59話 眩しい午後の日差しとしかめっ面のキミ
「勝ちたい、上手くなりたい、そう言う気持ちが強ければ強いほど、神なのかよく分かりませんが、宿るのかな、と思います」 元日本代表GK K口Y能
透き通った冷たい空気は心地よいほどに汗に濡れたユニフォームを急激に冷ましていく。
熱を纏った心と体が十二月の肌寒さによって、ついにそのフィナーレを迎えたことを思い知らされる。
いつまでも続いてほしい気持ちと早く次のステージでもやってみたいという決して交わる事のない矛盾した思い。
その片方の願いは叶うことなく、それぞれにやり切った表情を浮かべてセンターサークルへと集まっていく。
整列して形式的な挨拶を行い、一人一人と握手を交わしていき健闘を称えあう。
彼らにとっては、この瞬間が高校最後のユニフォーム。きっと特別な思いでここへ来たことは想像に難くない。
きちんと最後まで礼儀を尽くす義務があり、同じスポーツを愛する者同士のリスペクトもそこにはある。
だから……、
「まさか止められるとは思ってなかった。もしお前が三年前もこうだったら、俺達は練習試合断らなかっただろう」
列の最後、俺の肩を叩きながらのシニョーリが余計な事を言って去っていく。
……楠の記憶を辿ってみる。イタリア、スペース練習試合というヤ〇ー感覚が懐かしい。
……
…………
それは予想以上にすぐに見つかった。ジュニアユース本大会前の合宿の際の出来事だ。
午前中のドイツとのクラブチームとの練習試合で醜態を晒した俺たち全日本ジュニアユースは、その後予定されていたイタリアジュニアユースに練習試合を『意味がないから』と断られた履歴。
「……あったわ。がっつりアニメでもやってたわー」
思い出してみれば何てことはないんだが……。
「つか何? え? あれ、俺のせいなの? 俺オンリーなの……、マジで?」
いや、確かにおたくのキーパーが凄いのはわかるけど。でもだからって、ボイコットは無くない?
今だったら、協会挟んで難しい話とかになるんじゃないの? 強化試合できなかった保証は? とかさ。
ちょっとだけアンニュイな気持ちはどこへやら。
何ともやるせない気分にさせられ俺はベンチへと帰って行った。
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少し時間を開けて、一、二年生たちの親善試合が始まった。
さっきまで試合をしていた俺たちは思い思いにそれぞれの時間を過ごしている。
司に嶺葉、西に八神、そして不破と俺。
中学までのいつもの顔ぶれだ。今日はそこにシニョーリもいる。
「なぁ? 最後のやつ、詳しく説明してくれない? 俺、受け身取ってて良く分からないんだよ」
「あぁ、あれな。お前がはじいた所に嶺葉が走りこんでて、オーバーヘッドで押し込んだんだよ。司も行ってたんだけど、少し嶺葉のが早かったな」
「何となくあの辺に来るって感じたんだよね。勘が当たってよかったよ」
西の説明に照れくさそうに追加する嶺葉。相変わらず試合の流れを読む力は半端ないようだ。
「……俺が外すと?」
「うん。外すっていうか、止められるって……」
「……」
不機嫌さを隠そうとしないシニョーリと全くそれを気にしない嶺葉。
「ホント直感なんだけどね。楠が止めるって思ったんだよ。なんかおかしいよね? あ、おかしいって言ったら失礼かな?」
「べ、別におかしくな「おかしいな!! 極めておかしいだろ!」
……シニョーリがこれ以上ないタイミングで俺の言葉に被せる。
「アレは今回初めて成功したんだぞ? それをディノならまだしも……」
あまりに悲痛な表情のシニョーリに何とも言えない空気がやってくる。一度は飲み込んだ悔しさがやはり消化できずに燻っていたようだ。
(うん。ホントごめん。楠が調子こいてしまって本当に申し訳ない……とは思うが、そこまで否定せんでも……)
「何ていうのかな? 楠にも見えてたんだろ?」
心の中で、原作の流れを無視してしまったことに詫びていると、急に嶺葉が真剣な眼差しで見つめてきた。
「あの時さ……、コイツが打った瞬間には同じ方に跳んでたよね? アレ、もうゾーン入ってたよね? 正確に言うとその前の司君へのアシストからっぽいけど……。完全に乗り出したのが何となく見えてたじゃんか?」
