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極意その七

2週も開けてしまいました…(反省)

若干のスランプから離脱し、また書き始めようと思ってます(*^^*)

これからも応援よろしくお願いしますm(_ _)m


「でしたら、自然の美がお好みなのですね!」

「そうですね、または_」


10分前の状況を知る者が居たら、この状況の変わりように目が点になっていることだろう。先程とは打って代わり、マロンを中心に貴族令嬢たちが微笑み合いながら会話をしていた。マロンは心中でレオナルドに申し訳ないと土下座し謝罪していた。端的に彼女たちに伝えたのはレオナルドは最近母親の影響もあり、花など草木に対する興味が強いことやとくにどこに興味があるかをこと細かく説明した。

改めて、レオナルドの人気っぷりに驚かされた。マロン自体が彼を恋愛対象というよりか商売相手と見ているからかもしれないが。無論、彼が端正な顔立ちであることは認める。顔立ちから感じられるような冷徹さはなく、寧ろ優しい気のあると思われる。貴族に身を置くマロンも何となくレオナルドの立場も見えているので、敢えてそのように見せるように本人やその周りが印象操作し、貴族間で言う冷徹というイメージが完成しているだろうということは察せた。

しかし…令嬢たちの話を聞きながら、勝手ながらにレオナルドに同情した。彼はどこなく女性を苦手にしている節があるということは当初の対応から感じた。そして、その要因が彼の妻という座を狙う貴族令嬢たちの血眼の姿の一旦を見てしまったからということも小耳に挟んだ。確かに、この熱量で来られたら思わず逃げ腰にもなるだろうな。さて、とレオナルドのことから目の前の令嬢たちに意識を戻す。


「レオナルドさまは今の流行り香水の香りは素敵だけど、はやりその人達自身の香りが好ましいとみたいなおっしゃてました」


素敵じゃなくて、もはやあれは苦手だな。とマロンは無音で付け加えておく。しかし、そこまでストレートに言ったところで誰も得しない。オブラートに、だけど内容は的確に伝えることが大切なのだ。特に美に関することは女性が気を使い、一番お金を掛けているところでもあるので掛ける言葉選びは慎重に越したことはない。踏まなくてもいい地雷なんて踏みたくない。

踏まなくても良かった地雷を踏んで自滅していった貴族をマロンも横目で見たり、聞いたりしていた。


「そ、そうなのですの?」

「不思議そうな顔をしてますわね。そうですね…サリアさまは髪にいつも香油を使ってますでしょう?」

「えぇ、毎日欠かさずやってますわ」

「それです。皆さま、香水や化粧というものだけではなく、日々の肌のケアや髪先まで拘ったものを使ってます。つまり日々のケアをしているからこその香りというものがあるのです。そういう積み重ねが感じられるからこそ好ましいと仰てましたわ」

「なるほどですわ!さすがはレオナルド様ですわ!」

「着眼点が流石だわ」


レオナルドがどれだけ素敵なのかで盛り上がった令嬢たちにマロンは細く微笑んだ。ここまで話を持っていくのはかなり腰が折れたがなんとか持ってくることは成功した。あと、もう少しだ。


「_ですけど、従来の石鹸や香油では、香水のように遠くからでも香りを察知できません。」

「そうなのよね…でも、香水だと…人工ですもね」

「そこでこちらなんかどうでしょうか?」


マロンが取り出したのはまるで薔薇のような形をしていた。しかし、薔薇ではなく何かしらの塊であることはわかった。また軽くリボンなどで上品に可愛らしくラッピングされており、思わずマロンにいた周辺の令嬢たちが「可愛い」とボヤく程のものであった。


