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仕事が終わってからと一緒に高杉と一緒に焼き鳥やさんへ向かった。てっきり普通の居酒屋かと思っていたら小綺麗な所で、二人なのに半個室に案内された。

やっぱり体調が悪いのか、店に入った瞬間胸焼けしたような感じになった。


なんか、気持ち悪い…。あんまりご飯食べれそうにないな…。


高杉に告白されてから何の返事もせずになーなーにしてきたけど、さすがに失礼だろうな。


「高杉、あのさ…、この間のことなんだけど、やっぱり高杉のことそういう風に見れないの…。ごめん」

「…わかった。今はそれでいいよ。でも、俺諦めないから」


高杉は不敵な笑みを浮かべていた。

多分高杉は今まで振られたことなんてなかったんだろうな…。きっと高杉は女なんてよりどりみどりなんだろうから私なんかじゃなくて、他の人を選べばいいのに。


「焼き鳥の盛り合わせお持ちいたしました」

「ありがとうございます」


焼き鳥を受け取り、その匂いが近づくと途端に気持ち悪さが増した。


「うっ、ちょっと無理、気持ち悪くて食べれそうにない…」

「麻美ちゃん、鶏肉苦手だったっけ?…もしかして、生理来てない?」

「え…っ、き、きたわよ」


そう、あの日から2週間後ぐらいにちゃんときた。正直少し不安だったけど、ちゃんと生理がきてほっとした。だから妊娠しているはずはないのだ。ないのだけど、この症状はまるで…。


「ちがう、してるはずない。してない」

「本当に…?」

「だって、だって、ちゃんときたから、だから、大丈夫。大丈夫よ!」


本当は妊娠しているのではないか、そう考えると頭の中が真っ白になった。もし妊娠しているとすれば高杉の子供だろう。確かにあの時避妊していなかったのを覚えている。でも、就職してから残業続きだったり、ストレスの多い仕事を受け持たされると生理がとぶこともあり生理不順になっていたから多分大丈夫だろうと甘く考えていた。そして、ちゃんと生理もきたのだ。それなのに…っ。


「ここだと匂いがきついし、もう出ようか」


私はふらふらしながら高杉に引っ張られるように連れ出された。

そして、高杉は薬局で妊娠検査薬を買って私を自分の家まで連れてきた。


「これで検査してきて?」

「え…」


呆然としながら妊娠検査薬をみた。


「結果がどうであれ、早く知ることに越したことはないでしょ?」


それは、妊娠していなければそれはそれでよし、妊娠していても早ければ中絶できるからってこと…?

でも、確かに早く白黒つけたい。もやもやした気持ちをずっと抱えていたくない。

妊娠検査薬の使い方を見てトイレにいった。


「…」


妊娠検査薬にくっきりと線がでて、結果は陽性だった。

嘘…、ほんとに妊娠してるの…?

ぺたんこの腹を無意識に触った。


「どうだった?」

「…妊娠してた」


高杉の顔を見れなかった。

高杉はどう思うんだろう…。いくら私のことことを好きといってくてれも付き合ってもいないし。それに、たった一回だけの関係で妊娠したなんてまず信じられるんだろうか…?


「俺の子だよね。うれしい…」


え…。

高杉に優しく抱きしめられ、おそるおそる高杉の顔を見ると凄く嬉しそうな顔をしていた。


「明日、病院いこうね。一緒に行くから」

「え…」

「あ、その前に…、順番が違うけど、結婚してほしい」


結婚…?

妊娠したから…?

すべてがいきなりすぎて頭がついていかない。


「や、いきなり結婚なんて…」

「麻美ちゃんは子供を一人で育てるつもりなの?それとも…」

「…ごめん、今は先のこと考えられない」

「そっか…。でも、とりあえず明日は一緒に病院いこうね?」

「わ、わかった」






翌日、私と高杉は休みをとって産婦人科を受診した。高杉の知り合いがいるとかで、高杉が予約をとってくれた。

高杉は診察に一緒に行こうとしていたけど、一人で行きたいと高杉には待合室で待っててもらった。


「おめでとうございます。妊娠6週ですね。ここが心臓です。今のところ順調ですね」


エコーを見ながら先生から説明を受けた。

本当に妊娠してるんだ…。まだ凄く小さいけど、心臓もちゃんと動いてる。


「あの、先生。本当に6週なんですか?それに、この間、生理もきたんですけど」

「ああ、勘違いしてる人も多いんだけど、受精日は妊娠2週になるんだ。あと、生理予定日前後に着床出血することもあって、それを生理と勘違いする人もいるんだよ。多分、その時の出血少なくなかった?」


先生の話を聞いて妊娠の週数が間違えないこと、前回の出血は確かに少なくて生理ではなかったんだと理解できた。


「次の検診から母子手帳が必要になるから市役所に行って母子手帳もらってきてね。次の検診は2週間後かな。えっと、19日の午前中でも大丈夫?」

「あ、はい。あ、あの…、もし、もし中絶とかするんだったら…、えと」

「ああ、中絶はできたら12週までに。それ以降もできるけど、中期中絶になるから母体への負担は大きいからね。早いに越したことはないから、決まったらすぐに教えてね」

「はい…」


診察室を出て待合室にいくと高杉が立ち上がって近づいてきた。


「どうだった?」

「妊娠6週だって…」

「本当に…?こんなとこいったらあれだけど、嬉しい…!」

「…」


人前で抱きしめられて高杉から離れようとするけど、なかなか離れてくれなかった。

きっと、はたから見たら妊娠がわかって人目もはばからず喜んでいる夫婦に見えるんだろうな…。

病院からの帰り道、高杉はわざわざ私を家まで送ってくれた。大丈夫だと言ったけど、高杉は頑として譲らなかった。


「麻美ちゃん、改めて俺と結婚して下さい。子供を言い訳にして結婚を迫るなんて卑怯だってわかってる。でも、麻美ちゃんが本当に好きなんだ」

「…」


正直、どうすればいいのか自分でもわからない。高杉はいい人だし、嫌いじゃない。でも、そういう風には見れない…。

お腹の子を何もなかったようにするのがお互いにとって一番いい気がする。…でも、お腹の子の心臓が動いているのを見て、なんとも言えない気持ちになった。お腹の中で一生懸命生きている子を見て、産みたいと思った。さよならなんてしたくないと。


「麻美ちゃんが俺のことをそういう風に見れないのはわかってる。でも、結婚してこれからちょっとずつでも好きになってもらえたら嬉しい…」

「うん…。そうだね。…よろしくとねがいします」

「やった!」


高杉に抱きしめられながら、これでよかったんだと思うことにした。こんなに愛してくれる人と結婚できるなんて幸せ者だと。頭の中に平井係長の顔が浮かんだけど、それをかき消した。

私は高杉が不適な笑みを浮かべているのに気が付かなかった。

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