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呪縛のルカ〜約束は幾千の死を越えて〜  作者: 白希
Chapter Ⅰ Prescience
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Episode21 未来予知の異能力者





 窓から差し込む穏やかな陽光が、彼のまぶたをそっと撫でる。深い眠りから浮き上がるように、彼の意識が次第に現実世界へと戻っていく。そんな中、鳥の囀りや風のざわめきが聞こえ始め、夜明けの訪れを告げていた。


 彼はまだ眠たそうに、まばたきを何回か繰り返して──、

 そうしてカナデはゆっくりと体を起こした。


 朝日が窓から差し込む中、鏡の前に立つ。鏡に映る自分を見つめながら、カナデは髪を整え、服を身に纏っていく。そうして身支度を終えると、カナデは深く深呼吸をして、朝の少し冷たい空気を肺へと吸い込み、気を引き締める。

 最後に、買ったばかりの黒の外套を羽織り、外に向かって一歩を踏み出した。


「イル、エフィ、起きてるか?」


 “コンコン”とノックをして、カナデは2人が居る部屋に呼びかける。数秒待っても応答がなかった為、もう一度、と、何度かのノックをしてみるが、


(おかしいな、もう二人で朝食でも食べに行ったのか?)


 何回ノックや声掛けをしても応答がなかった為、カナデはそう考えた。念の為とドアノブを回して開扉を試みる。そうしてみると“キィー”と、軋みを上げてなんの抵抗もなく、ドアが開いた。


「……開いて、る?でも朝食に行くとしても、普通は鍵くらいかけてく、はず…かけ忘れか?」



 開けた部屋には誰もおらず、部屋は静寂に包まれていた。





──────





 三人の部屋のある2階から、食堂のある1階へと降りると、仲居が“おはようございます”と、挨拶をくれる。それにカナデも返しながら、少し足早に食堂へと向かう。


 行ってみれば、何人かの客が朝食を楽しんでいるが、


「いない……」


 そこにイルとエフィの姿は見えなかった。

 カナデは途端に胸騒ぎを感じて、勢い良く宿の外へと飛び出した。



「俺をおいて先に?いやいや、あの二人はそんな性格じゃない。どう考えても何かがあったんだ。」


 胸中に焦りを渦巻かせながら、カナデはイルとエフィを探して都市中を駆け回る。が、どこにも見当たらない。通り過ぎる人々に声を掛け、二人の特徴を伝えるが、誰もそんな二人の姿を見かけた覚えはないという。


 カナデは頭の中を支配しようとする、嫌な予感にかぶりを振って、それを追い出しながらも、あらゆる都市中を探して走り回った。


「ハアハア、どこに行ったんだ…二人とも…」


 幾ら駆け回ろうとも二人の痕跡すら見えず、

 猛烈に膨れ上がる不安を押し付けて、

 そうやって膝に手をついて、カナデが息を切らしていると──、




 突如として、ある一か所でざわめきが起こる。


 カナデは何か、何でもいいからと、イルとエフィの情報を求めて、そんな、どよめきのはしる、人々の集まる方向へと無我夢中で駆け出した。


 そうして、人混みを掻き分けて、

 その中心にあったものは──、





「ッ!……なん、で?」



 “磔にされ、痛々しく全身を真っ赤な血に濡らした、イルとエフィの姿”だった。






 そのあまりの光景に頭の整理が追いつかず、カナデはそう言葉を漏らす。


 少しして、状況を脳が飲み込み始めて──、

 カナデの体は“ブルブル”と、勝手に震えだした。

 それは抑えつけようとも、己の内では到底抑えきれない強い怒り、カナデはそれに猛烈なまでに身を焦がした。


 そこに集まるみやこの人々は、固唾を飲みながら、その凄惨な光景を見て震えていた。そんな場には息をするのも苦しいほどの、重々しい雰囲気が立ち込めている。



「クッ………イルっ!エフィっ!」



 早くあの磔を壊して、二人を助けなければ、と

 カナデはイルとエフィの元に、己の出せる全速力で駆け寄った──、


 しかし、



「ッ!…何者だっ!イルとエフィに手を出したのは、お前らかっ!さっさと二人を開放しろっ!」


 それを行かせんと、カナデの前に立ちはだかったのは、黒装束に身を包んだ集団だった。


 そんな不気味な集団に対して、臆することなくカナデは激昂して声を荒げる。



「ふぅー…待っててくれ、今すぐに…」


 二人を助ける為ならば、

 冷静にならなければと、

 カナデはそうやって息を吐く。


「………相変わらず、俺は運がないらしい。そんな悪運にイルやエフィを巻き込んどいて、何もせず逃げ去るなんて、俺にはできない。……いや、」


(これが、俺の悪運なんかによるものじゃなかったとしても──、)



 この凄惨な状況の果てに、カナデは新たな運命に向き合わなければならないことを悟っていた。

 イルとエフィを守るため、そして真相を明らかにするために、立ち上がる覚悟が必要だと感じていた。


 今はこの黒装束の集団からどうにか二人を──、




「……俺の大切な友達と妹分は、絶対に助けてみせるッ!」





 時は動き出す、カナデの、カナデたちの物語は新たな局面へと向かっていくのであった。






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