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呪縛のルカ〜約束は幾千の死を越えて〜  作者: 白希
Chapter Ⅰ Prescience
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Episode23 Second time





 まるで水底(みなそこ)から意識がそっと浮かび上がるかのように、はるか彼方から聞こえる音や、まばゆい光が徐々に近づいてくる。

 やがて、記憶のかけらが“ひらりひらり”と舞い降りるように思い出され始める。身体の奥深くから押し寄せてくる五感とともに、漠然とした混乱が少しずつ整理され──、



 そうして“虚構”から“現実”へと、カナデは意識を戻した。




「うっ……」


 カナデは吐き気を催したかのように、口元に手をあて眉間に皺を寄せる。


「……相変わらず、死を体験するような終わりの迎え方は、精神的にキツイものがあるな…」


 そうやって毒づいてから、カナデは周囲の確認を行った。

 そこは昨日、外套や短剣を買った武具店で、


「カナデ?…大丈夫?凄い気分が悪そうだね、あそこに椅子があったから、そこで一旦休んだほうがいいよ。」


「カナデお兄ちゃん、大丈夫ですか?」


 そこには、カナデに心配そうな表情を向けて、そうやって提案してくれるイルと、同じく心配そうにしながら、カナデの背を優しく(さす)るエフィの姿があった。


「……ありがとう二人とも、少し休ませてもらうよ。」



(あれが現実じゃない、虚構の世界だとわかっていても、やっぱりこうやってなんともないイルとエフィの二人の姿を見ると、安心するものなんだな。)




 カナデは二人にそうお礼を述べて、イルの教えてくれた椅子へと腰掛け、しみじみと、そんな感慨に耽った。








───────










 カナデの異能の正体。


 それは未来を予知する力、異能力。


 だがそれは、一般的に(みな)が想像するものとは大きく異なる。


 カナデの予知能力は未来を見るだけに(あら)ず。


 それは、虚構の空間を創り出し、限りなく現実に近い世界を構築すること。



 即ち、カナデの異能は実体験型の予知能力であった。





(全く、俺の異能は使い勝手がいいんだか、悪いんだか……まぁ、十全に使い切れてない俺が悪くもあるが。)


 実際のところ、カナデのその予知能力は、未来を全くの狂いなく、詳細な情報を五感とともに体験でき、しかもその虚構内においては、カナデのスペックを途轍もない域にまで向上させることができる為、とても有能な能力といえる。

 しかしながら五感とともにということは、あのような死ぬ終わり方をすれば、それは現実となんの変わりもない死の痛みを伴うことになる、ということでもあった。


(…置き換えることまでは何とか出来るから、まだいいけどさ。)


 そう、カナデが行うことの出来る最大の強みは、虚構と現実の置換。

 虚構世界で起こったことを、現実に起こったこととして置き換えることが可能だった。でなければ、虚構世界内に置いての身体能力向上は、全く持って意味のないものと化してしまうので、これが一番重要だと言えた。

 置換した瞬間、虚構は現実へと変わり、必然、それと同時に虚構世界は終了する。


(にしても、強制的に終わるようなのは、この世界に来て、もうこれで3回目なのか…)


 カナデは、この世界に来て直ぐに出会うこととなったフィガル達に、虚構世界にて2回殺されていたのだ。


 実際、虚構世界というものは、強制的に終わるようなものではないのだが、カナデが虚構世界内にて死ぬ事によって、強制的な終了を余儀なくされていた。

 仮に死ぬことなく、虚構世界内で過ごした場合に来るタイムリミットは3日間であり、4日目を迎える辺りで、現実世界へと意識が戻るような仕組みになっていた。

 

(あと2回か…)


 世のものすべてが無限ではなく、有限であるように、そんなカナデの能力も有限なのだった。

 あと2回、合計3回がカナデが連続使用可能な異能力の回数であり、その連続使用のクールタイムは2日間。

 そして、3回を超えての行使をすると強制的に意識を持っていかれ、2日は寝込むことになるということを、カナデは何度かの実体験により心得ていた。




(なんにせよ、状況は最悪だ…何もせずにこのまま時を進めれば、待っているのは凄惨なあの未来だ。)


 カナデはイルとエフィが血塗れの状態で磔にされた、あの悲惨な情景をあえて頭の内で思い起こして、苦渋に満ちた表情を作った。

 そんな無残な光景を脳裏へと焼き付けて、そうしてカナデは覚悟を決める。

 



 ───どんなに苦しい運命が待ち受けていても、二人を必ず救い出して見せるのだと。







「虚構の扉よ──開け」





 

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