(1)
なんだろう。すごく気持ちがいい。
ここはどこだろう。
ひどく真っ暗で、何も見えない。
なんだかふわふわして、よくわからないや。
僕は、死んだのかな。
そうなんだ、そうに決まってる。
だって、あんなに矢が飛んできたもの。
助かるわけないよ。
そうか。
僕は死んだのか。
やっと死ねたんだ……。
『ばか言ってないで、目を覚ましなさい』
え?
その声はゆきしろ?
『いいから、目を覚ましなさい』
目を覚ますっていったって、僕はもう死んだんだ。
どうすることもできないよ。
『あんた死ぬってわかってるの? 死ぬためには、生き物でなくてはならないのよ』
え、何?
それはどういう意味?
『生きているから、死ねるのよ』
何を言っているのかわからないよ。
僕だって生きていたじゃないか。ちゃんと、息をして、ご飯を食べて、笑って、泣いて!
僕が生きていなかったとしたら、あれは何だったって言うんだい?
『わからない子ね。確かに、そのイレモノはヒトだわ。ヒトの形をしている。でも、あんたは生きていない』
えっ?
『でもね、そのイレモノはもう“モタナイ”のよ。あんたが、“こっち”に残るなら、新しいイレモノが必要になる』
わけがわからないよ。モタナイとか、こっち、とかイレモノってなんだよ!
『いいわ。あんたも一緒にここへ入りなさい。これもそう長くはモタナイだろうけど、今は贅沢も言っていられないでしょう?』
ちょっとまって。
何、勝手に話を進めないでよ!
『さあ、こっち
────こちらへおいでなさい、鬼火の子よ……』