83話 ゼロになろう ~この波に流されよう~
(チーム作りに大切なものは?と聞かれて)愛だよ,愛!! エスピノーザ監督 ※元ヴェルディの監督です。日テレかな?新監督紹介の映像があって、常に「愛」を強調していた愛の伝道師も2020年に亡くなっていたのですね。ご冥福をお祈りします。
ハーフタイムを迎え、両軍のドレスルームの雰囲気は天国と地獄とも言えるほどの格差が生まれていた。
まずは、天国側の鹿島南。
基本的に相手の戦略の裏をかくことが出来、先制点こそ譲ったものの最終的にはリードで折り返しが出来た。
点が取れるまでの時間はかかったようにも思えるが、点を取られたことで慣らし運転から本気モードに移ったのが原因だ。
当初の予定では、ゆっくりとギアを上げていくはずではあったのだが、あまりに美しい富良都のゴールがスイッチを入れてしまった格好だが、展開としては決して悪くない。
想定内のゲーム展開、と監督の川上は評して、前半のポイントを望月から報告させる。
「相手の先制点は予想外でしたが、その後の流れを見ると攻撃陣の意識変えの良い呼び水になってくれた、と思います。あとは中盤のBOXと最終ラインが少し距離が開くので、勇気をもって押し上げるのを忘れないように。あと、エリアの中でのチャレンジが司君以外少ないのも散見します。全体的にもっと貪欲さを見せていきましょう」
「後半になって間延びしたら、一気にそこで拠点作られるぞ。点差広げるまで、DF陣は我慢して耐えろよ。あと、後半八神、前行くか?」
「うぃ」
相手の狙いを外すために出だしは後ろに置いたが、やはりBOXのクォリティを考えれば八神と麻野では大きく変わってしまう。
何気に負けず嫌いな性格でもあるため、せめて半分は迎え撃ちたいと思ってる本人の気持ちとチームの状況が一致したところだ。
変更に伴い細かい修正があって、最後に、
「いいか! 守りに入るな! 残された試合だってもう少ないんだ。これからずっと、今が最高の自分だって言えるようなプレイをしてこい!」
と、監督からの強い檄で締められた。
……一方では、
「顔を上げろ!まだ終わってないんだぞ!!」
どんよりした空気を一掃するように、仙台育亮の監督三上は声を張り上げた。
ほとんど、とは言えないまでもこの難しい状況に気持ちが落ちてしまったものがそれなりに見受けられた。
(ここまでだな……)
三上は心の中で、今まで主体性を持って取り組んできた選手たちの努力を惜しみ、称えつつもその方向性を、今ここで終わらせる決断をした。
「今までお前達はよくやってきたと思う。通常のメニューに加えて、対鹿島南に特化したメニューまでOB巻き込んで耐え抜いてきたんだからな」
下を向いていたメンバー達がゆっくりと三上の方へ顔を向け始める。
「何ら恥じることは無い。史上最高と言われるチームだぞ? そう簡単にやらせてくれると、本当に思ってたのかお前達は?」
わざと大きなため息をついて、やれやれとジェスチャーを入れる。
そして、
「そんなわけないよな!!」
「いいか!? 最高の王者に挑むんだ。お前達は最高のチャレンジャーじゃなきゃいけない。わかるな。かなぐり捨てろ! 今までの努力だなんだ一切合切だ! 死に物狂いで食らいついていけ。後は、お前達の身体が分かっている。死にたくなるほど求めた王者との一騎打ちだろ? 揶揄でもなんでも無く負けたら今日ここで全てが終わる。このまま終わって、良かったと言えるのか、今のザマで」
「…良くないです」
「…いいわけが無い」
数人がポツリポツリと声を紡ぎ出す中、三上は今までで一番の声を張り上げる。
「だったら目を覚ませ!!!」
三上は基本的に選手達の自主性に任せながら、手綱を引いていくタイプの指導者だ。
怒号のように声を張り上げて叱責した事など、試合中の指示以外では今の選手達にはしたことが無かった。決して、自分はモチベータータイプでは無いことは分かっていたが、今だけはどうしても彼らを助けたいと心から思ったのだ。
「無様でも良い! 情けなくてもいい! 勿論勝てれば最高だが、負けたってそれもサッカーの一つだ。ただ、未来の自分に誇れない戦いだけは絶対するな! これはお前達だけじゃ無い。未来の仙台育良の為でもあるんだ!!」
「…うす」
ゆっくりと富良都の目に光が浮かんでくる。
自分はまだ、終わっていない。
まだ、偉大な先輩に挑む権利をなくしていない。
そして、ゆっくりと立ち上がり、ホワイトボードの方へと足を進めた。
ランゲラック選手が今年でJを去るようです。偉大なGKとの別れはとても寂しいものですね。グランパスは、ディドさん、伊藤さん、楢崎さん、そしてランゲラック選手と長い歴史でも正GKと言える人は少ない希有なチームでもあると思います。
さて、来季はどうなるのか。僕としては武田選手の頑張りも期待しながら、東ジョン選手やピサノアレクサンドレ選手などユースからの選手も追いかけていきたいな、と思っています。




