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おひとよしシーフ(Lv99)による過去改変記  作者: はむ
第七章 中央教会の聖女コロン
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079-神に抗う者

 ――さあ、可愛い我が子供達よ。新たな一歩を踏み出しなさい。


「……っ!?」


 突然の天啓にコロンは驚きながらもすぐに意味を察し、天を仰いで祈り始めた。


「初めて貴女(あなた)の声を……。感謝致します……!!」


 コロンは天に向けて感謝の言葉を述べると、胸元のロザリオを握りながらシャロンの目をじっと見て口を開いた。


「お姉ちゃん、私、頑張ってみるっ!」


「ええ、期待してるわ」


 そう言って互いに笑い合うと、コロンは皆を集めてグレーターデーモンへ向けて詠唱を始めた。

 エレナとプリシア姫を含む総勢二十三名が魔力無効化(ディスペル)を唱え、その先頭でただひとりコロンだけが異なるワードを紡ぐ……。

 森の中を美しい光が包み込む神秘的な姿は、まるで神話のワンシーンのようだった。


『美しい……』


 ディスペルを唱えることの出来ない騎士達や大司祭ツヴァイは少し悔しそうではあるものの、聖女のもとへ祈りの力が集いグレーターデーモンの防御結界を打ち消してゆく様に、ただただ感嘆のため息を吐くばかりだった。


「……そろそろね」


 シャロンはそう言うと、再び本を開いてその一文を指でなぞりながら読み上げた。


「もしも結界を破壊できたなら、あとは耐久値を上回る以上の攻撃魔法を撃ち込めばヤツを倒せる……もとい、倒したと記録にはあるわ」


「で、その攻撃魔法ってのは?」


 俺がそう問いかけると、シャロンは苦笑しながら手をひらひらと振って答える。


「あのデカブツを召喚した張本人……要するに、当時世界最強とされていた伝説の魔術師(ウィザード)フランドルが編み出した最強火属性魔法、ゴッドフレアね」


「えええーーっ!?」


 ゴッドフレアって、魔法学園宝物庫に封印されている「俺がかつて居た時の勇者パーティーのシャロンの最強魔法」じゃないか!


「もしかして、シャロンはそれを使えたりする……?」


「んなわけ無いでしょ。噂によるとウチの学校に封印されてるらしいけど、そんなの単なる噂だしね」


 いや、その噂は事実ですけどっ……!!

 だが、シャロンがゴッドフレアを使えないとなると、色々と話が違ってくる。

 というのも、俺達の中で最強の攻撃魔法エターナル・ブリザード・ノヴァを使えるエレナはディスペルを唱えるだけで手一杯だし、俺がイフリートを撃ったとしても、グレーターデーモンを倒せるかと言われると微妙だ。


「それで一体どうやってヤツを倒すんだ!?」


 俺の問いに対しシャロンは鼻で笑い返すと、肩下げカバンに本をしまいながら答えた。


「百年前のロートルが作った"最強"なんざクソ食らえよ」


 直後、シャロンは地面に(ひざまつ)いて両手を地面に付けながら詠唱を始めた。

 ……しかし、その内容が明らかにおかしい。

 通常、俺達が使うスキルの多くは神や精霊に祈りを捧げる内容になっているのだが、彼女の口から出てくる言葉の節々に「闇」だの「地獄」だのといった物騒な言葉が含まれている。


「お、おいっ! それって……!?」


「どいつもこいつも、神様お願いだの神様感謝しますだのって……正直ウザいのよね」


 そんなことを言いながらシャロンが妖艶に笑った直後、周囲に紫色の魔力が渦を吹き上げ始めた。


「たまには"別のヤツ"に祈ってもイイでしょっ!!」


 すると、その「別のヤツ」とやらの強烈な負の力によって、こちら側の魔力防壁(シールド)が消失した。

 ……ってオイッ!!


「な、ななな、何が起こったっ!?」


「ヒエーッ、おたすけぇーーっ!!」


 まさかのノーガード状態に悲鳴が上がったものの、どうにかグレーターデーモンがこちらに攻撃を仕掛けるよりも先に、コロンが詠唱を完了させてスキルを発動させた!



「イニシャライジングッ!」



 コロンの手から放たれた光の球はグレーターデーモンを包み込み、周囲を眩く照らしてゆく……。

 そして、虹色に輝く魔力の結晶が宙に融けて消えゆく様を見て、エレナが目を見開いてシャロンの方へと向いた。


『シャロンさんっ、グレーターデーモンの結界耐久値ゼロ……行けます!』


「そんじゃ、いっちょやってやりますかっ!」


 そう言って両手を振り上げたシャロンの頭上には、自身の身長ほどもある巨大な黒い炎が揺らめいていた。

 詠唱が終わった後も、先の地面に墜落した瘴気を吸収しながら(うごめ)くそれは紛れもなく……ゴッドフレアとは「真逆の存在」であった。


「地獄の業火よ……全てを焼き尽くせ……!」


 紅い瞳をギラリと輝かせながら、完全に結界を消失させたグレーターデーモンへ向けて渾身の一撃を放つ!!



