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おい!今度の行き先はサッカー漫画だってよ!?  作者: 赤星べお(※完全なPNにしました)
2章 スーペルゴレアドール!
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65話 いっぱい話した思い出がキラリ

サブの選手に交代ですね。変わって入る選手は今夜スタメンにならなかった選手です。


 by ケヴィン・キーガン


 一通りの挨拶を済ませた後は、嶺葉と共にシャワーを借りドレスルームで帰宅の準備をする。

 嶺葉は今回の期間中は選手寮の空き部屋を拝借していたが、今日出て行くとの事だった。

 すでに内定済みという事もあってか、来年からそこに住むのを見越してという条件付きで了承が出たらしい。


「今から静岡帰るのは流石に辛くねぇか? 一端東京行くようだろ?」


「違う違う。今日は親戚の家に泊めて貰えることになってるから」


 どの親戚かはすぐに思いついたけど、それを言葉にするのは止めておいた。


 フロアでは洋二先生と都築さんが何やら話しているのが見えた。


 どうせあの人でしょ?



 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★



「――で、フィジオセラピストっていう形なんですが、是非先生にお願いしたいと思ってるんですよ」


「う~ん。でも私は別のクラブの選手も看てるので専属になってしまうのは……」


「悪い話では無いと思うのですが?」


 ……なにやら大人の話らしい。

 下手に邪魔するのもどうかと思うしさてどうしようか、と嶺葉の方を見ると苦笑いをしながら視線を逸らされた。

 それ、事情を知ってる反応だよな?


 と、固まっていたら洋二先生の方に先に気付かれ声を掛けられた。


「あ、待ってたよ二人とも!」


 安堵した顔を隠さずにソファーから立ち上がり右手を挙げる。

 渡りに船ってのはきっとこういうタイミングの事なんだろうと勝手に納得する。


「ほら、彼らも来たことだし。この話は取り敢えず今のところは無しということで!」


 強引な話の終わり方に都築さんも少し困った顔を浮かべたが、すぐに表情を戻す。


 二日間のお礼とかなり好印象だったことを伝えると都築さんはあからさまにホッとするような顔を見せた。


「良かった。じゃあ良い返事が期待できるかな? 勿論、今じゃ無くても良いんだけど、いや……、むしろ今でも大丈夫だよ?」


「それはまた改めて、ということで――」


「ま、大丈夫ですよ都築さん。これで他のトコ選んだらノッキー地元にいられなくなりますから!」


「何それ!? 怖いんだけど?」


 嶺葉の言葉に皆が笑い合ったところで、俺の体験入団は無事終了を迎えた。

 



 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




「『まさに問答無用で日本サッカー史上最高のタレント候補と言っていい。全てを圧倒する彼のプレゼンスは極上のインテリジェンスとインピレーションが凝縮され、見る者全ての言葉を奪ってしまうほど。この大会は彼を見る為のモノと言っても間違いない!』だってさ、司!?」


 西が唐揚げを頬張りながら勢いよく捲し立てる。その西の周りには沢山の雑誌のが乱雑に置いてある。


『高校サッカー選手権ガイドブック』、『選手権完全ハンドブック』、『高校サッカートゥデイ 展望号』etc……。


 何冊買ってきたんだよ、お前ら……。


「いや、ほら。そういうの悪いことあんま書かないし、ちょっと誇張するトコあるから……」


「つかカタカナ多いな。意味わからんわ。……じゃあ、次は氷高な。ええと……なになに。『左足一本で勝負できる高校界のマラドーナ。どんなキックも簡単にこなす魔法の左足は必見』だとよ?」


 ♢


 鹿島の練習場を後にした俺たちは嶺葉の案内で学校そばの定食屋へ送って貰った。

 そこには司や西、八神などいつものメンバーが俺たちが来るのを待っていた。

 あとは……珍しい事に団体行動が嫌いな氷高も来てる。

 ちなみにマネージャー軍団は後から合流との事だ。


「……で、これは何だ八神?」


「ユーリ、明日帰っちゃうから。今日みんなでご飯食べようって、西が」


「そうか。そんな大事な事、俺誘われてねーんだけど?」


「ユーリ誘ったとき伝言頼んだはずだよ。ね、不破?」


「んっ!!」


 思いっきり頷く不破。

 お前が頼んだの? 伝わってねーだろ、ソレ? 


「いいから聞けよお前ら! 次、八神な? 『中盤一帯を支配する寡黙なダイナモ。チームの浮沈を握る欠かせないバイプレイヤー』だと。なんかかっけぇな。ちなみに不破は『圧倒的なフィジカルの無骨なストッパー。エアバトルは無敵』と書いてある」


「不破のみじけぇな。八神のはまぁ、なんかわかるわ」


「そういうおまえは『決勝での負傷などが心配される頼れる守護神』だとよ』


「心配されてる癖に頼れるって矛盾してんだろ。」


「などって言うところに不安分子が隠れてそうだね」


 氷高の余計なツッコミが痛い。反論したいところだが流石に『高校界のマラドーナ』様には逆らえない。だから八神の唐揚げを一個奪うとしよう。余計な相づちを打った罰だな。


「んで……、西おまえはなんて書いてあんの?」


「あぁ~! クスィーが僕の唐揚げ取ったぁ。西の分が無くなっちゃう~」


 後ろで八神の非難が五月蠅い。どうしてお前の分を喰ったら西の分が……、と思ったら普通に西の所からパクってやがる。

 いいのか西? 読んでる間にすべて喰われるぞ『五月蠅いダイナモ』に。


「ん? 俺か? ちょっと待て。この日本のベッケンバウアーはな……。『見かけとは違いクレバーなDF。カバーリングに秀でたムードメーカーでもある』……、なんだと、コラァ!! って俺の唐揚げねぇし!! 返せ楠!!」


