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Episode11 虹彩異色の少女の過去 Ⅱ







「なんかいいな!こういうの!」


 クレン君がパンを手に持って、木に寄りかかりながらそう言った。


 私もクレン君と同じ気持ちだった。まさに私が、望んでいたのはこういうのだ!と感じるくらい今はワクワクして楽しい気分だった。


 友達と一緒に遊びながら、まだ私がやったことがなかったことを今、体験できている。私が夢見ていたことだ。いつもこうできたら、と思っていた事だ。



 今日は本当に最高の一日だ。と心からそう思った。






_________






「よしっ、じゃあそろそろ帰ろっか!」


 あの後、少し休憩したらまた森を探検して、だいぶ歩いて、今また皆と楽しくおしゃべりをしながら、休憩していたところだ。

 私がお家を出たのが、お昼を少し過ぎた頃で、今は少し空が赤くなり始めた頃だから、かなりの間こうして皆と遊んだことになる。


「うん、そうだね。」


 私はそう答え、みんなと一緒に村に引き返していった。






_________






 村への帰り道、


「次は向こうの方探検してみないか?」


「おぉ、いいじゃん!向こうは探検してるって感じがして良さそう!」


 カイル君とクレン君が楽しそうに次回の話をしている。けど、あれだけ木がいっぱいな中で迷わないかな?

 そう思っていたら…


「けど、あんな中探検したら迷っちゃわないかなー?」


 リィフィちゃんが私の思っていたことを口にする。


「あー、うーん、そうだな。……目印とか?例えば木とか地面とか、わかりやすいとこに目印つけながら行けばいいんじゃないか?」


 と、カイル君が身振り手振りを混ぜながら、そんな意見を出した。


「それだっ!さっすがカイル!」


 すると、クレン君はカイル君の背中を強く叩いてそう褒めながら、その意見に賛成した。


「それなら平気かもね!」


 確かにそれなら大丈夫そう!と思った私もそう答えたら、


「うん、だねだね!」


 リィフィちゃんもそうやってそれに続いた。


 私は今日みたいにまた新しい体験ができるなぁ、と次回の事を考えてワクワクした。


「それじゃ、次はあっち…な………」


 何故か、カイル君が私達の方を見ながら怖い顔をしている。


「どうしたんだよ。カイル」


 そんなおかしな表情をしているカイル君に、クレン君が問いかける。


「に、逃げろ………くっ、逃げるぞ!おいっ!早くだっ!」


 カイル君がそう叫ぶと同時に…



 ──グギギィャャー!!!



 後ろからとても大きな声が聞こえて来た。


 振り返ったらそこには──、




 緑色の肌

 低い身長

 怖い顔

 棒のような物を手に持った




 五体のゴブリンが居たのだった






_________






 頭にモヤモヤがかかったような感じだ。


 とても頭が痛い。


 それにとてもうるさい。


「うっ」


「起きたか。イル。」


 お父さんの声がする。

 周りを見たら、そこは私のお家の寝室だった。

 そうして見ていたら、いつもと違うことに私は気づいた。

 右眼が見えているということに。

 横を見るとそこには壊れた眼帯があった。


「お父さん?」



 ドンドンドンドンドン!



 その時だった、お家の扉を強く叩いた、そんな音が響いた。


「おいっ!裏切り者ォッ!狂乱の同族なんてかくまってんじゃねぇよ!」


「俺らに今まで嘘つきやがって!」


「あの悪魔のせいで、悪魔のせいで!三人も子供が死んだのよ!ねぇ!」






「狂乱の同族?悪魔?三人死んだ?」


「イル。気にするな、お前のせいではない。」


 お父さんが私を抱きしめる。


「私のせいじゃない?大丈夫だよ?お父さん。頭が少し痛いくらいだから。」


 そうだ、今日は楽しい事があったのだから、皆と森を探検して、私の夢見た体験ができて、次回の約束も………………………………





「……三人死んだ?」







 ───瞬間、思い出した










「このままじゃ無理だ!先に行け!」


 皆を逃がす為にゴブリンに立ち向かったカイル君は…



「イルっ!」


 私を助けようとしたクレン君は……



「いやー!やめて!お願いだから!来ないでっ!」


 そうだリィフィちゃんは………




「……皆、死んだ?」



 三人の泣き声と叫び声が、頭の中から離れなくて──、



「………うっ」




「──────ッ──!」



 私はそうやって絶叫を上げて、また意識を落とした。






_________






 私はあの後、お父さんに森の奥の小屋に連れて行かれた。

 小屋に移動する時に、お母さんと村の人たちの言い合いが聞こえた。


「あの子はなんにも関係ないわ!あの子も被害者よ!オッドアイだからなんだって言うの!あんなの迷信よ!」


「じゃあなんでアイツだけ生きてんだよ!ああ!?」



 私だけ生きていた理由……

 

 思い出せない、覚えていない…



「暫くここに居るんだよ。大丈夫だから。」



 お父さんはそう言って私を抱きしめた。







_________






 私がこの小屋で生活するようになって、あれからすごく時間がたったと思う。


 お腹がすいた。


 何故か最近、お父さんとお母さんがあんまり来てくれなくなったのだ。


「パン…あとこれだけ……」


 私はあと一口分しかないパンを見てつぶやいた。


「前まではあんなにいっぱい来てくれたのに…」


 どうしたんだろう

 前まではいっぱい来てくれて、ハグしてくれて優しい言葉もいっぱいくれたけど、

 けどなぜか、最近はそれもしてくれなくなった…



 ぐぅー



 お腹が鳴った。

 

「お腹…空いた…な」



 ドン!



「!?」


 とても驚いた。

 すごい勢いで、いきなりドアが開いたのだ。



「もう…」



 お母さんだ。


「お母さん?」



「もう……」





「あなたなんて。あなたなんて居なければいいのよ!!」


「えっ?」


「もう、うんざりなのよ!これ以上、これ以上私の人生を滅茶苦茶にしないで!」


 足音がする。

 

 その足音の正体はお父さんだった。


「お父さん?」


 そう呼びかけお父さんの顔を見る。


「ひっ…なん…で?」


 私が見たお父さんの目はあの優しげな目ではなく


 今まで見たこともない





 真っ暗な目だった





_________







 お母さんの目もよく見ればいつもと違う目をしてた。

 いやそれだけじゃない。暗くてよく見えなかったけど。体にあざのようなものも見えた。



「私捨てられたんだ。」



 どことも知らない街のどこか…



「………なん…で、なんで、うっ、う゛えぇぇーん、なんで、おがぁさんおどうさん。がっでに森に行ったごとならっ、謝るがら、だがら、だがら……」





【 私は一人泣き続けた 】






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