チセーヌ村①
改稿済みです。
アクシデントはあったものの、二人とも無事に戻ってくることができた。荷車を片付けて中へと入る。
「ルベタさん、ありがとうございます!」
レミィさんがボクの右手を握ってくる。
「ほえ?」
訳がわからずに間の抜けた声を発する。
「ポポルが危ないところを助けてくださったんですよね」
なるほど。先に家に入ったポポルから聞いたんだな。
「なんだ、その事ですか。あの程度の連中なら楽勝ですよ」
『ふん、調子にのりおって』
リバス様の呆れたような声が聞こえてくる。
「もし、ルベタさんが一緒じゃなかったら……。本当にお怪我とかありませんか?」
「大丈夫ですよ。かすり傷一つありません」
笑顔を見せるボクにレミィさんは安心した様子だ。
「そんな事より、ボクのことは呼び捨てでかまいませんよ」
「え、でも…」
「本人がそう言ってるんだぜ。それでいいじゃんか」
躊躇うレミィさんをポポルが後押しする。
「…うん、わかった。それじゃ、お互いに普通に話しましょう」
レミィが微笑む。
「ところで、昼飯にはまだ時間があるんだろ?」
「うん、もう少しかかるわね。それがどうかしたの?」
レミィがポポルに質問を返す。
「だったらさ、ルベタに村を案内してやろうと思うんだ」
「そうね。帰ってくる頃には食事の用意も出来てると思うから、行ってらっしゃいな」
レミィが賛成する。
そうだな。ここにこのまま居てもしかたないし、村をみて回るのも悪くない案だ。なにしろ、村に入ることはおろか近づくこともなかったからな。
「それじゃ、お願いしようか」
「おぅ、任せとけ! そんじゃ、早速行こうぜ」
ポポルは親指を立ててみせる。それから玄関の扉を開けてボクを誘う。そんなボク達をレミィは笑顔で手を振って見送ってくれた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「どうして、急に村を案内してくれる気になったんだ?」
「別に……。魔族なんかに借りを作りっぱなしにしたくないだけさ」
ポポルが素っ気なく答える。残念だけど、信用してくれたわけじゃないようだ。
「さて、と。まずは村長の家からだな!」
「村長?」
「ああ、口うるさいけどオイラ達を気にかけてくれる爺ちゃんさ。物識りだし、みんなから信頼されてんだぜ」
ポポルの表情からその人となりがうかがえる。
「そうなのか。まぁ、村に滞在してるわけだし、挨拶くらいはしとかなきゃな」
『なぜ、我が人間ごときに挨拶に出向かねばならぬ!』
リバス様は納得できないようだ。早速、文句を言ってくる。今、反論してもややこしくなるだけだろうからよそう。ボクは黙ってポポルの後についていくことにした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
村長の家はレミィやポポルの家からさほど離れていなかった。
「ほぉ、ポポルが自分から訪ねてくるとは珍しいこともあるもんじゃな。いつもなら小言を言われるのが嫌で寄り付かんのにのぅ?」
光をよく反射する頭を撫でながら、老人は口元に笑みを浮かべる。
「たまにはね。それに、今日はこいつを紹介しようって思ってさ」
言われて老人はボクをじっと見つめる。
「この島では見かけん顔じゃが、旅の魔族といったところかのぅ?」
「そ、そんな感じ……かな」
ボクは曖昧に返事して視線を逸らしてしまう。何か見透かされそうな気になる。
「まぁ、よかろう。わしはこの村の村長をしておるランツァという者じゃ。おまえさんの名は?」
「ボクはルベタ」
「ルベタ殿か。覚えておこう。それで、このような辺境の島に来たのには何か目的がおありなのかな?」
「それがないんだってさ。この島へは流されてきたらしいぜ!」
ポポルがボクに代わって答える。
「ほお、それは大変じゃったな。ワシも若い頃は様々な場所を旅したもんじゃ。そう、あれはドラゴンの巣があると噂された火山に行った時じゃった……」
「あっ、そうだ。次の場所へ案内してやるよ。さっ、早く行こうぜ!」
ポポルは長話になりそうな気配を察したようだ。早口で言うと、いそいそと玄関の扉を開けて出ていってしまった。
「なんじゃ、ワシの武勇伝を聞かせてやろうというのに……」
ポポルの後ろ姿を見送りながらランツァ村長が残念そうに呟く。
「それじゃ、ボクも失礼するよ」
ポポルの後に続こうとしたがランツァ村長が行く手を遮る。
「まぁ、待ちなされ。おまえさん、魔王じゃな?」
うわっ、ばれてる。それなら隠してもしょうがないだろう。
「よくわかったね」
「それで、魔王がこんな田舎の村に来て何を企んどる?」
「企む? いやだなぁ、ボクは誰かに危害を加えるつもりはないよ。本当のことを言っても信じてもらえるかどうかわからないけど」
「ほぉ、ならばその真実とやらを聞かせてもらっても?」
ランツァは相変わらずボクに視線を合わせたままだ。下手にごまかしたところで騙すことは無理だろう。ボクはありのままを話すことにした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ほっほっほっ。たしかに魔王リバスならば《吸収》を扱えるじゃろうな。しかし、魔王ともあろう者がガムイラスを吸収しようとして失敗、その結果、身体を乗っ取られようとはのぅ!」
ランツァ村長は愉快そうに大笑いする。
『この爺め、この場で八つ裂きにしてくれようか!?』
リバス様の怒りが伝わってくる。
「村長はリバス様を知ってるのか?」
「面識があるわけではないが、魔王リバスといえばスキルマスターとして有名じゃからな。知らぬ者のほうが少なかろうて。それにしても、おまえさんが邪悪な者ではないようじゃから安心したわい」
「信じてくれるのか?」
「うむ。嘘をついとる感じがせんかったからの。引き留めて申し訳なかったのぉ。さぁ、ポポルが待っておるぞ」
ボクはランツァ村長に軽く会釈してポポルの待つ表へと向かった。
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