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おひとよしシーフ(Lv99)による過去改変記  作者: はむ
第十章 灼熱の大地と永遠雪のセツナ
142/208

142-いざ南西の廃鉱へ

【聖王歴128年 黒の月 3日】


<ジェダイト領・灼熱の大地 ドワーフの街の宿屋> 


 ヤズマト国を出てから五日後、俺達はジェダイト帝国領最南端に位置する火山地帯……通称「灼熱の大地」にあるドワーフの街へとやって来た。

 俺がかつて勇者カネミツ達と共に来た時よりも五日早く到着したのだけど、その理由はただ一つ。



『セツナが襲ってくる前に倒しちゃえ大作戦ーーっ!!』


作戦名(ぷろじぇくと)ばーい、サツキちゃん!」



 宿の客室でエレナとサツキがテンション高めに叫ぶ様子に、俺とユピテルは唖然としながら眺めるばかり。

 ふたりの言うとおり、未然に魔王四天王 永遠雪(エターナルホワイト)のセツナを撃退するのが目的であるのだが……。


「というかエレナって水の精霊だよな? なんでこんなに暑いのに元気なんだ???」


 サツキは寒いトコが苦手なだけで暑さに強いのは知っていたけれど、エレナがハイテンションな理由が分からない。

 むしろ、エレナは氷系の魔法ばっか撃ってるイメージがあるし、寒い気候を好んでいるのだとばかり思っていたのだけど。


『別に私、暑いのそんなに嫌いじゃないですよ~』


「そーなの?」


『それに、すごい暑いのに何故か水のマナがやたらいっぱいあるんですよ! さっきから、なんだか元気モリモリですっ!!』


 モリモリって……。

 すると、やる気満々なエレナの姿を見て何かに気づいたのか、フルルが遠くの建物を指差した。


『アレのおかげ……かも』


「アレ?」


 フルルの視線の先には、もくもくと湯気の上がる建物……どうやら温泉施設のようだ。

 前回来たときはそんなの全然気づかなかったんだけど、それくらい俺の心に余裕が無かったのかもしれない。


「なるほど温泉かぁ。ま、一段落ついたら行っても良いかな」


『わーい♪』


 エレナが幼子みたいにぴょんぴょんと喜んでいて、思わず苦笑してしまう。

 だが、サツキが温泉を眺めながら何やらニヤニヤしたかと思いきや、突然くるりと振り返った。


「ムフムフムフフっ、温泉と聞いたら心ときめくネ! 野郎どもチャンスやで!!」


『なんなのその口調は。それに湯浴(ゆあ)みだからって、何がチャンスなのさ』


 俺もユピテルと全く同意見である。

 だが、サツキは自分の後ろ髪を持ち上げると、ユピテルに見せつけるようにジリジリと近づいて行く。


「温泉があるということは、つまり風呂上がりの女子のうなじ(・・・)をいくらでも堪能出来るのだよ」


『!!』


「うなじフェチの君にはたまらんだろう?」


『その話題に触れるなアアアアアアアアアアッ!!! あああああ………あああ』


 いきなり叫んだかと思ったら、そのままヘナヘナと頭を抱えながら突っ伏してしまった。

 よくわからないけれど、またサツキのせいでユピテルの悩みの種が増えてしまったらしく、毎度のことホント申し訳ない……。


「つーか、今回はマジでドワーフ達の生活がかかってんだからさ。さっきも言ったけど、温泉がどうこう言うのは全部終わってからな」


「ぶーぶー」


 不満げにブーイングしてくるサツキはさておき、俺がかつて見た世界ではセツナの放った呪いによって、灼熱の大地はフロスト王国のような極寒地獄に変貌した。

 寒くてツライ……なんて簡単な話ではなく、地熱を奪われたドワーフはそれと同時に主要産業である製鉄技術も奪われてしまったんだ。

 ジェダイト帝国へ高品質の武器や防具を献上し、それと引き換えに世界第二位の強大な国家に護られるギブアンドテイクの関係だったのが吹き飛んでしまったのだから、当然ながら都はあっという間に荒廃。

 俺が常闇の大地に数ヶ月間滞在している間にも、サイハテの街にはドワーフ族が続々と増えていたのだけど、その理由は『生活に困ったドワーフ達が新たな拠点を探すため』だったのだから、相当困窮(こんきゅう)していたのは想像に難くない。


「ひとまず今日は、皆で手分けして情報収集しよう。それが終わったら一晩休んで、明日にでもセツナの企みを止めに行くぞ」


「おー!」



◇◇



【聖王歴128年 黒の月 4日】


<ドワーフの街 南西の廃鉱>


 というわけで、昨日の聞き込み結果は予想通り「クロ」。

 ここ最近、街の周辺に水属性モンスターがうろついているという情報も得られたので、セツナが黒幕である可能性が極めて高い。

 そして、いま俺達の居る炭鉱こそがセツナが潜伏していた現場……つまり、これからヤツと対峙(たいじ)するかもしれないんだ。


「つーか、サツキとユピテルは留守番でよくね?」


「絶対ヤだね!」


「さいですか」


 勇者パーティと共に廃鉱にやって来たときは、セツナと遭遇するや否や危機感知スキルが「即死リスク大」を常時警告しっぱなしというトンデモナイ状況だった。

 俺達の戦力が当時の勇者パーティより上回っているとはいえ、ドワーフの街周辺全域を凍らせるほどの強大な力を持つ化け物を相手に、子供ふたりを連れて行くのはさすがにどうかと思うけれど、サツキがそんなコト聞く耳を持つわけがないんだなこれが。


『だけど、実のところそのセツナって奴がとっくに魔法陣を完成させてて、勇者達を待ち伏せしてから発動させた~って可能性は無いのかな? その流れで、オイラ達の姿を見てドカンってやっちゃうんじゃないの?』


 ユピテルの質問に対し、俺は洞窟の奥へ意識を集中させながら頷く。


「ああ、ユピテルの言う通りだよ。歌姫マリネラが病気で倒れたり、ジェダイト帝国でレパードがケンカ売ってきたケースもあったしな。どうにも回避できないトラブルもあるみたいだし、今回もそのパターンって可能性はあると思う」


 その場合、サツキとユピテルの二人には急いで避難してもらわなければならない。

 これまで戦った『炎のメギドール』や『闇のディザイア』のように、セツナもあっさりと引き下がってくれればありがたいのだが……。


「さて、もうすぐ魔法陣のあった場所だ」


 俺の言葉に皆の表情に緊張の色が浮かぶ。

 念のためランプの明かりを消し、身を潜めながら狭い通路を抜ける。

 そして、俺達の目に飛び込んできたのは――



『せっかいの平和を、まっもるため~♪ フンフーン~』



 のんきに鼻歌を歌いながら、せっせと床に魔法陣を描いている女――永遠雪(エターナルホワイト)のセツナの姿があった……。

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