「俺じゃねぇ!!」


「つか、決勝勝利の立役者の俺の紹介をスルーするとはどういう了見だ?」


「うっせ! 俺はまだ学祭の時の部室の大掃除許してねぇかんな!」


「時効だ!」


 そんな西と森山の馬鹿騒ぎを微笑ましく見守る嶺葉。

 選手権ネタでは流石に混ざりづらいのか、少しだけ遠慮した雰囲気を出している。


「あ、ワリいな嶺葉。俺らだけでこんな騒いじまって。お前の為に集まったのによ」


「いや。気にしないで良いよ。なんか見てるだけで懐かしい気持ちになれて……さ。もしかしたら僕もこうやって、ここで三年間過ごした世界もあったのかなって思ったら少し感傷的になっちゃってね……」

 

 嶺葉の言葉に一同静まりかえる。

 確かに嶺葉と別々の進路になるなんて誰も思ってもいなかった、と思う。当たり前の様にみんな一緒だと思ってた。

 今の布陣に嶺葉だと割りを食うのはボランチの内村だろうか? いや、司を一つ前にしてそこに嶺葉を入れてもいい。氷高のウイング気味のツートップも面白いかもしれない。

 うん。どうとでもいけるな。


「あ! そういえば嶺葉の事書いてあるのあったぜ?」


 そう言うと西が違う雑誌を手に取りペラペラと捲っていく。


「あった! ほら、これ、特集されてるぜ?」


 雑誌の文面の方をこちらに向けて西がドヤ顔をする。


『届かなかった夢舞台  ~俊英たちの散り際~』


「……またメルヘンな題目だな、オイ?」


「ま、そう言うなって。今読んでやっから……、静大付属のとこな? パスの総合商社、嶺葉友里はと……」


 ピクリと嶺葉の左ほほが引き攣る。


 うん、西。それは正解じゃないな。でも、お前の自分から地雷を踏み荒らしていくスタイルは嫌いじゃないぞ?


「どれ? 『その視野と味方の足元に寸分狂いなくパスを届ける技術は世界でも屈指。鹿南の皇と唯一肩を並べられるのは彼一人だろう。それはほぼ全てのJチームが獲得に動いたことが実証している。それだけに檜舞台で彼の姿が見れない事は一サッカーファンにとっての大いなる失望と言えるだろう』……なんかすげぇな」


「凄いユーリ! 流石四天王!!」


「「四天王?」」


 八神の聞きなれない単語に俺たちの声が重なる。


「うん。知らないの? 司とユーリと玖珂っちと安曇あずみんでハイスクール四天王らしいよ? 前に雑誌で見た。あと虹野にじを入れて『高校サッカー五奉行』とかも見た気がする」


「うわぁ……」


「照れんなよ四天王リーダー?」


 あからさまに嫌そうな顔の司を西がいじる。仲が良さそうでなによりだ。

 

「あとシニョーリも載ってるぜ? 年代別アズーリの常連にして祖国では魔法の左足と称される。その端正な見た目に世代別アズーリのエース格とまさに非の打ち所がない将来のイタリアの恋人。盟友嶺葉とのコンビは高校サッカー史上でも屈指でもあった。彼らが出ない大会はまさに『イチゴのないショートケーキ』と言っても過言ではない……」


「あぁ、なんつーか、さ? この記者が嶺葉とシニョーリが大好きなのは伝わってくるな」


 俺の言葉に嶺葉が苦笑いを浮かべる。

 思い当たる節があるんだろう。巻末の編集とかのページを探りだした。


「そういうフレーズ好きだよね? あとは『鳴けないカナリア』とか『小型エンジンを載せたスポーツカー』とかさ」


 司の言葉にサッカー雑誌あるあるネタで俺たちは盛り上がり始める。


「やたら、彼は真のカンピオーネさ(キリッ)とか言うよね?」

「南米系だと彼は本物のクラッキさ、とかだな? んで、下に米印でクラッキとは名手を意味するとか書かれてるの!」

「料理店で例えるのも多くね?」


 どのくらい時間が経ったのだろう。姉がマネージャー達を車で連れてくるまで、止まることなく話して、笑って、語り続けた。

 マネージャー達が遅くなったのは選手権用の研究対策ビデオを作製していたから、という理由を聞いてバカ騒ぎをしていたのが本当に申し訳なく思ったくらいだ。


「ま、本大会で勝ってくれればそれでいいんだけどね?」


 笑顔の紺野に白眼視の望月。そして、やたらぐったりとした芝浦。


「おっちゃん。生一つ!」


 姉が速攻でビールを注文する。お前飲んだら誰がマネージャー達送ってくんだよ?

 

「心配すんなって。ちゃんと別口で頼んであるからさぁ」


 グダグダな様相を見せ始めた嶺葉のお別れ会だったモノ。


 長い夜はまだ終わらない……。

 今年、偉大なGKが二人もユニフォームを脱ぐことになってしまいました。寂しさも当然ですが、今までの沢山の感動に感謝の気持ちで一杯です。日本代表で凌ぎを削ったお二方。今度は違う舞台で輝ける日を楽しみにしています。本当に今までお疲れ様でした。

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