決戦(拠点洞窟防衛戦⑥)
ベレグが口を開く前にレミィが話しかけてきた。
「スヴェインはランツァ村長も殺したのよ。あなたはなんとも思わないの!?」
(それがどうしたっていうんだ! あのじいさんは俺のことをバカにして見下してたんだ。事ある毎に説教ばかりされてうんざりだった。そんなやつが殺されたからって俺が悲しむわけがないだろ!)
そんなベレグの心を察したレミィが続ける。
「あなたはランツァ村長のことを良く思っていないかもしれない。でも、それは村長の本心を知らないからよ。本当はベレグが立派な勇者になることを期待してたし、あなたが旅に出てからもずっと心配してたんだから!」
「そんなこと信じられるものか! 何か証拠でもあるのか?」
「それは……」
口ごもるレミィ。
「証拠が欲しいのならあるぜ」
そう言ったのはラルバンだった。
「正直に言っちまうとよ、俺はおまえがランツァ村長が期待するほどの勇者になれるとは思っちゃいねぇ。それに、この状況だと聴く気にゃならねぇだろうと思ってたんだが、レミィが言った事実を証明するためだ。本来ならおまえをうまく捕縛できれば渡すつもりだったが……」
そこまで言ってラルバンはベレグに拳大の石を放り投げてきた。
「これは……」
受け取った石を確認する。それはメモリーストーンという魔力を流し込むことで録音でき、同じようにすれば再生できるアイテムだ。
「お待ちを。今はそのようなことをしている時ではありますまい。今すぐにでも攻撃の合図を!」
傍らでザグムが急かしてくる。総大将であるベレグが号令を出さなければならない。
「いや。先にこいつを確認する」
ベレグが下した決断にザグムは舌打ちをする。それにかまうことなくメモリーストーンに魔力を流し込む。そこから懐かしい村長の声が発せられた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ベレグよ。おまえはわしを恨んでおるやもしれんな。それもしかたなかろう。少しばかり厳しすぎたのかもしれん。じゃがな、おまえには魔術に対して才能があると確信しておった。じゃから、おまえが光属性の魔術を扱えると知った時もさほどの驚きはなかったんじゃ。そして、おまえが勇者としての旅立ちを決意した時は誇らしかった。じゃが、そうなれば常に命を懸けた戦いに身を投じねばならなくなる。わしはおまえが命を落とすことがないよう、これまで以上に厳しい修行を強制した。しかし、限度を越していたのじゃな。おまえは修行を投げ出して島から旅立ってしまった。その後、わしはどれほど後悔したか。おまえにもしもの事があれば……。全てはおまえのためにとしたのじゃが、わしは愚かにもおまえを追い詰めることしかできなかった。今さら詫びたところでどうしようもないが、すまんかった……。おまえが島に帰ったと聞いた時は嬉しかったもんじゃ。わしは生憎と入院中で身動きができんかったが退院すればすぐにおまえに会い、これまでのことを詫びようと思うとった。もっとも、その日を待たずに警備隊によって領主邸へと連行されてしまったのじゃがな。現在、わしは地下牢に監禁されておるのじゃが、ラルバン殿の好意でこのメッセージを残すことができとる。若いころとある勇者のパーティの一員として世界を旅したわしがはっきり断言しよう。ベレグ、おまえは必ず強くなれる! 願わくば、その力を正しきことに使ってほしい。最後になるが、これだけは忘れてはならんぞ。おまえも充分に承知しておるじゃろうが、勇者とはいろいろと辛い思いもするもんじゃ。おまえが普通の暮らしを望むのならば好きにするがよい。わしはおまえが幸せならそれでよいのじゃからな……」
「なんなんだよ……散々厳しくしておいて今さら謝るのかよ! そんなに俺のことを考えてたんなら言葉にしてくんなきゃわかんねぇだろうが! くそっ、涙が止まらない! これじゃ今まで言われてきた分を言い返すこともできないじゃないか……。自分だけ言いたいこと言いやがって。俺には何も言わせないなんて卑怯だ! なんで死んじまったんだよ!!」
ベレグは溢れる涙を止めることができなかった。
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