途中から俺じゃなくてシニョーリの方に言葉は向いているようだった。
暗に『気付けなかったお前が浅い』と言っているように聞こえた。
「ノッキーだって成長してんだよ? 自分だけ上積みしてるなんて事あるわけないだろ?」
「むぅ……」
嶺葉にシニョーリが言いくるめられ、一見上手くまとまったようには見えたのだが――、
「でも!! ディノほどじゃない!」
『いや? 当たり前だろ!』というツッコミが間違いなく全員の頭の中によぎったに違いない。
嶺葉も苦笑いで「うん。そうだね」と優しい対応へと変化を見せる。
『黄金の左腕』とか大層な異名を持つ奴を引き合いに出されてもなぁ……。
何か別のゲームにもボス役で出張していて、バズーカや世紀末覇者の攻撃すら無効化したり反射する芸当まで見せるような男じゃないか。
流石にそんな元ネタの奴と比べられるのは荷が重すぎるだろう。
さて、そんな会話の中で俺は本題へと話を向ける。
「シニョーリ……、お前さ? スパイクになんかしてないか?」
試合中に起きた疑問――。
ボールに乗せられる重さが半端ない理由に一つの仮説が浮かんだのだ。何かスパイクに秘密があるんじゃないのか……と。
「あ? 気づいた? 流石だね。コイツ鉄板入れてるよ」
俺の問いにシニョーリの代わりに嶺葉が答える。
「はぁ? マジか? それっていいのかよ!?」
という俺の反応はシニョーリに届かなかった。
「え? マジ? 何キロ入れてんの? やっぱ向こうはそれやるの多い?」
なんかよく分からないのだが、司が滅茶苦茶食いつきだした。
よって俺への返答はすでにシニョーリの代理人と化した嶺葉が答えてくれた。
「多分、問題ないんじゃない? ほら。去年のJの得点王のオルデネットもしてるしね。結構ヨーロッパでは少なくないみたいだよ?」
……そうなのか。
むしろそう考えた方が自然なのかもしれない。普通の人体があんなボール蹴れるわけないもんな。
よし! 後でキーパーグローブにも鉄板入れて貰えるようロイッシュにお願いしてみよう。
「あ、でもクリシュナーダとかはしてないみたいだよ? 普通に蹴れるのが信じられないって前にシニョーリ言ってたから……」
……さいですか。やっぱマジモンのバケモンだな、アイツ。
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その後も後輩たちの試合を見ながら、様々な話題に花が咲いていく。
共通の話題であるジュニアユース大会の話やそれぞれの子供の頃の話。
「『アルシオーネ』と『ストランド』が出ていたらイタリアが絶対優勝していた!」と断言するシニョーリを「たられば頂きました」と西が茶化して本気で怒ったシニョーリを俺たちが止めるといったハプニングもあったが……。
そうして――、いつしか日が傾き始め本当の終焉の時間がやってくる。
静大付属の好意でグラウンド整備をして貰った後、嶺葉がやってきた。
そして、俺にだけ聞こえるよう小さな声で、
「じゃあ、また近いうちに」
とだけ残して。
去って行く嶺葉の後ろ姿を見送りながら、俺はその言葉の意味を測りかねていた……。
だいぶ間隔が空いてしまい、本当にごめんなさい。いや、別に続ける気が無いわけじゃないんです。サッカー見たり、やったり、フットサルしたりサッカーゲームしたり、勿論仕事もしてますが……。そんなこんなで時間が上手く回らなくて……、ってのも言い訳ですね、はい。ごめんなさい。
話は変わりますがウイイレとFIFAの二つのサッカーゲームが発売されましたね。自分はエデイット大好き……、というかそれメインなんで毎年ウイイレなんですが、FIFAの臨場感とか凄いですねぁ。子供の頃の自分にこれがゲームだぞ、って言っても信じられないだろうなぁ……。まぁ、ライセンスの問題とかいろいろあると思いますが、一強になるとあまり良くないと思うので互いに切磋琢磨してより面白いゲームを作って貰いたいもんです。
※最近はゲームのキーパーもプレジャンプしてるの見て普通に驚きました。
ちなみにオッツェの鉄板は元日本代表GKの小島さんが暴露してました。確かサッカーダイジェストだったと思います。昔の助っ人を懐かしむコーナーとかだったような……。




