第百四十五話(最終話):導かれた者
完結です。
「ねえ貴方、お店屋さんがしたいわ」
美しいハイエルフの少女は、シーツにくるまれたカークの腕の中で囁いた。
「お客さんが笑顔になるお店をしたいの」
そう続けて彼女は、小さな額を彼の逞しい胸に押し付ける。
「うむ……」
濃い髭を蓄えたカークは、優しく彼女の背中を撫でながら考えた。
「お花屋さんはどうだろうか?」
彼はノーム・シスターのメリィが居た、薬草の村を思い出す。
「あら、素敵ね」
少女の笑顔が華やいだ。
「お花屋さんなら、ここに居る皆も一緒にできるわ」
ハイエルフが暮らすエルフの隠里は、豊富な植物に満ちている。
「お店の場所は、カーク・ランドにしよう」
良質な温泉と穏やかな気候の観光地であり、効能が高い湯治場として全世界に居る八百万の神々や精霊達が訪れる場所だ。
「良いアイデアですね。色んなアレンジのお花を、皆さんのお土産にしてもらいましょう」
少女の瞳は希望に満ちている。
導かれた者が辿り着いたのは、華美ではないが裕福で、穏やかな笑顔が絶えない幸せな家庭だった。
◇◇◇
『太っちゃいマシタ』
『戻ってこれたわー』
『早く赤ちゃんの顔が見たいでござる』
優しい仲間に囲まれて、カークは幸せを噛み締めた。
終り
ありがとうございました。
いつも最初に最終話を下書きしてから、投稿を始めています。中々辿り着けないのですが、今回は無事に完結できました。




