68話 フットボール選手 なぜ戦う!?
「情熱に命令する事は出来ない」バッジョ
――時は流れて、
「宣誓!!」
全国からそれぞれ都道府県代表の精鋭たちが開会式のピッチで顔を合わせる所まで時間は進む。
静岡代表の市立掛川高校キャプテン周防の選手宣誓の声がピッチに響き渡る。
創部二年目にも関わらず優勝候補の一角でもあった嶺葉たち静学付属を倒した例のマジカルチームのキャプテンだ。
俺たちはこれから十二月三十日から一月八日までの十日間で計四十七試合の激闘を行うよ予定になっている。
何気にパンパンなスケジューリングに関しては某日系ブラジル人じゃないが苦言を呈したくなるほどだ。
周防の選手宣誓を風の音と共に遠くで聞きながら……、
俺は全く別のことを考えていた。
……、
…………、
………………、
【歌詞(替え歌掲載)による規約に抵触したため削除しました】 2/25
…………なのだと。
と熱い気持ちを音楽に合わせ頭の中でリフレインしていた。
そんなうちに選手宣誓が終り、競技場に拍手が包まれた。
うむ。そのオーディエンスの拍手は俺が責任を持って石〇森先生に送らせて貰うとしよう。
「何か周防、良いこと言ってたよな?」
後ろでユニフォーム004が何やら感銘を受けていた。
……全然聞いてなかったとは言えない。
☆
気を取りなおして――、
俺たちの初戦は高知県代表の明応義塾だ。
キープレイヤーはブラジルからの留学生『サンドロ・ティシェイラ』だ。
ちなみに俺はコイツを知っている。
正確に言えば『未来の』だが……。
数年後に帰化してガリーニョさんに代表に呼ばれる選手になるはずだ。
他にも二人のブラジル人留学生が来ており、CB・SH・FWにとバランスの取れた陣容を取っていて、まるでプロチームみたいな編成でもある。
さて、そんな一回戦(事実上の二回戦)から準々決勝までが首都圏近郊で試合を行う。
宿舎に帰った俺たちはそこで懐かしい顔ぶれに出会う。
明代安積永盛の虹野とそのチームメイト達が別の高校の生徒たちと入口で談笑をしていたのだ。
「おっ? 常勝軍団が帰ってきたな」
虹野の声に反応してその場にいた選手達が一斉にこちらを向く。
そこにあるのは敬意や憧れ、そしてそれ以上の反発心。
隙あらば喰ってやる――、そんな明確な意思が視線の中に充満している。
「こぉぉぉぉやぁぁぁぁ!!」
そんな痺れるような空気はあっさりと八神が虹野に抱きついて爆散したが。
相変わらず空気を読めない所が八神の良いところでもある。
「お、おう、瞬。ちょっと離れて? つか、昨日電話で話したばっかだろ?」
「諦めろって。八神の事、一番知ってるのお前じゃん?」
風雲た〇し城の『きのこでポン』を連想させる格好でしがみつく八神。
無下に出来ず重さに耐える虹野。
いいぞ、そのまま虹野の足腰にダメージを残してやるんだ。
「おりょ? 楠?」
少しポカンとした顔で虹野が俺の顔を眺める。
「なんだ? 俺がどうかしたか?」
そのまま少しだけ虹野は俺を値踏みするかのように下から上へと見渡した。
……なんだ? 別に視線はイヤラシくは無いが、あまりいい気分ではないな。
「いやね。瞬がいつも『楠が変わったよ』って言ってたからさ。うんうん、いいネ。彼女でも出来たか?」
「んな!?」
「おぉ! 流石は虹野だな。そうなんだよ、コイツ。俺の許可も無く勝手にマネージャーと良い感じになりやがってよ。お前からも言ってくれよ、『西より先に彼女作んな!』って!」
「いや、それは難しいな……。結婚諦めろなんて、そんな酷い事言えるわけないじゃん。つか、瞬……重い!」
西の頼みを軽く流した虹野はムリヤリ八神を下ろして両肩をグルグル回す。
「あ~、もう疲っちゃ! つか司、少しは止めるなり何なりしろよ?」
くだけ始めた虹野の影響もあり、さっきまでの殺伐としかけた空気が少しづつ緩いモノへと変換されていく。
西だけは時間が止まったままのようだが。
「いや、遠征先での瞬の面倒は不破と内村に任せてるから……」
「なにぃ!? 駄目過ぎるだろ! いいか司? 瞬にはちゃんと保護者を付けなきゃ駄目じゃないか! お菓子ばっか食べ過ぎない様に、だとか知らない人に付いていかない様にとか、お小遣いはちゃんと考えて使う様に、とか常に目を配らせてあげなきゃ駄目だろ? お前キャプテンなんだから!!」
――おおっ!? よく分からない理論だが、まさかのキャプテン司君がキャプテンについて説教を受けている。
虹野の言ってる事がどう見ても『お母さん』であってキャプテンの役目じゃねぇだろって所が全く残念だが。
つまり……なんだ。明代安積永盛の部員たちは虹野にお小遣いの使い方までキャプテンシー発揮されてるとでもいうのだろうか?