「ダークネスフレアーーッ!!!」



 結界を失ったグレーターデーモンへと巨大な闇が押し寄せ、漆黒の炎が渦を巻いてゆく。

 凄まじい熱気と瘴気が森の中を蹂躙(じゅうりん)し、肌をジリジリと焼こうと……いや、蝕もうとしてくる。

 そして、黒い炎が消えた跡に残されていたのは、光となって宙へと融けてゆくグレーターデーモンの姿であった……。


「ふん、ざっとこんなもんね」


 シャロンは黒いマントをひるがえすと――


「おねえちゃああああああああーーーーんっ!!!」


 どてーんっ!

 いきなりコロンに抱きつかれ、シャロンはその場にひっくり返った。


「おねえちゃんおねえちゃんっ! おねえちゃんすごいっ! ほんとすごいすごいすごいっ!! すごぉぉーー……!!」


「あー、もうっ! うっとうしいわあああーーっ!!!」


 興奮状態の妹を引き剥がし立ち上がったシャロンは、ぺしぺしと尻についた土を払い――


『シャロンさん凄いですすごいですスゴイですーーっ!!!』


 ぎゅうううううーーーっ!!

 立て続けにエレナに抱きしめられて、呆れ顔で脱力してしまった。

 しばらく皆は呆然としていたものの、かつて魔法都市エメラシティを壊滅させたグレーターデーモンを、その半分にも満たない人数で撃退したという事実に、少しずつ喜びに頬を緩める。


「お疲れ、おねーちゃん」


「ふんっ」


 俺が労いの言葉をかけると、エレナに抱き締められたまま、シャロンは照れて頬を朱く染めてそっぽを向いてしまい、それを見た皆に安堵の笑顔が浮かんだ。




 ――だが、これで終わりではないッ!!




 エレナはハッとした顔でシャロンを抱き締めていた腕をほどくと、広場の中央へと目を向けて青ざめながら呟いた。


『巨大な魔力反応……』


 エレナの目線の先を見ると、そこでは黒い石板へ新たな文字が浮かび上がっていた。



【Re-Generating ... Greater demon -EXTENDED-】



『グレーターデーモン亜種……カウントダウン開始。あと一分で出現します……』


 エレナの口から出たグレーターデーモン亜種という聞き慣れない名前に、危機感知スキルが発動せずとも背中に冷たい汗が流れる。

 さっきよりも凶悪な化け物が一分後に現れる……?

 その非道過ぎる事実に先程の歓喜から一転、皆は絶望に打ちひしがれている。


「そんな……そんなことって……!」


 再びコロンの目に悲しみの涙が浮かび、シャロンは黙って抱きしめている。

 あれだけ神だの奇跡だの言っておいて、その結末が……これ?

 多くの信者達が希望を胸に抱きながら、未来へ向かうために祈ったにも関わらず、この仕打ち……?

 皆で力を合わせて強敵を倒したら、更なる試練を与える……?


「あの……クソったれがァっ!!!」


 思わず勢いで神を"排泄物呼ばわり"してしまったが、その程度の呼び方で済ませるのすら許しがたい。

 今、俺の心の中には「あの時」と同じくらいの怒りが渦巻いている……。



 ――神様とやらは、てめえの勝手な理由でエレナを犠牲にしようとした。



 ――今回だって、てめえが余計なモンをこの世界に持ち込みやがったのが全ての原因だろう。



 ――いつまでも人間様が弱者だと思うなよ、このクソ野郎ッ!



「そっちが先にケンカ売ったんだから文句は言わせねえからなッ!!」


 久々に膨大な魔力が渦巻く感覚に戸惑いを覚えながらも、俺は「皆が望む未来」を掴むべく右手を構える。

 狙うはただ一つ……!


『カナタさんっ!!』


 エレナが胸元の宝石を握りながら祈る姿に勇気を貰いながら、俺は今再び自らの右手へ全身全霊で魔力を込める!


「さあ、ここまで来たんだ。これで上手く行かないなんて、そんなつまらねえコト言わねえよなッ!!」



「――来いッ!!!」



【ユニークスキル 全てを奪う者】

アンロックに成功しました。スキル使用可能です。



 俺は天啓が目に入るや否や、その一文を確認することなく、黒い石板へ向けて一心不乱に走り……全力で拳を叩き込むッ!!!


【Login incorrect !!】

【Login incorrect !!】

【Login incorrect !!】

【Login incorrect !!】

【Login incorrect !!】

【Login incorrect !!】


 石板に何やら意味の分からない羅列が猛スピードで流れてゆくが、そんなの知ったことではない!


「俺の狙いはただ一つ……! てめえの"召喚する力"だッ!!!」


 俺の言葉に呼応するかのように、石板の表面に浮かび上がる文字がまるで砂漠の砂嵐のように激しく揺れ始めた。


『二次召喚まであと七秒です!!』


 エレナが何かを叫んだ気がしたけれど、俺は魔力が枯渇するまで目の前のヤツに向かってゆくのみ!


『二秒!!』


 視界が激しく揺らぎ、意識が遠のいてゆく……。

 だが――


『零!!』


 今回も「俺の勝ち」だ……!







【Login successful】


【Generating ... terminated】

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