表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王様の大冒険  作者: 美山 鳥
第2章 フォラスの独裁者
10/330

チセーヌ村①

改稿済みです。

 アクシデントはあったものの、二人とも無事に戻ってくることができた。荷車を片付けて中へと入る。


 「ルベタさん、ありがとうございます!」


 レミィさんがボクの右手を握ってくる。


 「ほえ?」


 訳がわからずに間の抜けた声を発する。


 「ポポルが危ないところを助けてくださったんですよね」


 なるほど。先に家に入ったポポルから聞いたんだな。


 「なんだ、その事ですか。あの程度の連中なら楽勝ですよ」


 『ふん、調子にのりおって』


 リバス様の呆れたような声が聞こえてくる。


 「もし、ルベタさんが一緒じゃなかったら……。本当にお怪我とかありませんか?」


 「大丈夫ですよ。かすり傷一つありません」


 笑顔を見せるボクにレミィさんは安心した様子だ。


 「そんな事より、ボクのことは呼び捨てでかまいませんよ」


 「え、でも…」


 「本人がそう言ってるんだぜ。それでいいじゃんか」


 躊躇ためらうレミィさんをポポルが後押しする。


 「…うん、わかった。それじゃ、お互いに普通に話しましょう」


 レミィが微笑む。


 「ところで、昼飯にはまだ時間があるんだろ?」


 「うん、もう少しかかるわね。それがどうかしたの?」


 レミィがポポルに質問を返す。


 「だったらさ、ルベタに村を案内してやろうと思うんだ」


 「そうね。帰ってくる頃には食事の用意も出来てると思うから、行ってらっしゃいな」


 レミィが賛成する。


 そうだな。ここにこのまま居てもしかたないし、村をみて回るのも悪くない案だ。なにしろ、村に入ることはおろか近づくこともなかったからな。


 「それじゃ、お願いしようか」


 「おぅ、任せとけ! そんじゃ、早速行こうぜ」


 ポポルは親指を立ててみせる。それから玄関の扉を開けてボクを誘う。そんなボク達をレミィは笑顔で手を振って見送ってくれた。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 「どうして、急に村を案内してくれる気になったんだ?」


 「別に……。魔族なんかに借りを作りっぱなしにしたくないだけさ」


 ポポルが素っ気なく答える。残念だけど、信用してくれたわけじゃないようだ。


 「さて、と。まずは村長の家からだな!」


 「村長?」


 「ああ、口うるさいけどオイラ達を気にかけてくれる爺ちゃんさ。物識りだし、みんなから信頼されてんだぜ」


 ポポルの表情からその人となりがうかがえる。


 「そうなのか。まぁ、村に滞在してるわけだし、挨拶くらいはしとかなきゃな」


 『なぜ、我が人間ごときに挨拶に出向かねばならぬ!』


 リバス様は納得できないようだ。早速、文句を言ってくる。今、反論してもややこしくなるだけだろうからよそう。ボクは黙ってポポルの後についていくことにした。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 村長の家はレミィやポポルの家からさほど離れていなかった。


 「ほぉ、ポポルが自分から訪ねてくるとは珍しいこともあるもんじゃな。いつもなら小言を言われるのが嫌で寄り付かんのにのぅ?」


 光をよく反射する頭を撫でながら、老人は口元に笑みを浮かべる。


 「たまにはね。それに、今日はこいつを紹介しようって思ってさ」


 言われて老人はボクをじっと見つめる。


 「この島では見かけん顔じゃが、旅の魔族といったところかのぅ?」


 「そ、そんな感じ……かな」


 ボクは曖昧に返事して視線を逸らしてしまう。何か見透かされそうな気になる。


 「まぁ、よかろう。わしはこの村の村長をしておるランツァという者じゃ。おまえさんの名は?」


 「ボクはルベタ」


 「ルベタ殿か。覚えておこう。それで、このような辺境の島に来たのには何か目的がおありなのかな?」


 「それがないんだってさ。この島へは流されてきたらしいぜ!」


 ポポルがボクに代わって答える。


 「ほお、それは大変じゃったな。ワシも若い頃は様々な場所を旅したもんじゃ。そう、あれはドラゴンの巣があると噂された火山に行った時じゃった……」


 「あっ、そうだ。次の場所へ案内してやるよ。さっ、早く行こうぜ!」


 ポポルは長話になりそうな気配を察したようだ。早口で言うと、いそいそと玄関の扉を開けて出ていってしまった。


 「なんじゃ、ワシの武勇伝を聞かせてやろうというのに……」


 ポポルの後ろ姿を見送りながらランツァ村長が残念そうに呟く。


 「それじゃ、ボクも失礼するよ」


 ポポルの後に続こうとしたがランツァ村長が行く手をさえぎる。


 「まぁ、待ちなされ。おまえさん、魔王じゃな?」


 うわっ、ばれてる。それなら隠してもしょうがないだろう。


 「よくわかったね」


 「それで、魔王がこんな田舎の村に来て何を企んどる?」


 「企む? いやだなぁ、ボクは誰かに危害を加えるつもりはないよ。本当のことを言っても信じてもらえるかどうかわからないけど」


 「ほぉ、ならばその真実とやらを聞かせてもらっても?」


 ランツァは相変わらずボクに視線を合わせたままだ。下手にごまかしたところで騙すことは無理だろう。ボクはありのままを話すことにした。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 「ほっほっほっ。たしかに魔王リバスならば《吸収》を扱えるじゃろうな。しかし、魔王ともあろう者がガムイラスを吸収しようとして失敗、その結果、身体を乗っ取られようとはのぅ!」


 ランツァ村長は愉快そうに大笑いする。


 『この爺め、この場で八つ裂きにしてくれようか!?』


 リバス様の怒りが伝わってくる。


 「村長はリバス様を知ってるのか?」


 「面識があるわけではないが、魔王リバスといえばスキルマスターとして有名じゃからな。知らぬ者のほうが少なかろうて。それにしても、おまえさんが邪悪な者ではないようじゃから安心したわい」


 「信じてくれるのか?」


 「うむ。嘘をついとる感じがせんかったからの。引き留めて申し訳なかったのぉ。さぁ、ポポルが待っておるぞ」


 ボクはランツァ村長に軽く会釈してポポルの待つ表へと向かった。

いつも読んで下さってありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