決戦(拠点洞窟防衛戦④)
トゥナムの一言でベレグに注目が集まった。
「ほぉ。何かご存知なのですかな、勇者殿?」
黒ずくめの男ザグムをはじめ一同がベレグの答えを待っている。
「勇者ベレグ、君はルベタがアークデーモンに襲われた現場にいたはずだ!」
トゥナムは真実を語らせようと問い詰める。ベレグはトゥナムが生きていたことに激しく動揺する。
「俺は…」
「あなたの証言は非常に大きな意味を持ちます。それをよくお考えください」
ザグムが脅しをかける。つまり長生きしたければスヴェインには逆らうなと言いたいのだ。
ベレグは意を決して顔を上げる。が、トゥナムの隣に立つ少女の姿に言葉を失ってしまう。レミィだ。トゥナムも驚いている。前線に現れたのはレミィの独断による行動であった。
「お願い、ベレグ。あなたの知っていることを正直に話して!」
ベレグを真っ直ぐに見つめるレミィ。しかし、ベレグは後ろめたさから顔を反らしてしまう。このまま偽証してしまえばレミィからの信用を完全に失ってしまうに違いなかった。
「妙な気は起こすなよ。万が一にもスヴェイン様の意に背くようなことがあれば……」
ベレグの心の迷いを察したザグムが囁く。その視線は鋭く、殺気が感じられた。さらに畳み掛けるように続けてくる。
「いいか。スヴェイン様に逆らわなければフォラス領主としての地位を得られるのだぞ。それだけではない。ここで反乱者を何人か拘束すれば、後日、その者たちの解放を条件にあの娘と結ばれることもできる。おまえは何も失うことなく、地位・名誉・金・権力・女、全てを手にできるのだ。迷うことなどないはずだ!」
(何も失わない、か。はたして本当にそうだろうか。なにか大事なものを失くしてしまいそうだ)
ベレグは迷いに迷う。
「しかし、それではレミィの心はどうなるんだ?」
「そんなものは後からなんとでもなる。暫く贅沢な暮らしを満喫させてやれば満足するだろう」
(違う。こいつは何もわかっていない。レミィはそんなことで喜ぶような性格じゃないんだ。とはいえ、一時の感情に流されて殺されるなんてまっぴらだ! そもそも勇者である俺が魔王を無実を証明してやる義理なんかない。それどころか魔王は人間の宿敵のような存在なわけで、そんなやつを自分を危険にさらしてまで助けてやるはずがないだろう)
ベレグは心を決める。
「魔王ルベタはアークデーモンを従えている。俺がこの目で見たんだから間違いない!」
ベレグほ高らかに偽りの証言した。
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