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ブライトの決意

「えっと、ちょっと待ってくれ……。私の耳がおかしくなったのかもしれない。……もう一度だけ聞くが、ここのギルドマスターは?」

「はい、私ですよ?」



 何度聞いてもどうやらこの少女がギルドマスターで間違いないようだった。

 ブライトは思わず頭を抑えてしまう。


(人不足だとは思っていたが、冒険者たちの長をこんな少女にさせるほど、人手不足であったか……。これは本当に申し訳ないことをしてしまった)


 ブライトはシャロに小さく頭を下げていた。



「な、何ですか?」

「いや、何でもない。それよりも何か困ったことはないか? 私で良ければ力を貸すぞ?」

「本当に良いのですか? では、冒険者登録を――」

「い、いや、そんなことをしなくても何でもするぞ?」

「でも、困っているのが、冒険者の依頼が残ってる……ということになりますので。流石に冒険者じゃない人に頼むわけにも……」

「しゃ、シャロちゃん、困ってるなら何で俺たちに相談してくれないんだ。いくらでもやってやるぞ!」



 冒険者の一人が声を上げる。

 すると、その声に同調する声が他の冒険者たちからも上がっていた。



「そうだそうだ、俺たちがやってやるから任せておけ!」

「シャロちゃん、あんな冒険者が信じられないなら私が依頼をしてくるわよ」



 いつのまにか混ざっていたマリナスが、冷たい視線を冒険者に送りながら言うと、周りからブーイングが起こる。



「まだ見習い冒険者のあんたに言われたくないぞ!」

「悔しかったら、私に勝てるほどの力をつけると良いわよ」

「ぐっ、俺たちだって力をつけたんだ! いい加減、今日こそは勝たせてもらうぞ!」

「それは楽しみね。私に負けたらまたメニューを全て頼んでもらうわよ」

「望むところだ!」



 マリナスと冒険者は向かい合うとどちらかがニヤリと微笑んだ瞬間に、お互いが殴りかかっていた。



「はぁ……、またマリーのやつは騒いでいるのか……」



 呆れ顔でその様子を見ていたハーグ。

 しかし、止める様子もなく、そのままシャロの隣へとやってくる。



「シャロ様、そろそろ調理の準備が必要かと……」

「そうですね。では、少し失礼しますね……」

「ちょ、ちょっと待ってくれ。私に何か手伝えることは――」

「それなら、アルフ様のお仕事を手伝ってくれませんか? 最近、少し悩まれていましたので私も気になって――」

「……どうして、君がアルフ様のことを?」

「……私はアルフ様に助けられて、それでこのギルドマスターの仕事をもらったのですよ」

「ほぅ……、そんなことが……」



 シャロのその言葉を聞いて、ブライトは改めて感心していた。



(まさかアルフ様がこんな少女を助けていたなんて……。やはり、私はつく相手を間違えていたようだな)



 ブライトは一度頷くとシャロに答えていた。



「そうですね。シャロさんの言うとおり、アルフ様の協力をしようと思います」

「ありがとうございます。それじゃあ今日は腕によりをかけて料理を作りますね」



 シャロが嬉しそうな笑みを浮かべるとそのまま厨房へと入っていった。


 それと同時に冒険者たちの勝負に決着がついたようだった。



「ぐっ……、まだ届かないか……」

「なかなか強くなったわね。でも、まだまだ私には届かないわね」



 勝負は当然ながらマリナスが勝利をしていた。

 それはある意味、ブライトも予想通りだった。



(まぁ、マリナスに勝てるはずがないな。大賢者だもんな……。この国にマリナスに勝てる人物なんているはずがないし……)



 ただ、争っていた割にはどちらにも怪我はなく、笑い合っている様子にブライトは困惑していた。



「まぁ、こうなったか……」



 ため息交じりにハーグは酒を持っていく。



「ほらよ、戦い終わったらこれを飲むんだろう?」

「あぁ、助かるよ……」



 嬉しそうに酒を受け取ろうとするマリナス。

 ただ、ハーグの顔を見て舌打ちをした。



「ちっ、お前か……。本当ならシャロちゃんから受け取りたかったのに」

「仕方ないだろう。この中で料理ができるのはシャロちゃんだけなんだからな。それともいらないのか?」

「……いる」



 ハーグの手から酒を奪い取ると、それを一気にあおっていた。



◇■◇■◇■



 翌日、どういうわけかブライトが俺のもとにやってきて、何か手伝えることはないか聞いてきた。

 いつかはこういう流れに持って行こうとしていたが、まさかこんなにすぐに聞いてくるとは思わなかった。

 ただ、それもシャロと会ったからと聞いて乾いた笑みを浮かべてしまう。


 なるほど……、シャロが関わっていたのなら、すぐに動いてきたのも頷ける。



「手伝い……ではないのだが、少し問題のある情報を手に入れてな……。その真偽を確認していただけないか?」

「問題のある情報……?」

「あぁ、この国の最東。貴族、ラグゥが支配する領地があるのは知ってるよな?」

「それはもちろんです」

「どうやら、そのラグゥが魔族軍と組んで、邪魔な貴族たちの妨害工作をしている……という噂を聞いてな。さすがに辺境の地まで確認にいけなくて困っていたんだ。よかったらそれを確認してきてくれないか?」

「なるほど……。魔族と組んでいたら大変ですもんね。かしこまりました。早急に調べさせていただきます」


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