番外編 気付き
ちょー×10、忙し過ぎて全然小説書けませでした。
気づいたら、5ヶ月間空いていたので驚きです。
また、これから頑張って書いていきます!
お付き合い下さい!
「あれは何だ?」
「あれはハマヤマの木ですね。夏になると、実をつけます。果物ごとを容器として…長い筒状のものを差仕込んで、こうスウッーと吸い込むと飲めるんです。」
こうスウッーと言いながら、吸い込むよう動作をするマロンを見ながら、「そうか」とレオナルドは頷いた。そんな様子を見たマロンは少し穂を膨らませた。
「何、レオナルドさまは笑ってるんですか。本当なんですよ。美味しいんですからね。」
「…そ、そうかすまない。」
隣に座っている従者のペトから少し驚いたような雰囲気を感じ取った。それもそのはず、マロンがレオナルドを笑ったと言っていたがレオナルドの表情はそこまで変化していなかった。よく見れば、口角が0.2㎝くらい上がったようにも見えるくらいだ。これでもレオナルドは夜会や社交界がある場合は通常より表情を出す。一応、社交というものを理解しているからだ。その分の反動がどうか、元々動きにくい表情がプライベートでは表情がほぼ動かないと言っても過言ではない。幸にして、隣にいるペトや家族は長い間近くにいたから、そのほぼ動かない表情でも的確に読み取ってくる。…そして…元々の洞察力や観察力のお陰か、目の前にいるマロンもまたレオナルドの表状を的確に読むとれる人物である。
あの茶会から早1週間、用意が出来たということでレオナルドはマロンの領地に馬車で向かっていた。
マロンの領地に行きたいと言ったときのマロンの顔は驚愕そのものだった。当分固まっていたし、冷静な印象を持っていた彼女の珍しい姿を見て、レオナルドは可愛いと思った。そこでふと気づいたのだ。
俺は今…何を心の中で呟いたんだとレオナルド自身も動揺したのだった。自覚はないと言うか、そもそもそこまでの興味がないがどうやら自分は他の人々は一線を外する容姿をしているようだ。また、自分の持っている筆頭侯爵家の嫡男という地位も相まってより魅力的に貴族令嬢に見えるみたいだ。そのためか、物心ついたときには男女問わず思惑を持った貴族たちに囲まれてきた。とくに女性にはギラギラと猛獣のように近づかれて一種の恐怖心さえ抱いた。腐らずに頑張れたのは一重に愛情深く育ててくれた家族のお陰である。そのため、女性に関して苦手意識を強く持っていた。アカデミーのときには同級生たちからは「もったいない」と言われたり、同級生でかつ昔馴染みの第一王子であるカイヤには「俺だったらツケで遊ぶわ」とかなり笑われたものである。
そういう意味では、マロンという存在は最初体レオナルドにとっては特異的な存在であった。最初の出会いが出会いだったからということもあるかもしれないが。家族以外の女性で唯一自分が素で自然体にいられる女性だ。彼女から貴族令嬢の独特の獲物の目をしていなかったからだと思う。また、レオナルドの動かない表情をいち早く察し、会話なども繋げてくれるためレオナルド自身もそんな気を張る必要性がないのも大きい。
…それ以上のことはなかったと思うのだが。
最近、マロンを前にすると胸騒ぎがする。足元がふわっとするのだ。違和感はあるものの、それは別に不快という訳ではない。むしろテンションが上がる感じがする。
その気持ちを答えを知りたくて、相談も兼ねて母や弟のアルに伝えたら、各々の反応を示した。母は目を輝かせて「マロンちゃんだったら大賛成!」と謎の発言をし、アルはまるで珍獣を見るような顔を覗かせ「レオ兄さんからそんな話を聞けるなんて」をなんか失礼な言動を残していった。反応から自分のこの感情が何なのかがわかったんだと思い、この気持ちは何だというと、母もアルもびっくりした顔をしてお互いにお互いの顔を見合っていた。「朴念仁のレオ兄さんにはハードルが高ったかも」「え…でもあれしかないわよね…」「そうだね」と2人で勝手に会話を進めて、結局「自分で考えて答えを出した方がいい」と言われてしまった。納得はいってない。何が自分で考えろだ。自分で考えてもわからないから相談したと言うのに…はぁと思わず溜息を吐く。
「…レオナルドさま?」
「あぁ、すまない。」
心配そうな声で現実に引き戻され、レオナルドは顔を上げた。マロンの顔を見て、自分がついこの前のことを思い出して、ため息を出してしまっていたことに漸く気がついた。やらかしたと内心焦る。隣からはペトの「貴方は何をしてるんですか」という雰囲気さえ感じている。
「いいえ…話、つまらなかったでしょうか?」
「いや!そうじゃない…その…考えごとしていてな…」
「考えごとですか?」
首を軽く傾げる彼女を見て思う。彼女からこのわからない持て余した感情の答えを知っているのではないかと。
「実はな…私の友人のことなんだが…」
友人ということでこの話をした。すると、マロンは「まぁ、そうですね。私が薮を突っつくのも…」と少し困ったような顔をしていた。だが、マロンもこの自分の気持ちにわかったのだとレオナルドは感じ、「すごく悩んでいるようだから教えてあげたい」と必死に懇願した。とにかくこの気持ちの正体が知りたいと思ったのだ。
「そこまで言うのしたら、わかりました!…そうですね。その友人にはその気持ちを思う相手にあちらのお花を12本挙げて下さいと言ってください」
「…あれは…」
マロンの差した先には真っ赤に広がっていた。
「そうです。薔薇です。」
彼女は「諸説ありますが、薔薇は本数によって花言葉が変わるんです」といらずっこのような顔をした。
「…12本の意味は?」
「教えてもいいのですが…友人には教えないあげないと約束していただけますか」
「何でだ?」
「そうですね…その気持ちを自覚するというのは、ある人にとっては気持ちを整理するのに時間が掛かりますから。レオナルド様の話を聞く限りですが、その方はそのような気持ちを持つのは初めてな方そうでし…明らかに動揺しそうですから、多分後でこっそり自分で調べて気持ちを自覚をした方がよろしいかと」
「…動揺するものなのか?」
「人様々ですから…なんとも言えませんが…」
マロンの悩む声に思わず「いい。あとは自分で…」と言いそうになり、口を閉ざす。これでは友人の話として押し通してきたのに自分だとバレる可能性がある。
「…そうか。わかった。言わないと約束する」
「よかったです。薔薇の12本の花言葉『私と付き合ってください』です。ふふ、秘密ですよ」
そこまで言われて、流石のレオナルドも己のこの感情の名前に気がつくことができた。そうか、俺は。
_彼女に恋をしている。
それに気が付き、レオナルドは当分頭の中からショートしていた。いつもならその機微でも感じ取ることができるマロンはその後、薔薇の花言葉について熱が入り、かなり詳しく話していたたため、レオナルドの顔が全然見えなくなっていった。レオナルドの方もレオナルドの方で全く話が入って来なかった。