「そういやさ……、郡山のアーケードにスポーツショップあんじゃん? 向かいのゲーセン、隣り合ってるのあんばい? あのキングコングのトコ。あそこ寄ったのキャプテン知っててさ……。スパイク買ったのも知ってたし。なんか怖くね?」
「あ、そういや……、俺も桜通りのブックオフ行ってたのバレてたな」
「マジで!? 電撃倉庫で見つかった後輩もいたぞ?」
明代安積永盛のメンバーが不穏な空気を醸し出し始める中、虹野の説教は止まらない。
「いいか司。瞬は多感な年ごろなんだ。そんな時に悪い誘惑があってだな、もしも瞬が不良になったり誘拐されたらどうすんだ! 司! お前責任取れんのか!? うちの若葉とのこれからに何かあったらどう落とし前付けてくれんだ!」
やべぇ!
みんな同じ年ごろだよ! とか、別に瞬がグレても司は関係ねぇだろ? 流石に十八歳で誘拐はねぇだろ? とか色々言いたいけど、ダメだ。ツッコミが追い付かねぇ!
「なぁ、虹野ってさ? たまにおかしいよな……?」
「そうか? 何かもうおかしいのが普通な気がしてるぞ」
キャプテン論を繰り広げるその後ろで、今まさに自分のキャプテン像が崩れてる事に虹野は気付いてない。
その直後、
「いつまでくっちゃっべってんだぁ! おめぇらぁ!!」
という川上監督の一声が強制解散へと導いたのだが……、
「いいか? ちゃんと瞬にはお前か楠が付くんだからな。頼んだからな!」
去り際に余計な頼みを置いていく虹野は返事も聞かずさっさと去って行ってしまった。
「なぜ俺を入れたし!?」
「じゃあ頼んだよ楠?」
さっきお母さんというキャプテンを指南された司が俺に笑顔を見せる。
「いや、司も頼まれたでしょ? 司か楠って虹野から名前出たの俺が後じゃん?」
「……頼んだよ楠?」
「…………」
とりあえず俺は……、
去っていった虹野の後ろ姿をずっと見送っている八神を誘導してあげることにした。
最初の段階では選手権についてはリアルな情報を最初は求めていませんでした。昔に流行ったサッカー漫画という題材なのもそうですが、そこまで沢山の人の目に触れることはないだろうと思っていたからです。
ところが、思いもよらないPVを頂く嬉しい誤算もあり、全部オリジナルなのもあれだろうと2章終了時点で世代的に繋がる選手たちを出したいと思い調べまくった次第です。今回のモデルは清水にいたアレックスさんですね。元々は後ろの選手だったのが、徐々にポジションを前に行ったそうで、センターバックとして来日し代表のゲームメーカーになったラモスさんにも通じるところがあるんだなぁ、と新しい発見もありました。
そんなラモスさんも『日本にきて上手くなった』と元読売の同僚たちにも言われていたのを思い出します。T並さんですが……。
初めから上手いと思われるブラジルの選手でも日本に来て上達できるといった事実はありがたいことですね。




