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今年で社会人4年目になった。任される仕事も多くなってきて、しんどい時もあるけれどそれなりにやりがいもありそこまで苦ではない。もうすぐ就業という時に同期の高杉が私の席にやってきた。


「麻美ちゃん、今日一緒にご飯でもどう?」

「…仕事まだ終わりそうにないんで。それに、高杉さんだったらわざわざ私なんか誘わなくても他に一緒に食べたいっていう人いるんじゃないですか?」

「うわ、同期に対して冷たくない?てか、なんで敬語なの?仕事残ってるんだったら手伝うからさ」


高杉は同じ課の同期で何かと私に絡んでくる。でも私にとったら迷惑でしかない。

高杉は整った顔立ちで背も高く、仕事もよくできる。私が一週間かかってできる仕事を一日で仕上げるといっても過言ではない。そのため、上司の間でも一目置かれている存在だ。そんな高杉を回りの女達がほっておくはずもなく、いろいろな女の子にアプローチされているらしいが、みんな撃沈してるらしい。でも、高杉がただの同じ課の同期であるというだけで私に絡んでくるのだから一部の女子人達から私は敵視されている。

高杉に悪気がないのが困ったものだ。自分がどのように思われているのか少しは自覚してほしい。


「自分の仕事は自分でするから大丈夫」

「手伝った方が早く終わるのに…」

「また今度、困ったことがあったら相談させてもらうから」

「いっつもそういうけど、俺を頼ってくれたことないよね?…俺じゃなくて平井係長に相談してるよね」


平井係長の名前が出て思わずドキリとした。


「平井係長は直属の上司だからそうなるでしょ」

「ふーん。わかった、今回は諦めるよ」


高杉が自分の席に戻ったのを確認しほっとした。

もしかしたら、高杉は私が平井係長を好きなことを見抜いているかもしれない…。

平井係長は私が入社した時はまだ係員で、私の担当指導者だった。10歳も年上の指導者にはじめは緊張したが、平井係長は他の新人に比べできの悪い私を根気強く指導してくれて、なんとか一人前になった。

はじめは年の離れた兄のようなに慕っていたのに、それが恋に変わったのはいつだったのだろうか。気がついたら恋に変わっていた。





一一カタカタカタカタ。


ふう。もうすぐで終わりそう。時計を見るともう9時前だった。

今日は惣菜でも買って、それを食べて早く寝よう。

残っているのは麻美だけだと思っていたが、なぜか高杉も残っていた。

いつも定時で帰ってるのに…。珍しいこともあるもんだな。

仕事が一段落つき帰る用意をしていると高杉が麻美に話しかけた。


「麻美ちゃんさ、いつになったら平井係長のこと諦めるの?」

「え…っ」


高杉には私の気持ちがばれているかもしれないとは思っていたがその発言はかなり失礼ではないのだろうか。高杉になぜそんなことを言われないといけないのか。


「平井係長妻子もちなの知らないの?」

「え、うそ、そんなはず…」


そんな話聞いたことない。結婚指輪もつけていない。でも、彼女や結婚してるという話を聞いたことがないだけで、はっきりといないと聞いたこともなかった。だからいないと当然のように思っていた。


「別に疑ってもいいけどさ。係長のスマホケースのポケットに写真が入ってるから見たら嘘じゃないってわかるよ」

「…」






仕事場を後にして家に帰って来た。ご飯は食べれそうになかったし、ベッドに入っても眠れなかった。

麻美の家は母子家庭だった。離婚の原因は父親の不倫だった。不倫した父は母と自分を捨てて不倫相手と再婚し、麻美は母と辛い思いをしながら生活してきた。そんな麻美にとって不倫はもっとも嫌悪するものだった。

高杉の言うことが本当かどうかわからないけど、不倫してまで平井係長と一緒になりたいとは思えない…。

自分から平井係長に聞けばすむことだけど、そうすることでこの恋に決定打を打つことが嫌で平井係長に本当のことを聞けずにいた。

しかし、真実を確かめる日は思ったよりも早くやってきた。





「確かこれ好きだったよな、頼むか。すいませーん」


私は今、平井係長と二人っきりで居酒屋に来ている。

自分の一番大きな工事発注が済み、ちょうど今日最後まで残っていたのが平井係長と私だった。そのため、平井係長が飲みに行こうと誘ってくれて二人で居酒屋に来ることになった。

この場所は、新人の頃にミスをしたりして落ち込んでいるときに相談にのってもらったり、仕事の愚痴を聞いてもらったりした馴染みの場所だった。

それぞれ好きなものを頼んで食べているけど、味があまりわからない…。平井係長に結婚しているのか聞こうと思っているけど、なかなか口に出せない。そもそも奥さんがいるんだったら仕事仲間とはいえ男女が二人で飲みに行くのはどうなんだろう?


「紺野ってさ、彼氏とかいないのか?」

「え…、いませんよ。今は仕事だけで手一杯です」

「そっかー」


今までそんなこと聞かれたことなかったのでドキッとする。


「好きな人とかはいないのか?」

「え、いや、えっと、いませんけど…。なんでそんなこと聞くんですか?」

「あー、なんとなく?」


一一平井係長はどうなんですか?


今なら、聞ける気がする。


「ごめん、ちょっとお手洗い行ってくるわ」

「あ、はい」


せっかく勇気を出して聞こうと思ったのに結局聞けなかった。

あ…、平井係長の携帯おいたままだ。


一一平井係長のスマホケースのポケットに写真が入ってる。


高杉のその言葉が頭から離れない。

スマホケースの中を見るだけ、本当に写真があるのみるだけ…。

人の携帯を触ることに罪悪感はあったが、自分の欲望に勝てずスマホケースのポケットを見た。


「お待たせ、って紺野顔色悪いぞ?」

「え、そうですか?飲み過ぎですかね…」


声は震えてなかっただろうか、なんとか平静を装いたかったのにばれてしまうぐらい顔色が悪いのだろうか…。


「もう遅いし切り上げるか」

「はい」


早くここから去りたかった。


「ごちそうさまでした、平井係長」

「いや、それより顔色悪いけど大丈夫か?送ってくぞ?」

「いえ、大丈夫です」

「…そうか。気を付けて帰れよ」

「はい…」


平井係長と別れた後、堪えていた涙が溢れ出た。


一一この恋を、もう終わらせなくては。

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