「こちらは何ですの?」

「入浴剤です」

「入浴剤ってあの?入浴剤?」

「はい、そうです」


入浴剤は粉末が主流であった。粉末が入った箱から侍女たちが風呂などに事前に入れておくものであった。だからこそ、入浴剤の固まりしかも可愛らしくラッピングなどされている理由や発想が出てこなかったのだ。マロンはそこにビジネスの勝機を生み出した。入浴剤や化粧品などやはり身につけるものや日々に周りにあるものが洗礼されたオシャレなものだったら気分があがる。私だってそうだし。


「こちらは薔薇の花弁を特殊な機械で圧縮させて絞り出したエッセンスを使ってます。」

「香水と何が違いますの?」

「香水は皆さまが言ったように人工的に"薔薇風"の香りを調合師たちが作っております。もちろん、薔薇のエッセンスを入れていると思いますが、その他にも幾つか加えた感じになっていると思われます。」

「そういうものなのね」

「えぇ、香水はその分華やかさや言わいる残り香をより素敵に彩りますが…こちらの入浴剤は、薔薇の香りを最大限に活かし、皆さまの身体全体を包み込むように仕上げおります」

「まぁ、素敵!」

「今はまだ試作段階ですし、何かのご縁です。こちらを皆さまで使って、私にご意見頂けないでしょうか」

「え?いいのかしら?」

「もちろん、気に入って頂けたら嬉しいのですけど」

「、、まぁ使ってあげないこともないわ」

「ありがとうございます」


マロンは持っていた入浴剤から、いつ間にやらいた侍女のババンから残りの人数分の入浴剤を貰って令嬢たちに渡した。令嬢たちは目を輝せ、ある者は鼻を近づけて「良い香り」とさえ微笑んでいる。誰も彼もが当初の目的を忘れていた。


「では、また」

「えぇ、またね。ちゃんと感想言うわ」


令嬢たちの後ろ姿を見たながら、最後までマロンは笑顔を絶やすことなく手を振り続けた。一時はどうなるかと思ったが新規顧客GETね。一時凌ぎの割には、大いなる実りになったのではないかと達成感をマロンは感じていた。口元を隠すために使っていた扇をパタリと閉じる。そして先程の貴族的な笑みと打って変わり、親しみの笑みを浮かべて背後にいるババンに声を掛けた。貴族令嬢モードは一旦休憩である。


「ババン、ありがとう。助かったわ」

「いいえ、お嬢様こそお疲れ様です」


令嬢たちに連れていかれる前にババンに馬車まで入浴剤を持ってくるように言っておいたのだ。しかし…レオナルドさまを主に話題を取り上げてしまったものだったから、幾ら令嬢たちから逃れるためとは言え、後日伝えて置くのが筋だろう。頭の中でレオナルドと会う予定の日程などを組みながら最適日と文書をフォーマット描いたところで、本日の最大目標であり、目的でもある男爵にシフトチェンジした。


「お兄様のところに行かなくてはね」

「きっと、カイロさまも、探しておられますわ」

「一戦終えたのにまた一戦かを迎えた気分だわ」

「全くその通りだと思いますが、行きますよ」


正直、カイロお坊ちゃまだけだとバーベル男爵に太刀打ちできないと思われます。それよりも幾ばくかあちらが有利なるような商談に纏まってしまうかと。と客観過ぎるババンの意見にマロンは思わず笑みを零した。さて、ここから本腰だ。そして、再度引き締めるような表情をして舞踏会に戻った。


「ま、マロン!」

「お待たせしましたわ、お兄様」


案の定、マロンを探していたカイロはマロンを視野に捉えると心底ホッとした表情を見せた。そんな長い時間離れただろうかと舞踏会の端っこにあった時計を見ると、30分くらい時間が空いていた。思ってたより、時間を食っていたようだった。今度はあのようなことがあったら、もう少し話の流れの留意点を手短に纏められるようにしなきゃダメだなと何処まで行っても逞しいことをマロンが心中で思っていると、カイロがマロンに腕を差し出した。マロンは再度令嬢の微笑みを貼り付けて、その腕に己の腕を組んだ。

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