表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おい!今度の行き先はサッカー漫画だってよ!?  作者: 赤星べお(※完全なPNにしました)
2章 スーペルゴレアドール!
75/105

64話 ここにないモノを信じられる強さ

『基本が出来ていなければ、必ずそれは破綻する』 by旅人 


「ナ~ウン(ちが~う)!!」

「ぬぅ?」

「バウジ? カーマ、カーマ(落ち着いて)」


 相変わらずバウジールは無駄に騒がしい。そしてその度に『まぁまぁ』となだめる古沢さん。

 昨日からのやり取りだけで、二人の関係性が長い事は何となくは思いついた。流石にブラジル留学中からの付き合いだと聞いた時は多少は驚いたが。



 二日目を迎えた体験も今日が最終日だ。

 ……なのだが、俺に用意されたカリキュラムはまさかのハブ練だ。


 ――解せぬ。


 普通はこういう時ってチームに馴染めるようなメニューなんじゃ……、とも思ったがどうやらガリーニョの鶴の一声があったらしい。

 特別待遇と言えば聞こえは良いんだが、実際にはバウジールによる基礎講座と言っていい。

 ついでに巻き添えになった古沢さんにも『ほんとごめんなさい』の案件だろう。

 

 …

 ……

 ………


「ダ~カラァァ!! 正面のボールは軌道上で手を合わせちゃダメってサッキカラ言っテルヨ!」

「バウジの言う通りだよ。胸の前辺りで両手を合わせてから上げるようにしなくちゃ」

「分かってはいるんですけど咄嗟の時だとつい……」


 昨日のビデオの中で俺には基礎が圧倒的に足りない、というより知らないことが多すぎる事が提示された。


『知らない事はやりようがない。だから、その一つ一つを出来る限り潰してやれ』というのがガリーニョからの指令だ。


「ガリーニョが下手って言ってた理由ワカッタ? 基礎的な部分で知らないことが多すぎるんダヨ!」


 ……と言われてしまえば反論の余地はどこにも無いわけで。


「ハイ! 胸の前で掌並べる。そして真っ直ぐ上に! 雑巾で窓拭く感じ!」


 ……言われた取りにするしかないのは理解できる。


「ハイ! 下ろす。構え! 合わせる! 窓拭く! ……ハイ! 下ろす! 合わせる! 窓拭く!」


 理解できるのだが。


「はいw 楠さん、窓拭く……ぷぷ」


 どうも古沢さんのツボにハマったらしい。

 両腕の逆Yの字運動を繰り返す。

 きっと俺は今、この鹿島で一番の『ベストなキッド』だろう。


「掌、平らにしちゃダメヨ! 『球体の手』教えたデショ!?」

「お、おう? す、すいません!」


 ボールを包み込むようサイズへと両手を合わせる。


「ホラ! 分かったら休んでないで窓拭く!!」

「は、はいぃ!!」




 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




「いいかいクスノォキ? さっきトレーニングしたのは正面のボールだ。次は左右のボールへの跳び方と前後左右の動き方を教える」

「結構ありますね……」

「何イッテル? まだ終わらないよ。今日しか無いんだ。できる限り詰め込んでいってもらうゾ」

「そうだね。復習や反復はチームに帰ってからやればいいからさ。今はまず知ることが大事だよ?」


 バウジ-ルはスパルタ気質……、というよりも教えるのが本当に好きなんだなという印象を受ける。

 

 ――だから妥協しない。


 自分の持っている知識や技術を出来るだけ正確に相手に落とし込むことに情熱を持っている。俺が全然出来なくても本気で怒ったりはしない。むしろ『何故出来ないかを』を一緒に考えてくれる有り難い人だ。


 ガリーニョが『俺に合う』と言っていたのは、きっとこういうことなんだと実感する。


「話を戻すヨ。その後はディストリビューション――。配給だネ。何故セレソンのクラウディオ・ラファエルがイタリアのセリエで高い評価を受けたか分かるか?」

「……いや、全く。評価された事も知らないし、イタリアにいる事も知らなかったです」

「ぬぅ」

「……なんかすいませんでした」

「あのね楠君。バウジがいつも僕らに言ってることなんだけど、南米式のパントキックを持ち込んだことが理由らしいよ。こう……、横から蹴り出す低空のパントキック」


 古沢さんが体を少し横に倒しながらお手本を見せてくれる。


「僕はまだあまり得意ではないね。試合で使うのは少しコントロールが怖くて……」


 確かにJリーグではほとんど見たことがないな。下から蹴り上げるのが一般的と言っていいだろう。


「それだって蹴る位置は大事なんだよ。普通のパントはボールの下から四分の三辺りを蹴ってバックスピンを掛けるけど、時間や距離を稼ぎたいときは一番下を蹴り出すとかね」

「あぁ、それは……はい」

「高いボールだと競り合いになってしまうし、トラップにも時間が掛かるダロ? 味方がすぐに攻撃に移れるように遠くの選手の足下に届ける事が出来ればどれだけ有利だと思う? 君がボールをキャッチさえすればハーフからのカウンターがすぐ発動出来るという可能性だけでも相手は怖くて枚数を掛けられないダロ?」

「おお! 確かに。それは凄い!」

「ダロウ? これのやり方も教える。少しアウトにかけるやり方だがコツを掴めば段々と出来る様になるはずダ。先にマスターして古沢を弟子にしてやるといい」

「いやいや、それは流石に……」

「それで最後はPKだ。トーナメントは延長無しのPKダロ? プロのやる駆け引きですぐに出来るのを教えるカラ」


 オブリガード過ぎるなバウジ。

 こんなに使える髭親父がかつていただろうか……。




 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




 一通りのキーパー練習の後にPKの練習まで付き合ってくれた先輩方に厚くお礼を述べる。


「色々とありがとうございました! 体験というより強化合宿みたいでしたけど……」

「そこはまぁドンマイだ。でも来てよかっただろ?」


 本間さんがニィッて子供みたいに笑う。


「うんうん。ここまでされて袖にするのは、普通に考えて無しだろうな」


 やたら顎が自己主張する秋谷さんに嶺葉も同調する。


「確かにそうですね。ここまでしてくれたガリーニョに対する裏切りですもんね」


 その瞬間、全員が息を飲んだかと思うと一斉に視線が集中する。


 ――が、すぐに何事もなかったかのような雰囲気へと戻る。


 !?


 あれ? 優しそうだったみんなの目が一瞬殺気だったような……。気のせいか?

 

 ともかく――、


 こうして鹿島での二日間における体験は実に多くの収穫を手にする形で幕を閉じた。


 



 明けましておめでとうございます。


 今回キーパーの基礎講座の内容を軽く書きましたが、詳細は試合を通じてどんな風に変わったかを載せていく流れです。

 ちなみにですが、今の僕のキーパーに対する一連のモノのほとんどがフルゴーニ氏の教えがベースになっています。昔サッカーダイジェストで彼のコーナーがあり、それから大きく考え方が変わりました。ブッフォンを育てたコーチと言った方が分かりやすいかもしれませんね。当時イタリアの第三GKまでいったブッチよりデビューしたばかりのブッフォンの方がなぜ優れているか?などとても面白い内容だったと思います。また、後にFC東京にも繋がりがあったりするので、今後日本のキーパー育成に関わってくれると嬉しいですね。ていうか楢さ~ん(泣

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