザグムの出した結論に不満げな表情を見せるカナヒ。
「3対2になるが手加減はせんぞ。これもおまえたちの実力を認めたうえでの判断だ」
言いながら片手剣を構えるザグムの両脇では、カナヒが杖を、バズラットが弓矢をそれぞれ構える。
「ハーッハッハッハ!」
緊迫した空気をものともしない高笑いに全員の視線が集中した。そこには槍を手にしたベレグの姿があった。
「安心したまえ。俺こそはランツァ村長も認めた大天才、白薔薇の勇者ベレグなり! 故郷の危機に馳せ参じたからには悪党などたちどころに成敗してくれよう!!」
言いつつ、トゥナムの隣まで悠然と歩み寄る。
「さぁ、スヴェインどもに正義の鉄槌を下してやりましょう!」
無駄に爽やかな笑顔を見せると黒装備の3人のほうを振り返るベレグ。それから槍の穂先をザグムたちに向けた。
「ありがたい! では、この場はベレグとラルバンに任せるとしよう。レミィとポポルはすぐに洞窟の奥へ向かいなさい」
四人に指示をだし、トゥナムは今なお動揺しているピラックの民たちの元へと駆け出す。ザグムたちは行く手を阻もうと動きを見せるがラルバンとベレグを警戒して手出しはしてこなかった。
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