66話 決意あらたに
「みんな国立、国立って言うけど、俺は国立なんていらねぇ。優勝旗が欲しいんだ!」
by 盛岡商業 斎〇監督
「俺は嶺葉がいなくなったから駄目になったと言われる訳にはいかなかったんだ」
急に神妙な顔つきで氷高が語りだす。
「お前らの付き合いが長いのは知ってる。司にとってベストのパートナーはきっと今までもこれからも嶺葉なんだって事ぐらいは分かってる。それでも……、代わりに俺が入ったから弱くなったなんて誰にも言わせたくなかった……」
「氷高君……」
複雑そうな表情を見せる氷高に対し、少しだけ嶺葉は申し訳ないような顔を見せる。
「結構辛かったぜ? 今更だから言うけど、ずっと陰で『嶺葉の後釜』って呼ばれてたんだから。部活辞めてクラブチーム行こうかな、って何度思ったことか……」
初耳だな。多分先輩たちだろうけど。一年生の頃、嶺葉がいなかったのを上級生たちが良く思わなかった事を思い出す。
はっきり言えば二人は全然違うタイプだ。プレースタイルも違けりゃ仲間内ってほどの関係性でも無かった。正直、今日ここにいるのも驚いたぐらいなのだが、外から見ればまた違った印象なのかもしれない。
「もう少しお前が嫌な奴だったら楽だったんだけどな」
「それは悪いことをしたね?」
「あぁ全くだ」
氷高はそんな決意表明の後に、あえて俺たちと距離を置いていたことも語った。
「俺がいたら、それこそ嶺葉の代わりに見られるだろ? それにお前の場所を取っちまう訳にもいかないしな……」
プイッと顔を背けてらしくない照れ顔を覗かせる氷高。
なんてこっただよ! まさかのツンデレだったとは……。
その後、聞きたくない森山と西の性癖暴露合戦が開かれた所で食事会は終了を迎えた。
女子マネの凍てつく波動を喰らった上記二人の屍を後に、それぞれの帰途へと付こうとする帰り際――、
「ホントは舞ちゃんの事聞きたかったんだけどね? もしかしたら、ホラ……。僕ら親戚になるかも知れないんでしょ?」
「何言ってんのよユウ兄ちゃん!」
嶺葉の強烈な爆弾が投下された――、が即、笑顔の芝浦によって鎮火される。
「ぐはっ!?」
表情とは裏腹に強烈なボディブローが炸裂する。草薙先生の『ボディがあまいぜ!』が浮かぶ完璧な踏み込みである。くの字に曲がった嶺葉が痛々しい。
親父さんの時もそうだが、芝浦は同族相手だと本当に容赦ないな。嶺葉相手に拳で黙らせるとは……。
色んな意味で望月の悪い影響を受けてるのかもしれない。早めに隔離する様に紺野に頼んでおこう。
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一週間後、清水の練習に参加させて貰ったが、結論としてお断りをして帰ってくることになった。
理由はシニョーリの言葉だ。
「詳しくはまだ言えないが、専門誌以外の記者が多く出入りしている。おそらくコーチスタッフ総入れ替えレベルで刷新されるはずだ。お前を呼んだのは今のミステルだ。それをよく考えた方がいい」
地元に帰ってすぐに『ルオン監督 選手から金品授与!! スタメン選考に賄賂か!?』という記事がスポーツ新聞に踊った。
「一監督ならいなくなれば補強の方向性はリセットされる。でも鹿島にとってガリーニョはそういうモノでは無いのだろう?」
まさかシニョーリに助けて貰う事になるとなんて思ってなかった。大きな借りが出来てしまったようだ。
都築さんに連絡して入団の意思を伝えると内定と言った形で処理してくれることになった。電話の後ろでバウジが「オソイヨー! もっと早く電話くると思ってたー」と叫んでいるのが聞こえてくる。相変わらず元気そうで何よりだ。
地元入団に一番喜んでくれたのは、芝浦だった。
流石に口を出すことが出来ないと話題に近づかないようにしていたらしい。どうも余計な気を使わせていたようだ。
「相談に乗れれば良かったんでしょうけど……。あまり力になれないですし、私の希望で困らせたくはなかったので……」
うん。ホントごめんなさい。親父さんとは静岡の往復中、新幹線で凄い相談したんだけどね。司の件でポロリ癖が判明した洋二先生も流石に言わなかったらしい。
……まぁ、これで今後のことは一応の決着が付いた。
後は目の前に訪れた最後の選手権だけだ。
司はこれが終わったらイタリアに行く。
氷高もアイツなりに苦しんで、それでも俺たちと一緒に戦う事を選んだ。
森山にとってはプロに行くための最後のアピールの場だ。
八神は虹野と再会するイベントぐらいにしか思ってない気がするし、不破に関してはよう分からん。
それぞれ思うところは別でも目指す場所は一緒だ。それだけは間違ってないと断言できる。
さあ! 全国の強豪ども! 玖珂以外かかってこいやぁ!!
やっと二章が終わりました。予定よりもだいぶ遅くなってしまいましたが、やっと選手権に入れてホッとしています。章間に他のチームの紹介や本編以外の事などを載せたいと思っています。
出来上がっているプロットは選手権までですので、そこを一つの区切りに頑張って行きたいのでもう少しだけお付き合い下されば幸いです。どうぞよろしくお願いします。
気付けば二章終了時で30万PVを超えており、一章終了時の3000PVからは信じられないレベルです。本当にありがとうございました。




