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【 願いが叶うその日まで 】
私、イル・エヴァレットは騎士を辞した。それは、私が高みを目指すのを諦めたからではない。さらなる高みを目指すために、騎士を辞めたのだ。
幼き頃から、私の目指すべき目標であった存在。それに私自身がなる為の決断だった。
私が幼き頃から目指すもの、それは──、
───剣聖
私は剣聖という座に付く為、日々研鑽を積んだ。その甲斐もあり、私はこの歳では異例な上級士官、その中でも大佐と呼ばれる名誉な地位にもつく事が出来た。
だが言えば、それだけである。
大佐の上には准将、少将、中将、大将、元帥とあり、剣聖の、けの字にさえ到達出来ていない。
最近は、自分の成長限界を感じつつもある。
そんな日々を送っていたところに、あの布告である。
【 この三年間で、最も剣聖になるに相応しい功績を挙げた者に、剣聖の座を叙位する 】
私はこれを転機として騎士を辞め、自らの研鑽と功績を挙げる為に旅に出る事にしたのだ。
この忌々しい両眼の内の片眼を隠しながら。